スピルバーグ監督の半自伝的映画『フェイブルマンズ』、タイトルの由来とは?
2023年3月7日 11:37
3月3日に日本公開された映画『フェイブルマンズ』(原題:The Fabelmans)より、タイトルの由来や制作秘話が明かされた。また、幼少期の主人公サミーが映画制作へ励む本編映像も公開された。
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■スピルバーグの原点に迫る映画『フェイブルマンズ』
映画『E.T.』(1982年)や「ジュラシック・パーク」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズなどで知られる映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督。彼が監督・共同脚本を手がけた自身初の半自伝的映画『フェイブルマンズ』は、2022年11月の全米公開前から「アカデミー賞最有力候補作品」として注目を集めた。
3月12日(現地時間)に開催される第95回アカデミー賞には、作品賞をはじめ7部門にノミネートされている。
本作はスピルバーグの子ども時代を投影して描いた、映画制作に人生を捧げる男の成長譚だ。主人公サミーは、少年時代に初めて映画館に訪れて映画に夢中になり、やがて8ミリカメラを手に映像制作に打ち込むようになる。家族との絆や人々との出会いにより成長していくサミーは、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求めていくーー。
スピルバーグはこれまで手がけたほとんどの作品にも自身の成長期の出来事を反映させてきたが、本作は比喩ではなく実際の記憶を投影しており、スピルバーグの原点に迫る作品となっている。
■タイトル『フェイブルマンズ』の由来は? 明かされた制作秘話
映画『フェイブルマンズ』というタイトルは、主人公サミー・フェイブルマンの名字だ。そして「fable」とは「寓話」という意味のドイツ語で、つまり「フェイブルマン(fabelmans)」は「寓話男」という意味でもあるのだ。
このタイトルは、スピルバーグの長年の盟友であり、本作で共同脚本兼プロデューサーを手がけるトニー・クシュナーが思いついたものだ。彼は、ドイツ語である「スピルバーグ」の英訳「play mountain(芝居山)」や、本作とスピルバーグの関係などを考慮。劇作家や演出家が戯曲をより理解してもらうため、その解釈を強調して書いた戯曲の要約を表す「fabel」という演劇用語に行きついたという。
さらに、「スピルバーグが撮影中のシーンにのめり込むあまり、“カット”と叫ぶのを忘れてしまうことがあった」という、意外な制作秘話も明かされた。撮影に没入するスピルバーグを見て、献身的なスタッフたちがすぐに状況に適応し一丸となって作品と向き合ったという。
スピルバーグは「自分と被写体の間に距離を置こうと思ったが難しかった」「実際に自分の身に起こったことを再現し、それを目の前で見ることは、耐えがたく奇妙な体験だった。今まで経験したことのないようなことだった」と撮影を振り返っている。
■本編映像も公開
この度、幼少期のサミーが映画制作へ励む本編映像が解禁された。妹らと遊び半分でカメラを回すサミー少年は、抜歯シーンの血をケチャップで、ミイラを家中のトイレットペーパーで代用するなど、無邪気なアイデアで自由に表現していく。映画監督としての才能の片鱗を見せつつ、本人も映画を撮る楽しさに気がつく微笑ましいシーンだ。
スピルバーグ監督が、他の作品とは一線を画す特別な思いで作り上げた映画『フェイブルマンズ』は大ヒット上映中だ。
(記事:ヤスダ ユウカ・記事一覧を見る)