楽天モバイルは、23年度中に単月黒字を達成できるのか?
2023年2月24日 10:57
14日、楽天グループが公表した国際会計基準の22年12月期連結決算は、最終損益が3728億円の赤字となり、過去最大で4期連続という有り難くない記録にもなった。もちろん、楽天グループの代名詞のようなEC(イーコマース)が順調に推移している中で、携帯基地局を設置するための投資が続くモバイル部門が、全体の足を引っ張っていることは周知のことだ。
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もっとも、厳しい決算になることはマーケットも了解していたから、あく抜け感もあって翌15日の東証終値は対前日終値比51円高と8%もの値上がりを見せ、16日にも増勢を引き継いだ。その後は利食いなどもあって上下したものの1週間後の22日終値は666円となり、14日の終値比で4円の値上がりだから、一先ず平穏に推移しているといったところだろう。
同じように大幅な赤字を公表したソフトバンクグループが、14日の終値が5850円だったのに対して、22日の終値が5576円と274円(5%弱)の値下がりを記録していることと比べると、楽天グループの株価の落ち着き具合がよく分かる。
楽天モバイルが抱える問題点は、契約者数の伸び悩みと、今後の基地局設置の進め方にある。22年4月に500万超を記録していた契約者数は、5月に「0円プラン」を廃止したことが響いて12月末には449万件となった。契約者数の減少だけを捉えて、「0円プラン」廃止の功罪を問う向きもあるが、もともと撒き餌のようなものだったから、10%の減少で済んだことを評価すべきだろう。
「0円プラン」の廃止によって、10月~12月の契約者当りの平均収入(ARPU)は1805円になったから、廃止前と比較すると年間で約40億円の増収効果があった。問題は契約者の絶対数が少ないことだ。
NTTドコモが8300万人、KDDIが6100万人、ソフトバンクが4700万人だから、NTTドコモと比較すると20分の1、ソフトバンクとでも10分の1となる。さらに大手のARPUが4000円前後であることも含めると、売り上げる力は NTTドコモの40分の1、ソフトバンクの20分の1である。
そこで楽天は、楽天グループの社員に獲得目標を設定し、楽天市場の出店者に協力を求め、契約者1人当り7000ポイントを贈呈する紹介キャンペーンを実施するなど、あの手この手で契約者数の増加を図っている。
高度なレベルに到達している日本の通信品質を考えると、他社と競合している楽天モバイルに、基地局の設置問題は避けられない。現在、大手キャリアの人口カバー率が99%超であるのに対して、楽天モバイルはHPで「98%越え」を強くアピールしている。
楽天モバイルが人口カバー率98%超を達成するために設置した基地局は5万局だが、大手キャリアと同等の99%超の人口カバー率を目指して、あと1%上乗せ上乗せするために必要な基地局は1万局と言われる。
5万局の基地局を達成するために要した費用がおよそ1兆円とすると、あと1万局を増やすためには単純計算で2000億円程の資金が必要になる。だが資金調達に翳りが見える楽天が、新たな資金を手に入れる余地は少ない。
同時に、24年度には社債等の償還が約3000億円、25年度には同5000億円に及ぶことを考えると、23年度中に単月でも利益を計上する体質改善は欠かせない。
楽天は、大手キャリアに劣後する通信品質で契約者数と売上を共に増加させるという、途方もない戦いを進めている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)