レアメタル使わず容量2倍のリチウムイオン電池正極材料を開発 東北大ら
2023年1月20日 07:59
東北大学、名古屋工業大学などは17日、鉄を使った大容量なリチウムイオン電池正極材料の開発に成功したと発表した。正極の材料に鉄を使うことで、サプライチェーンリスクを避けることができると共に、低コスト化が可能という。
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■利用範囲が広がるリチウムイオン電池
リチウムイオン電池の世界市場は急拡大している。電気自動車、ハイブリッド車、再生可能エネルギーを有効活用するための蓄電池など、リチウムイオン電池は現在、さまざま場面で活用されている。
だがリチウムイオン電池の正極(+極)には、コバルトやニッケルなどの希少なレアメタルが使われている。その製造には、コストがかかるだけではなく、常に資源枯渇や世界情勢の変動による価格の変動などのサプライチェーンリスクがつきまとう。
だが豊富に存在する鉄を使った正極材料であるリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を使うと、容量が低くなるという問題があった。
そこで研究グループは、新たに鉄を使った正極材料である逆蛍石型リチウム鉄酸化物(Li5FeO4)に注目。合成方法を工夫することで、これを使った正極の容量を、リン酸鉄リチウムを使った正極の2倍に高めることに成功した。
■合成方法を工夫することで容量を2倍に
元々、逆蛍石型リチウム鉄酸化物を使った正極は、リン酸鉄リチウムを使った正極よりも容量が低かった。これは逆蛍石型リチウム鉄酸化物の結晶構造に歪みがあったためだ。
そこで研究グループは、メカニカルアロイングと呼ばれる方法を使って逆蛍石型リチウム鉄酸化物を合成し、結晶構造の歪みを抑制。これを使った正極の容量を、リン酸鉄リチウムを使った正極の2倍(300mAh/g以上)に高めることに成功した。
なおメカニカルアロイングとは、複数の粉末や硬質ボールなどを機械的に衝突・混合させ、その衝突エネルギーを利用して合金などを合成する方法をいう。
研究グループでは今後、今回開発した正極材料を使うことで、サプライチェーンリスクを避けながら、リチウムイオン電池の低コスト化や大容量化を図っていくことが期待できるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)