日本フイルコン、新中計では収益力の回復に努めつつ、株主還元を強化する方針
2023年1月18日 11:16
会社概要
名倉宏之氏:今回は、弊社の会社概要、2022年11月期の決算概要、2023年11月期の業績予想、2023年度から2025年度中期経営計画について説明いたします。まず、会社概要につきまして、弊社は1916年に紙を抄く際に使用する網を製造する国内唯一の会社として創業し、今年で107年目を迎えます。
当社グループの事業
抄紙用網の事業からスタートし、網の用途拡大や技術の応用により徐々に事業領域を広げ、現在では4つのセグメントを主要な事業として運営しております。
産業用機能フィルター・コンベア事業は、抄紙用網の製造・販売を行う「製紙製品分野」と、ふるい分け・ろ過・搬送用の工業用金網の製造・販売を行う「その他産業用フィルター・コンベア分野」で構成されております。
電子部材・フォトマスク事業は、金属材料・複合フィルム材料をエッチング加工した製品の製造・販売を行う「エッチング加工製品分野」と、半導体などの製造に用いられるパターニング原板であるフォトマスクの製造・販売を行う「フォトマスク製品分野」で構成されております。
環境・水処理関連事業は、プール並びにろ過装置の設計・販売、天然ガスパイプラインの腐食・ガス漏れを防ぐ絶縁継手の販売などを行っております。不動産賃貸事業は、当社が保有する不動産を店舗・マンション・駐車場等として賃貸しております。
2022年11月期 連結業績
次に、2022年11月期の決算概要を説明いたします。売上高は、その他産業用フィルター・コンベア事業における市況回復に伴う需要増や、円安による増収効果などにより、前期と比べ11億6,800万円増加し、259億5,000万円となりました。
営業利益は、売上高が増加した一方で、原材料・エネルギー・製品運賃の高騰や、人件費や旅費交通費などの経費が増加したことにより、前期と比べ4,300万円減少し、10億6,000万円となりました。
経常利益は、為替差益や持分法投資利益が増加したことなどにより、前期と比べ7,000万円増加し、16億8,500万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を特別利益として計上した一方で、主に電子部材・フォトマスク事業において減損損失を特別損失として計上したことなどにより、前期と比べ700万円減少し、10億7,700万円となりました。
2022年11月期 業績増減要因
営業利益の増減要因につきまして、売上高は前期と比べ11億6,800万円増加いたしました。売上原価は前期と比べ5億円増加いたしました。主に売上高が増加したことによるものですが、売上原価率は1ポイント改善しております。こちらは、円安による販売単価上昇が寄与した一方で、原材料・エネルギー高騰の影響など経費が増加した結果です。
販売費及び一般管理費は前期と比べ7億1,100万円増加いたしました。主に海外における人材確保に伴う人件費の増加や、徐々に再開している営業活動に伴う旅費交通費などの経費が増加したことによるものです。
セグメント別
セグメントごとの概要です。産業用機能フィルター・コンベア事業については、製紙製品分野では、国内は紙の需要回復が鈍く、海外も販売活動の制約により販売数量が減少いたしましたが、円安の恩恵を受け売上高は増加いたしました。その他産業用フィルター・コンベア事業では、食品業界をはじめとして設備投資が回復しつつあり、コンベアベルト、苛性ソーダ生成用金網、海外向け原材料販売などが増加いたしました。
電子部材・フォトマスク事業については、電子部品業界は、生産額の伸び率は鈍化しつつありますが成長は継続しております。エッチング加工製品分野では、前期に大型製造装置の仕入販売を計上した影響で当期は売上高が減少いたしました。フォトマスク製品分野では、自動車業界や通信デバイス向けの販売が堅調であり売上高は前期と比べ増加いたしました。
環境・水処理関連事業については、前期に大型案件を計上したため大幅に減収減益となりました。コロナ影響による学校プールの授業中止に伴うろ過装置の修理・メンテナンス需要減少も一時的に影響しております。
不動産賃貸事業は、既存物件が順調に稼働しております。
2023年11月期連結業績予想
次に、2023年11月期の業績予想を説明いたします。
売上高は環境・水処理関連事業で複数の大型案件の計上を見込んでおり、前期と比べ15億4,900万円増加し、275億円となる見込みです。営業利益は先述の大型案件が資源の高騰の影響で増益効果が薄まることや、電子部材・フォトマスク事業のフォトマスク製品分野での設備投資による減価償却費増加を見込んでいるため、前期と比べ6,000万円減少し、10億円となる見込みです。
なお、配当につきましては、後ほど詳しく説明いたしますが、2023年度から2025年度の中期経営計画において株主還元を強化する方針としたこともあり、現時点では1株当たり16円の年間配当を見込み、配当性向は42.0パーセントとなる見込みです。
2020年度~2022年度中期経営計画振り返り
最後に、2023年度から2025年度の中期経営計画について説明いたします。
まず、2020年度から2022年度の前中期経営計画の振り返りですが、新型コロナウイルス感染症拡大という予測不能な事態の影響を大きく受け、前中期経営計画で設定した定量目標を達成することはできませんでした。
産業用機能フィルター・コンベア事業につきましては、売上高は円安が寄与したことなどにより目標に近い実績でしたが、営業利益は利益率の低い海外向け原材料販売が増加したことや、原材料・エネルギー高騰、経費増加などの影響により目標を達成することができませんでした。
電子部材・フォトマスク事業につきましては、売上高は目標を達成することができませんでしたが、営業利益は高付加価値製品の販売が好調であり目標に近い実績となりました。
環境・水処理関連事業につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う学校プールの利用減少により、プール用ろ過装置の新設・修繕・メンテナンスの需要が減少し、特に営業利益の目標を達成することができませんでした。
不動産賃貸事業につきましては、安定した収益を維持できております。なお、グループ資本効率目標であるROE5パーセント以上につきましては、2021年度は達成できましたが、2022年度は4.9パーセントとなり、5パーセント以上の維持に課題を残しました。またグループ株主還元目標である配当性向30パーセント以上につきましては、目標どおりの状況を維持できております。
次期中期経営計画に向け、新型コロナウイルス感染症拡大の影響やウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクの顕在化など先行きが見通しにくい状況が継続しておりますが、収益力の回復という最優先で取り組むべき課題が明確になったと認識しております。
2023年度~2025年度中期経営計画
次期中期経営計画におけるグループ長期ビジョンは、前回と同じく「100年超え企業として、次の100年も社会が必要とする製品・サービスを生み出し続ける企業集団」です。中期経営重点課題につきましては、前中期経営計画の振り返りを踏まえ、3点に絞り分かりやすく表現いたしました。
中期経営重点課題の説明
「1.収益力の回復」につきましては、厳しい経営環境下でも事業を成長させるべく、時代のニーズに即した環境配慮型製品の開発やM&Aなどに積極的に取り組むことや、AI・RPAツールの活用による業務効率化・自動化の推進にも取り組みます。
「2.ESG経営への取組と積極的な開示」につきましては、弊社のサステナビリティ方針の策定や、マテリアリティの特定を通じて価値創造ストーリーの構築を目指し、その内容を統合報告書などの媒体で開示することに取り組みます。
「3.個人の自律意識の向上」につきましては、組織および個人が自らの使命・役割を認識し、今何をすべきか、将来に向かって何をすべきかを自ら考え、行動する意識を向上させるために、教育プログラム拡充など人的投資に注力してまいります。
2025年度(2025年11月期)の中期目標
次期中期経営計画の最終目標である2025年度の定量目標は、売上高292億9,000万円、営業利益12億7,500万円です。グループ資本効率目標は前回と同じく5パーセントです。グループ株主還元目標につきましては、株主還元を強化する方針といたしました。配当性向の向上と自己株式取得を含めた総還元性向について3年平均で50パーセント以上となるように目標を設定しております。
セグメント別_2025年度目標_詳細
次に、セグメントごとの定量目標について、この目標を達成する背景となる事業環境と戦略についてそれぞれ説明いたします。
産業用機能フィルター・コンベア事業については、製紙製品分野の事業環境としては、国内では人口減少やデジタル化による情報用紙や新聞紙の需要が急激に減少しておりますが、大阪万博による紙需要増やインバウンド需要増加による衛生用紙の使用量回復への期待がございます。海外では、製品運賃の高騰や価格競争の激化など不安定な状況が続いておりますが、アジアの紙・不織布の使用量は緩やかに増加しております。また、新型コロナウイルス感染症の影響による渡航制限は徐々に緩和され、顧客に密着した営業活動が回復していくと想定しております。
戦略としては、国内市場ではシェアを伸ばし、海外市場では拡販を継続いたします。そして、今後も世界的に増加が予想される板紙、家庭紙、不織布向けワイヤーについて開発を進めてまいります。また、環境保護に貢献する製品の開発や廃棄物削減を推進いたします。さらに、人手不足に対応するため製造工程の自動化を進めます。
その他産業用フィルター・コンベア分野の事業環境としては、世界的な自動車電動化に伴う部品点数の減少により、連続熱処理用(耐熱)コンベアベルトの需要が減少しておりますが、冷凍食品はじめ加工食品・リチウムイオン電池・電子部品・不織布などの業界向けコンベア・フィルターは需要が増加しております。
戦略としては、国内工業用金網の最大手で幅広い業界に販売網を持っている強みを活かし、得意先の多様なニーズに応えるとともに、得意先の二酸化炭素排出量低減に貢献する提案(軽量化、省エネ等)や得意先の生産性向上に貢献する提案活動(寿命アップ、予防保全等)に注力してまいります。
電子部材・フォトマスク事業の事業環境としては、エッチング加工製品分野およびフォトマスク製品分野ともに、電子部品業界の活況が継続しております。今後は省エネ・高集積製品需要の増大と、それに伴う新技術が多様化したマーケットに対応した仕様に要求される傾向が強くなり、試作認定品の短納期対応とタイムリーな量産化体制の整備が重要となってくると認識しております。
戦略としては、エッチング加工製品分野では、現在進めている設備投資により生産技術革新を行い、従来対応できなかった得意先からの多様な加工依頼に応えられるよう技術開発力をより一層磨きつつ、操業含め効率的な体制を構築してまいります。
フォトマスク製品分野では、老朽化設備の確実な更新を実施し、現在得意先からの需要が旺盛な高周波デバイス・各種センサー向けフォトマスクの販売活動を強化いたします。さらに、パワー半導体向けフォトマスクは世界的な省エネへの関心の高まりとともに需要も増加しており、当社でも注力しております。また、ガラス加工品などの応用製品の展開にも注力いたします。なお、先述のとおり積極的な設備投資を計画しており、次期中期経営計画の期間における減価償却費の負担が重くなるため、営業利益の目標値は一時的に低い水準となっております。
環境・水処理関連事業の事業環境としては、国内の少子化による学校数の減少や、学校へのプール設置およびプール利用の減少により、学校プール市場は全体として減少しております。その一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による一時的な学校プールの利用減少につきましては、次第に状況が改善していくと想定しております。また、都市部を中心として老朽化を要因とする改築・学校の統廃合・小中一貫校化などによる学校建設は増加しており、都市部での学校プールの需要は底堅い見込みです。また、プールが設置されるアッパークラスも含めホテル客室数の不足は継続しており、今後も建設が増加する見込みであります。
戦略としては、底堅い需要が見込める都市部に経営資源を集中してまいります。また、過去の実績を活かして競技用プールや高層階ホテル向けプールの需要を確実に取り込んでまいります。さらに、FRPろ過装置を中心とした浴槽用商品のラインナップ化や、水資源の保護に貢献する製品の開発力の強化にも努めてまいります。
不動産賃貸事業については、次期中期経営計画の期間においては、物件の老朽化対策としての大規模修繕を計画的に実施し、賃料維持に努める方針でありますが、マンションや賃貸物件の更新を控えて保守的に賃料減額を織り込んだ目標を設定しているため、2022年11月期実績よりも売上高・営業利益が減少しております。