iPS細胞から軟骨を作製、移植して関節の再生に成功 霊長類で 京大ら
2023年2月24日 16:26
京都大学iPS細胞研究所や大阪大学などからなる研究グループは20日、霊長類モデルを使った動物実験において、他のサルのiPS細胞から作製した軟骨を移植し、関節を再生することに成功したと発表した。霊長類モデルは、免疫系を含めヒトに最も近く、ヒトにおける関節軟骨損傷・変性の治療への応用が期待できるという。
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■関節軟骨損傷・変性とは?
軟骨は我々の関節が滑らかに動くように働いている。だが加齢などによって変性し、摩耗していく。
このような関節軟骨損傷・変性はやがて、変形性関節症へと進行し、関節痛や関節機能障害などの症状があらわれる。
だが関節軟骨損傷・変性は自然に治ることはない。そこで研究グループは、これまでiPS細胞を使って軟骨を作製し移植することで、関節を再生する治療法の開発に取り組んできた。
今回研究グループは、その一環として、ヒトに近い霊長類モデルを用いて、他のサルのiPS細胞から作製した軟骨の移植を試みた。
■軟骨は生着して再生組織を構成 拒絶反応も起きず
軟骨は、軟骨細胞とそれ以外の組織からなるが、研究グループは、その両方を他のサルのiPS細胞を使って作製。サルの膝関節軟骨の欠損した部分に移植した。
その結果、少なくとも4カ月の間、移植した軟骨は生着し、再生組織を直接構成。免疫の拒絶反応も起きていないことが確認されたという。
その後、研究グループが遺伝子解析をおこなったところ、移植後の関節運動の刺激によって、PRG4と呼ばれる遺伝子が活性化。潤滑作用があるタンバク質(PRG4)がつくられており、移植した軟骨が、関節軟骨として機能していることが示唆された。
今回の研究成果により、同種のiPS細胞から作製された軟骨を使った関節軟骨損傷・変性の治療について、有効性とメカニズムが示された。今後は、関節の機能回復や痛みの軽減を図るための新しい再生治療法の開発に貢献することが期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)