ガイアックス、売上高は前期比+18.2% 統合型マーケティング支援へのサービス拡張による受注増で売上が拡大
2023年2月24日 11:05
GAIAX MISSION
上田祐司氏(以下、上田):ハイライトについてご説明します。当社は、インターネットのテクノロジーを活用して「人と人をつなげる」ことをミッションにしており、関連した事業を展開しています。
当社事業概要
事業概要です。当社は2つの事業から構成されています。1つ目はソーシャルメディアサービス事業です。ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーなども含めて、コンサルティングや受託開発などのプロフェッショナルなサービスをBtoBで提供することが基軸のビジネスとなっています。
2つ目はインキュベーション事業で、新しい事業作りを行っています。インキュベーション事業の中には、投資のほか、連結内で作った事業がカーブアウトするケースがあり、その場合には投資先企業に変わります。
2022年12月期 ハイライト:ソーシャルメディアサービス事業
BtoBのソーシャルメディアサービス事業セグメントに関するトピックです。まず、「Social Media Lab」というSNSマーケティング情報メディアをはじめ、ソーシャルメディアに関するコンサルティングや運用代行を提供している事業のセグメントについてです。
データサイエンスチームによるマーケティング支援が本格始動しました。近年は各社でソーシャルメディアがプロモーションの中心に位置づけられるようになってきており、SNS投稿やパネル調査データ、企業内に眠る顧客データなどを統合的に分析し、すべて網羅しながらマーケティングしていくという構造になってきています。
そのような中で、当社としてもサービスをより統合的に提供することによって金額を上げていき、お客さまに価値を提供しようと動いています。
次に、昨年度に買収したジェニックラボ事業が今年度には大きく売上を伸ばしています。当社は「Facebook」や「Twitter」、ブログなどのコンサルティングを手掛けてきた歴史があります。
クリエイティブが重要な「Instagram」や「TikTok」にも強みを持つジェニックラボを加え、縦型動画を使ってプロモーションしたいという企業のニーズに対応できるように、重点的に改善しています。
2022年12月期 ハイライト:ソーシャルメディアサービス事業
当社はインターネットを活用した人材採用を提案するビジネスも展開しており、当社もオウンドメディアやソーシャルメディアを有効活用して採用活動を行っています。そのような取り組みが評価され、『オウンドメディアリクルーティングアワード 2022』の「採用動画賞」を受賞しました。
当社がここまでしっかりできていることを売りに、お客さまに対しても我々のノウハウを注入することを提案しながら、事業をより加速させようと考えています。
2022年12月期 ハイライト:インキュベーション事業
インキュベーション事業セグメントのトピックです。直近の新規事業としては、ブロックチェーンを有効活用したDAO(分散型自律組織)に取り組んでいます。
DAOのシェアハウスやシェアオフィス、あるいはNPO組織のDAOへの移行や、自治体のプロジェクトとしてDAOを有効活用してもらうなどのプロジェクトを行っています。おかげさまで、企業から「DAOを有効活用するにはどうしたらよいか?」という問い合わせもいただいており、今後もBtoBの仕事を増やしていきたいと考えています。
2022年12月期 ハイライト:インキュベーション事業
当社は「スタートアップスタジオ」といわれる連続的に起業家を輩出するビジネスモデルで起業家の育成に長年取り組んできました。みなさまもご存じのとおり、政府が日本でもスタートアップを盛り上げていくことを掲げており、この業界に多くの資金が流れ込んできています。
各企業や自治体、高校などにおいても、「地元から飛び立つ起業家を育てたい」という起業家教育のニーズが大きくなっています。我々は自分たちで起業家を育ててきましたので、そのノウハウを自治体などに提供する取り組みを始めています。2022年度から取りかかっていますので、2023年度からは業績に一定程度寄与してくるのではないかと考えています。
2022年12月期 出資先動向
投資先の動向です。スライドに記載の2社と、次ページに記載の3社を含めて、当社の投資先がいろいろと活躍しています。引き続きサポートしながら、当社の持分株式の価値を向上させていきたいと考えています。以上がハイライトです。
2022年12月期 振り返り
野澤直人氏(以下、野澤):ここからは、私から2022年12月期の業績についてご説明します。まず、2022年12月期の振り返りです。
連結業績は売上高が25億9,700万円、前年同期比18.2パーセント増となりました。営業損益は新規事業への先行投資によりマイナス2億1,000万円となっています。
セグメントごとに見ますと、ソーシャルメディアサービス事業は売上高・営業損益ともに増加しています。インキュベーション事業は、保有する投資有価証券の売却等もあり、売上高は増加しましたが、事業投資を積極的に行った結果、営業損益はマイナスとなっています。
連結売上高の推移
連結売上高の推移はスライドのとおりです。
連結営業損益の推移
連結営業損益の推移もスライドのとおりです。
2022年12月期 連結PL(年度比較)
2022年12月期累計での連結P/Lはスライドのとおりです。売上高は25億9,700万円、売上総利益は16億6,100万円、販管費は18億7,200万円、営業損益はマイナス2億1,000万円、経常損益はマイナス1億7,400万円、当期純利益はマイナス3億4,100万円となっています。
2022年12月期 第4四半期 連結PL(四半期会計期間比較)
2022年12月期の第4四半期において、株式会社ロコタビののれん代、「Nagatacho GRiD」の固定資産等の減損を行ったため、合計1億9,000万円の特別損失を計上しました。その結果、当期純利益のマイナスが大きくなっています。
2022年12月期 連結B/S
2022年12月期末の連結のバランスシートです。先ほどお伝えしたとおり、株式会社ロコタビののれん代、「Nagatacho GRiD」の建物・設備等の減損により、固定資産が大きく減少しています。
ソーシャルメディアサービス事業 連結売上高の推移
ここからは、事業グループ別の詳しい業績をご説明します。まず、ソーシャルメディアサービス事業の連結売上高の推移です。
先ほど上田からも少しお話ししましたが、SNSマーケティング支援を統合型マーケティング支援というかたちにサービス拡張したことで、顧客単価と受注数が増加し、売上が拡大しました。
この事業グループにある多くの事業部がBtoBのストック型ビジネスモデルで、ガイアックスグループ全体の売上の約7割を占めています。この7割の部分が、経営環境に左右されず、安定的に売上を作れるという我々の強みの1つになっています。
ソーシャルメディアサービス事業 連結営業損益の推移
営業損益の推移です。事業成長に向けた投資を一定程度行いつつ、安定的に利益を出せていることがおわかりいただけると思います。
インキュベーション事業 連結売上高の推移
インキュベーション事業の売上高についてご説明します。2022年度は、第2四半期に営業投資有価証券を売却したことで、3億1,800万円の売上を計上しています。
過去数年の動きを見ますと、2021年度は投資先のPhotosynthがIPOしています。その前の年度は事業カーブアウトした投資先のアディッシュがIPOしています。2022年度も含めると、3年連続で投資先のキャピタルゲインにより売上を作ることができています。
インキュベーション事業 連結営業利益の推移
インキュベーション事業の営業損益についてご説明します。引き続き、BtoCおよびCtoCサービスへ積極的に事業投資しており、赤字になっている状況です。
2023年12月期 業績見通し
2023年12月期の業績予想です。ソーシャルメディアサービス事業については、SNSを中心とした統合型マーケティングを主軸に、受託開発事業でも安定的な受注確保ができると見込んでいます。
インキュベーション事業に関しては、スタートアップ支援のノウハウを自治体等に展開することで収益化を図ります。同時にweb3やDAOといった新しい領域に注力していこうと思っており、開発コストや人件費が増加すると想定しています。
GAIAX MISSION
上田:私から事業戦略をご説明します。ミッションは「人と人をつなげる」です。どのような事業で組み立てているかをご説明します。
人と人がつながると、他人のことを自分のことのように思い、互いが互いを自然と助け合う社会になると思っています。このような市場を作っていく中で、我々もビジネスを創出していこうと考えています。
将来の市場成長を見据え、特に注力している事業領域
その中で、特に注力している事業分野はソーシャルメディアで、ここ10年ほどはシェアリングエコノミーに力を入れています。我々は2015年頃からweb3に取り組んでおり、ここ最近はDAOに注力しています。
GAIAX BUSINESS MODEL
我々の取り組み方についてご説明します。我々が事業会社としてビジネスに取り組む側面と、投資会社としてそのような分野の会社に投資し、上場と売却を目指してキャピタルゲインを得る側面があります。
場合によっては、我々が行っている事業もカーブアウトし、投資会社としての収益を得ています。このような2つの枠組みを活用しています。
社内から連続的に起業家を輩出
これまで、投資先の卒業生の創業企業から4社が株式公開しています。我々としても、このような経営陣、ビジネスサイズのあるマーケットであれば上場まで持っていけることを肌で感じています。
一方で力不足な点として、時価総額がもう1段大きな会社で、我々の持分ももう1段大きな比率を取らなければ、我々の利益はなかなか大きくなりません。現在は投資先のより大きな成長と、持分比率の大きなところを積極的に支援し、伸ばしていくことに力を入れています。
カーブアウト機能を活用した事業の成長加速
カーブアウトについてです。通常、上場を目指すにあたって、10億円、20億円、30億円という資金を新規で調達し、そのマーケットで勝ちにいきます。また、従業員にたくさんの株式を持ってもらい、より積極性を持って事業を伸ばします。
我々の既存事業として取り組むより、カーブアウトのほうが事業としては大きくなると考え、このような枠組みで取り組んでいます。
カーブアウトオプション制度活用事例
実際の活用事例として、本人確認(eKYC/KYC)導入社数No.1の株式会社TRUSTDOCK、2020年に東証マザーズへ上場したカスタマーサクセスソリューション提供のアディッシュ株式会社があります。
事業会社と投資会社の「ハイブリッドモデル」
ガイアックスの中の事業、カーブアウトした投資先、ガイアックス卒業生が経営する投資先、それ以外の投資先があります。スライドの図のより中央のほうに力を入れつつ、ガイアックスグループの内外を問わず投資するかたちで取り組んでいます。
これまでの振り返りと今後の経営方針
これまでの振り返りと今後の経営方針についてご説明します。ソーシャルメディアサービス事業は前々より営業利益率はしっかりと確保できているものの、売上の伸びがそこまで大きくありませんでした。
先ほどもお話ししたとおり、統合型マーケティングで横の領域まで取りにいくことで、年の成長率を引き上げていこうと考えています。
インキュベーション事業は、営業投資有価証券の売却に非常に依存しており、不安定でした。今後もそのような要素はありますが、コストコントロールと、投資の幅を一定程度抑えつつ、投資有価証券の売却に関してももう少しならしながら売却し、安定的に売上を確保していこうと考えています。
スライドの右側をご覧ください。結果的に売上の安定成長、全体的な黒字、継続的な配当を行う方針に昨年度から変更しました。今期はまさにその1年目として進めていきます。
2023-2027年度 中期経営方針 業績目標
中期経営方針の業績目標です。1年目の2023年の連結売上は26億9,500万円で、営業利益は5,000万円です。2年目の連結売上は29億7,000万円、営業利益は1億2,000万円です。5年目の連結売上は40億円、営業利益は6億円となっています。予想の数字がより詳細にわかり次第、アップデートして発表します。なお、2022年12月期の決算短信では2023年度につき、連結売上高27億円、営業利益5,000万円の業績予想を出しています。
株主還元方針
株主への継続的な利益還元を行っていこうと考えています。2023年12月期の期末配当額は5円を予定しています。
株主還元方針
12月8日に株主優待制度について発表しました。
各事業セグメントの振り返りと今後の方針
事業課題と方針についてご説明します。まず事業セグメントの振り返りと今後の方針です。先ほどお伝えしたとおり、ソーシャルメディアサービス事業をしっかり伸ばします。
一方、インキュベーション事業では、時価総額数百億円、持分比率10パーセントから30パーセントの状態を目指します。これを作り上げることが非常に重要だと思っていますので、しっかり取り組んでいきたいと思っています。
インキュベーション事業の投資注力分野
その中の1つとして、時代的に重要なweb3を事業の柱にしていくことが、2023年の重点課題だと思っています。
ガイアックスによるブロックチェーンの取り組み
ブロックチェーンへの取り組みについてです。我々は2015年から日本ブロックチェーン協会の設立に参画し、私が最初の理事に就任するなど取り組んできました。「TRUSTDOCK」も、もともとはブロックチェーンの調査チームがカーブアウトして作ったビジネスです。
web3/DAOの世界が急拡大する
これまで培った技術力を活かしながら、web3やDAOのマーケットをビジネスとして拡大させていく予定です。
web3/DAOで、従来のビジネスのマーケティングも変化
web3やDAOについて、あらためて簡単にご説明します。これまで企業や組織には中心となる方がいることで組織が回っていました。しかし、今や分散型で自立的に組織が動くようになっています。
例えばお店であれば、お店の社長、店長、従業員、お客さまという関係だったと思います。しかし、DAOの感覚では、お客さまにもいわば株式を持ってもらいます。働く人も、社長も、お客さまも、みんながトークンをもらい、みんなで意思決定して、店を大きくすることでみんなが儲かり、さらに自分たちが目指す姿に持っていくという枠組みです。
この枠組みは可能性があると思っています。海外を見ても、DAOで作った組織のトークンの時価総額が数千億円になる事例が出てきており、まさに今が有効活用できるチャンスだと思っています。
web3/DAOを、ソーシャルメディア、シェアリングエコノミーに続く第三の柱に
ソーシャルメディア活用支援事業をもとに、シェアリングエコノミー事業を始めています。今後もこれまでの実績を活用して、DAO活用事業を立ち上げたいと思っています。
質疑応答:スナップマート買収の意図と今後の成長戦略について
司会者:「ソーシャルメディアサービス事業は好調に見えます。直近のスナップマート買収の意図や、今後の成長戦略について教えてください」というご質問です。
上田:昨日、スナップマートをピクスタから買収したことを発表しました。お伝えしたとおり、昔は「Facebook」にテキストで書く文化が普通でしたが、最近ではクリエイティブに強い方が縦型の写真や動画をアップするという時代の流れがきています。
スナップマートは、そのようなクリエイティブに強い方々を、10万人を超える規模で囲っているサービスです。我々としては、このような方々と一緒にビジネスを作っていくことに可能性を非常に感じています。
どちらかと言いますと、ピクスタはカメラマンをどのようにビジネスに使っていくかという意向が強いのですが、我々はカメラを使ったインフルエンサーの方々をどのようにビジネスに回していくかを考えています。
スナップマートはどちらかと言いますとカメラマンではありますが、インフルエンサーの色が強い傾向があります。したがって、ピクスタよりも我々が買収したほうが、より他のビジネスとのシナジーもあるだろうということで買収しました。今後、我々のお客さまにもサービスを提供しながら、クロスセルを行っていきたいと考えています。
質疑応答:採算面にについて
司会者:「若き経営者を世に送り出すのは大変すばらしいことだと思います。一方で、御社のここ数年の営業利益を見ると、投資家にとって安心できるビジネスモデルであるのか疑念を持ってしまいます。採算面についてご説明ください」とのご質問です。
上田:損益が上下動してご心配をおかけしており、大変申し訳なく思っています。ご指摘のとおり、より安心できるビジネスモデルが必要なため、2023年度からいくつかの改善策を実施しています。
具体的には、BtoB事業に関しては、特に2022年度は2021年度から比べて安定的に成長しています。成長と利益率を維持することで、ベースの利益を維持します。
また、これまでは外部投資を積極的に行ってきましたが、投資額に関しても、年間で見て一定程度に抑制していきます。
これまでは上場しない限り株を売れない、上場しても株を売らなければ損益に反映できないという状況でした。今後はよりいろいろなタイミングでの売却も検討し、上場後も一気に売るのではなく、場合によっては安定的に売っていこうと考えています。
これまでは減損を過剰にディフェンシブにしていました。もう少し株の価値を正しく精査することにより、減損も毎年少しずつしっかりと適切に行えるようにしていきます。
2023年からはこのように損益を安定化させることで、毎年の利益を十分に出しながら配当もしっかり出せるように経営方針を変更していますので、安心できるビジネスモデルになっているかと思います。
質疑応答:DAOの取り組みの進捗と展望について
司会者:「昨年からDAO型シェアハウス、NPO法人のDAOへの移行、『美しい村DAO』の開発などの取り組みが始まりましたが、その後の進捗や展開、DAO関連事業の今後の展望について教えてください」というご質問です。
上田:いろいろなDAO化を進めている中で、例えばDAO型シェアハウスにおいては、お客さまである住人にトークンを持ってもらい、運営自体を住人が積極的に行っています。
シェアハウスに住みたい方の内見を住んでいる方が対応したり、シェアハウスをDIYで改造したり、シェアハウスとして何を買うべきなのか、ハウスルールをどうするべきかなどを、すべてメンバーが自律的に決めています。
シェアハウスが人気になり価値が上がると、運営する会社が儲かるのは当然ですが、住人も株を持っているようなものですので、住人の利益も上がるという仕組みです。住人の方々が経営者と同様の目線を持って稼働することが実現してきています。打ち合わせ場所である「Discord」も、日々非常に盛り上がっています。
そのような中で、我々がどのような施策を行えばDAOが上手に動くのか、どのような組織にどのような要素を導入していけば上手くビジネスが回るのかといった知見をためています。同時に、他の事例も次々に実行に移して、さらに事例を蓄えているところです。
現在多くの問い合わせをいただいていますので、問い合わせに対してサービスを提供しつつ、今後は多くの会社にご利用いただけるようなツールを開発するなど、我々もDAOという組織形態を使って新しいビジネスを作っていこうと考えています。