日銀総裁候補の植田氏が所信聴取、金融緩和の行方は?
2023年2月24日 16:13
●日銀新総裁らの所信聴取
24日、衆議院議院運営委員会で、日銀の新総裁候補として政府から国会に提示された植田和男氏(東大名誉教授)の所信聴取が行われた。午後からは副総裁候補の内田眞一氏と氷見野良三氏への聴取も実施された。
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ロイター通信などによると、植田氏は聴取で、大規模な金融緩和を継続すると共に2%の物価安定目標を変える必要はないと発言。これを受けて、日経平均の午前終値は300円近く上昇し、終値は前営業日比で349円高となった。
当初は金融緩和路線を引き継ぐ雨宮氏の就任が有力視されていたが、固辞したとみられ、植田氏の就任はサプライズだった。
植田氏の就任は、今後の日本経済、マーケットにどのような影響を与えるのか?
●所信聴取とは?植田氏の評価は?
所信聴取は、2008年に、衆参両院における国会同意手続き規則の一環として導入された。日銀正副総裁以外にも公正取引委員会委員長など、合わせて4機関が対象となっている。
植田氏が就任すれば、戦後初の学者出身総裁となる。これまでは、財務省と日銀の出身が交互に務める“たすき掛け人事”だった。
失敗に終わったと評価される2000年の利上げに関して、植田氏は反対した人物の1人として知られている。
黒田総裁はサプライズな政策決定が多かったが、植田氏は所信聴取でも慎重な発言が多く、市場とのコミュニケーションが大事と述べており、市場との対話も期待される。
金融緩和にはフレンドリーな立場ではあるが、金融緩和で経済が良くなると考えている緩和絶対主義者ではないと言われている。
●気になるYCCの行方と出口戦略
YCC(イールドカーブコントロール)については、副総裁候補の内田氏とともに副作用について認めており、所信聴取でも議論していきたいと述べている。
これはすぐに見直し・撤廃ということではなく、これまでのスタンスと変わらないだろう。
ただ、日銀の国債保有割合は50%を超えており、国債の借り入れをこれまで通り続けることは難しい。
まだ伝わっている部分での評価ではあるが、植田氏の就任が決定してもしばらくは大きな混乱はないと思われ、植田氏も“安全運転”になるだろう。
ただし政策の転換は避けられず、植田氏にはいかに市場と対話し、ソフトランディングさせられるかが求められるだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)