【どう見るこの株】インテリックスは売り一巡、23年5月期減益予想だが中期成長期待
2023年1月23日 11:16
インテリックス<8940>(東証プライム)は、中古マンション再生販売等のリノベーション事業分野を主力として、収益不動産売買等のソリューション事業分野も展開している。成長戦略として「ECOCUBE」(22年12月29日よりCMキャラクターに比嘉愛未さんを起用した新CM「『美人空気』と暮らしませんか?」の放送開始)を核として、収益性向上戦略を加速する方針としている。23年5月期はテレビCMなど先行投資の影響で減益予想だが、リノベーション市場は拡大基調であり、積極的な事業展開と先行投資の成果で中期成長を期待したい。株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する軟調展開だったが売り一巡感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。
■中古マンションのリノベーション事業が主力
リノベーション事業分野(中古マンション等再生販売のリノヴェックスマンション事業、リノベーション内装事業など)を主力として、ソリューション事業分野(収益不動産の売買・賃貸事業、リースバック事業、アセットシェアリング事業、ホテル等の宿泊事業など)も展開している。
リノベーション事業分野は、全国主要都市において主に中古マンションを1戸単位で仕入れた後、子会社のインテリックス空間設計で最適なリノベーションプランを作成し、高品質な内装を施した上で販売する。施工した全ての物件に対して最長20年のアフターサービス保証や購入後1年無料点検サービスを付けることで、購入時に抱える不安要素(永住性や資産性など)を払拭し、顧客満足度の高い住宅を供給している。
特長・強みとしては、物件の状態に応じた間取りの変更や目に見えない給排水管の交換等に至るまで、老朽化・陳腐化した箇所を更新し、現在のライフスタイルに合わせたリノベーションを施すことにより、商品価値を高めて販売している点がある。
21年7月には「ECOCUBE(エコキューブ)」の販売を開始した。住宅ごとに行う温熱計算に基づいて断熱性・機密性を高め、住む人の健康・省エネ・経済的メリットを実現する省エネリノベーションブランドである。リノヴェックスマンション事業における「ECOCUBE」導入率上昇により、高額帯物件の拡充を推進する。
なお「ECOCUBE」は、一般社団法人リノベーション協議会が主催する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー20221」において、特別賞(省エネリノベーション普及貢献賞)を受賞した。22年4月には子会社リコシスにおいて「ECOCUBE」のFCビジネスを開始した。さらに「ECOCUBE」のプロモーション強化として、22年12月29日より関東圏において、CMキャラクターに比嘉愛未さんを起用した新CM「『美人空気』と暮らしませんか?」の放送を開始している。
22年5月期のセグメント別売上高はリノベーション事業分野が278億16百万円でソリューション事業分野が83億23百万円、営業利益(全社費用等調整前)はリノベーション事業分野が13億34百万円でソリューション事業分野が8億40百万円だった。
グループは同社、および連結子会社8社(インテリックス空間設計、インテリックス住宅販売、インテリックスプロパティ、リコシスなど)で構成されている。
■中期経営計画(23年5月期~25年5月期)
ビジョンを「すべての人にリノベーションで豊かな生活を」として、23年5月期~25年5月期を対象期間とする中期経営計画の目標数値には、最終年度25年5月期の売上高591億円、営業利益26億円、経常利益23億円、親会社株主帰属当期純利益15億円、ROE10%以上を掲げている。配当方針は、業績連動型配当方針に基づいて配当性向30%以上を基準とする。
市場環境として、新築物件に関しては改正建築物省エネ法(22年5月成立)によって、25年度に住宅・建築物に対する省エネ基準への適合が義務付けられたが、既存物件に関しては現行の省エネ基準を満たしている住宅が住宅ストック全体のわずか10%に過ぎず、今後はリノベーションによる省エネ住宅の供給が不可欠になると予想されている。
同社が主力とする中古マンションについては、国土交通省のデータを基に同社が作成した資料によると、全国マンションストックの約3割がリノベーションを必要とする築30年超の物件(20年時点で231.9万戸)となっており、さらに30年には404.6万戸へ拡大することが予想されている。
このような市場環境に対して同社は、CO2削減に向けた最適な省エネリノベーション、QQL(Quality of Life)を高めるリノベーションを提供している。そして06年5月期から22年5月期まで17期連続でリノベーションマンション年間1000戸以上を販売し、22年5月期にはリノベーションマンション販売累計戸数が2万5000戸を突破した。
さらに「ECOCUBE」の拡販に加えて、不動産取引DX化に向けた不動産直販プラットフォーム「FLIE(フリエ)」の展開(19年11月運営開始、22年12月時点で物件掲載数2000件突破)や、スマホで自由に物件内覧できる自社開発の非接触型セルフ内見システム「スマビュー」(特許取得済)の導入物件拡大も推進している。
今後は「ECOCUBE」を核として、リノヴェックスマンション事業における「ECOCUBE」物件の拡販、リノベーション内装事業における「ECOCUBE」内装受注の拡大、不動産直販プラットフォーム「FLIE」への「ECOCUBE」導入物件の掲載拡大、フランチャイズ事業「ECOCUBE」FC加盟店の拡充などにより、収益性向上戦略を加速する方針としている。
中期経営計画における販売戸数の計画は、23年5月期1247戸(ECOCUBE導入率40%)、24年5月期1439戸(同45%)、25年5月期1603戸(同50%)を掲げ、早期に累計販売戸数3万戸を目指すとしている。
■新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編に伴って東証プライム市場に移行・上場したが、移行基準日(21年6月30日)時点において流通株式時価総額が上場維持基準を充たしていなかったため、21年12月24日付で「新市場区分の上場維持基準適合に向けた計画書」を公表している。
計画期間を27年5月期までとして、中期経営計画で掲げた成長戦略・事業計画の着実な遂行によって27年5月期経常利益32億円、親会社株主帰属当期純利益22億円、ROE13%、純資産175億円の達成を目指すとともに、コーポレートガバナンスの充実およびIR活動の強化などによって企業価値の向上を図り、流通株式時価総額100億円超を目指すとしている。
そして22年8月30日付で「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」を公表した。22年5月31日時点において流通株式時価総額がプライム市場の上場維持基準を充たしていないため、引き続き企業価値向上および上場維持基準充足に向けて各種取組を推進するとしている。
■23年5月期減益予想だが中期成長期待
23年5月期の連結業績予想は、売上高が22年5月期比17.4%増の424億17百万円、営業利益が31.8%減の9億30百万円、経常利益が43.3%減の6億01百万円、親会社株主帰属当期純利益が34.6%減の4億20百万円としている。配当予想は業績連動型配当方針に基づいて、22年5月期比8円減配の18円(第2四半期末9円、期末9円)としている。予想配当性向は37.0%となる。
リノヴェックスマンション販売件数は22年5月期比118件増の1247件、平均価格は144万円増の2468万円の計画としている。リノベーション事業分野が好調に推移し、ソリューション事業における下期の1棟収益物件販売なども寄与して全体として17.4%増収、売上総利益14.3%増益の予想だが、テレビCMなどの成長投資で販管費が増加するため営業利益以下は減益予想としている。
23年5月期は「意志ある踊り場」と位置付けで、収益性改善に向けた先行投資を積極的に実行する方針だ。重点施策として、リノベーション事業では仕入価格帯の引き上げと販売価格の継続的な値上げ、収益性の高いリノベーション内装の受注拡大、ソリューション事業では保有物件の選択と集中の推進、不動産小口化商品(アセットシェアリング)の拡大などを推進する。さらに将来への布石として、省エネリノベーション「ECOCUBE」拡販に向けたプロモーション強化とFC拡大、物件のセルフ内見システム「スマビュー」の導入、不動産直販プラットフォーム「FLIE」への投資を強化する方針だ。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比4.9%増の179億27百万円、営業利益が66.3%減の1億89百万円、経常利益が13百万円の赤字(前年同期は4億円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が30百万円の赤字(同2億42百万円の黒字)だった。
リノベーション事業分野の販売単価上昇などで増収だが、バランスシートの強化や成長に向けた先行投資(広告宣伝費の増加など)の影響で減益だった。経常利益についてはシンジケート方式を含むSDGs大型ファイナンス(3件合計で33億円を調達)設定費用も影響した。
セグメント別に見ると、リノベーション事業分野は販売件数増加や販売価格上昇などで売上高が前年同期比18.9%増の161億84百万円、売上総利益が2.0%増の22億26百万円だった。販売件数は15件増加の584件(うち「ECOCUBE」物件は65件で導入率11%)で、平均単価は15.1%増の2609万円だった。リノベーション内装も19.3%増収と好調だった。ソリューション事業は物件販売の一部期ズレ発生により売上高が49.8%減の17億43百万円、売上総利益が42.2%減の4億30百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が74億01百万円、売上総利益が10億85百万円、営業利益が41百万円の赤字、第2四半期は売上高が105億26百万円、売上総利益が15億70百万円、営業利益が2億30百万円だった。物件引渡時期によって四半期業績が変動する傾向がある。
なおバランスシート関連では、第2四半期末時点における販売用不動産は22年5月期末比53億82百万円増加の251億52百万円(内訳は単体ベースで通常物件が32億円増加の157億円、賃貸物件が20億円増加の89億円)となった。また固定資産の長期保有収益物件は121億円・296件(22年5月期末比15億円減少、82件増加)となっている。
通期減益予想は据え置いている。23年5月期は先行投資の影響で減益予想だが、エネルギー価格高騰を背景とする家計における光熱費の増加や、住宅ローン金利上昇による新築物件の需要への影響などを考慮すれば、同社の省エネリノベーションにとって有利な展開となる市場環境の変化も想定される。リノベーション市場は拡大基調であり、積極的な事業展開と先行投資の成果で中期成長を期待したい。
■株価は売り一巡
株価は地合い悪化も影響して昨年来安値を更新する軟調展開だったが売り一巡感を強めている。高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。1月20日の終値は510円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円35銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の18円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1381円47銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約46億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)