相場展望1月16日号 米国株は11/30高値接近、目標達成か 日銀の再利上げ、日米金利差縮小の円高に注意

2023年1月16日 10:20

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/12、NYダウ+216ドル高、34,189ドル(日経平均より抜粋
  ・1/12発表の12月米消費者物価指数(CPI)が前月比▲0.1%と小幅に低下、前年同月比+6.5%と上昇率は11月の+7.1%から縮小したのを好感して、NYダウは昨年12月上旬以来の高値で終えた。
  ・インフレ減速を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を前回の+0.5%を+0.25%に縮小するとの見方が強まった。1/12にかけて、複数のFRB高官が+0.25%の利上げを支持したとも報じられ、株買いを誘った。
  ・債券市場では、米長期金利が3.4%台前半と、ほぼ1ヶ月ぶりの水準に低下した。債券に比べ相対的な割高感が和らぎ、ハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄中心に買われた。景気敏感株の上昇も目立った。
  ・市場では、楽観が強まっている。投資家心理を測る指標となる米国株の変動性指数(VIX)は前日比▲11%低い18.8と昨年4月以来の水準に低下し、不安心理が高まった状態とされる20を下回った。インフレが徐々に弱まり、FRBがタカ派姿勢を和らげるとの見方から、相場の先安懸念が薄れた。
  ・個別では、アクティビスト(物言う株主)の経営関与への期待から映画娯楽のディズニーが買われた。アナリストが投資判断を引上げた航空機のボーイングも高い。一方、飲料のコカコーラ、外食のマクドナルドなどディフェンシブ株の一部が下げた。
  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は5日続伸した。

【前回は】相場展望1月12日号 日本株:(1) 日銀利上げ (2) 円高 (3) 高物価リスク (4) 岸田政権の不安定化の懸念材料に注目

 2)1/13、NYダウ+112ドル高、34,302ドル(日経平均より抜粋
  ・朝方に決算を発表した主要銀行が経済の先行きに慎重な見方を示し、景気悪化を懸念した売りが先行した。
  ・一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ減速観測は根強く、売り一巡後は主力株を中心に買い直され、NYダウは4日続伸した。
  ・JPモルガンチェースの経営陣は決算説明会で米経済が緩やかな景気後退に入るとの慎重な見方を示した。NYダウの構成銘柄ではないが、決算を発表した同業のバンクオブ・アメリカやウェルズ・ファーゴなども景気悪化に備える姿勢を示し、投資家心理の悪化につながった。
  ・米市場は週末を挟んで3連休を控えており、利益確定や持ち高調整の売りが進行し、NYダウの下げ幅は一時▲270ドルを超えた。売り一巡後は下げ渋り、上昇に転じた。
  ・1/13にミシガン大学が発表した1月米消費者物価指数で消費者が予想する1年後のインフレ率は+4%と、2022年12月の+4.4%から低下した。前日発表の12月米消費者物価指数(CPI)はインフレ鈍化を示しており、FRBが利上げペースを緩めるとの見方が米株相場を支えた。
  ・朝方は慎重な見通しを受けて売りが先行したJPモルガンチェースは次第に買い優勢に転じ、+2%高で終えた。2022年10~12月決算で1株利益が市場予想を上回り、「想定よりも悪くない内容」との受け止めが改めて広がった。
  ・スマホのアップル・建機のキャタピラー・ネット通販のアマゾン・画像半導体のエヌビディアが買われ、前日に上昇した映画娯楽のディズニー・電気自動車のテスラは下げた。

●2.米国株:金利低下を好感、半導体関連株が主導し反発

 昨年11/30高値接近を意識するか、注目
 1)主要株価指数の推移
  ・         12/30    1/13   上昇幅   上昇率
    NYダウ    33,147ドル 34,302  +1,155高 + 3.48%高
    ナスダック総合 10,466   11,079  + 613高 + 5.86%高
    SP500      3,839   3,999   + 160高 + 4.17%高
    半導体株指数   2,532   2,800   + 268高 +10.58%高
  ・金利低下を受け、高PER(株価収益率)の高いハイテク株が主導し株価上昇。

 2)恐怖指数(VIX)は低下したが、それだけに逆に上昇に注意
  ・VIX指数    12/30   1/13  低下幅  低下率     
           21.67   18.35  ▲3.32  ▲15.32%

 3)10年債・2年債の金利逆転「逆イールド」は拡大⇒注意
  ・逆イールド   12/30   1/13   拡大幅   拡大率
           ▲0.549% ▲0.726  0.177%   32.29%
  ・楽観的な米国株市場に比べ、債券市場は景気に「懸念」を示唆している点に注視。

 4)インフレ再拡大の材料
  ・国際商品市況指数(CRB)は上昇に反転し、インフレ圧力を増す傾向に注目。
            1/3       1/13
    WTI原油先物 72.94ドル(1/4) 80.07
    金       1,846ドル     1,923
    銅        374ドル     419
  ・インフレ率が鈍化してきたとはいえ、高水準のままである。
   FRBが目標とする「インフレ率2%」には程遠い点を忘れないようにしたい。  

 5)NYダウは、11/30高値に接近し、当面の目標は達成か
  ・NYダウ   11/30   1/13   差異
         34,589ドル 34,302  ▲287ドル
   半導体株   2,826    2,800  ▲ 26
  ・VIX指数も、節目の20を割込んで「買われ過ぎ」を解消した。
   逆に「売られる」リスクが増しているとも言える。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/12、上海総合+1高、3,163(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の持ち直しが期待される流れとなった。
  ・中国のリオープン(経済再開)進展や、中国当局の景気テコ入れスタンスが改めて材料視された。
  ・原油や銅などの商品市況高も追い風。昨夜のNY市場では、WTI原油先物が+3.0%高で5日続伸した。
  ・ただし、上海総合指数全体として上値が重く、マイナス圏で推移する場面もあった。
  ・12月米消費者物価指数(CPI)は今夜、12月中国貿易統計は明日1/13に公表。12月中国物価統計は、消費者物価指数が前年同月比+1.8%と市場予想と一致、生産者物価指数(PPI)は▲0.7%と市場予想▲0.1%以上に下落した。
  ・業種別では、石油関連の上げが目立ち、ハイテクはしっかり。不動産は安い。

 2)1/13、上海総合+31高、3,195(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合を継ぐ流れとなった。
  ・中国のリオープン(経済再開)進展や、当局の景気テコ入れスタンスで、国内経済が早期に持ち直すと期待された。
  ・人民元高の動きもプラス。米金利低下を受け、人民元は対ドルで上昇基調を強めた。
  ・12月米消費者物価指数(CPI)が鈍化するなか、米債券市場では米10年債利回りが急低下している。
  ・中国経済指標もそれほど悪くない。12月中国貿易統計は、ドル建ての輸出と輸入がマイナス成長を強いられたものの、減少率は予想より小幅だった。
  ・業種別では、金融が相場を牽引し、消費関連も総じて高い。ITハイテクは冴えず。

●2.中国パネル大手BOE、ベトナム北部で100ha取得、40億ドルで新工場建設(36KrJapan)

 1)サムスンなどに有機ELパネルを供給。竣工2025年の見込み。投資額は約5,800億円。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/12、日経平均+3円高、26,449円(日経平均より抜粋
  ・米国のインフレ減速への期待から、前日の米株式相場が上昇し、東京市場でも主力株に買いが入り一時+300円を超える場面があった。反面、一部報道を受けて日銀の金融政策修正への警戒感が広がり、相場全体の上値を押さえる要因となった。
  ・今晩発表の12月米消費者物価指数(CPI)の上昇率が鈍化するとの予想から米金利が低下基調となるなか、半導体や電子部品などグロース(成長)株の一角が買われた。資源や素材関連株も高く、欧米景気が想定よりも悪化しないとの見方や、中国の経済再開に向けた期待が継続した。
  ・1/17~18に開催の金融政策決定会合について、一部で「大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」と伝わった。金融政策修正による金利上昇の思惑から、銀行株はみずほFGなどが昨年来高値を更新するなど大幅高となった。一方、不動産株は軒並み安となった。円相場は131円台半ばまで上昇し、輸出関連株の重荷となった。
  ・前場中頃から積極的な売買は見送られ、膠着感の強い展開が続いた。
  ・住友鉱山・第一生命・ファナック・JFEが上昇、エーザイ・三井不・高島屋が下落。

 2)1/13、日経平均▲330円安、26,119円(日経平均より抜粋
  ・米国のインフレ減速や日銀が一段の金融政策修正を実施するとの思惑から、円高・ドル安が進み、投資家心理の重荷となった。
  ・前日発表の四半期決算が嫌気されたファストリが▲8%下落し、1銘柄で日経平均を▲200円余り押し下げた。
  ・1/12発表の12月米消費者物価指数(CPI)の前月比の伸び率がマイナスとなった。前年同月比でも上昇率は鈍化した。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが鈍化するとの見方から、円ドルは一時128円台まで円高が進み、業績の改善期待が後退したトヨタなど自動車株が売られた。
  ・1/13の国内債券市場では、長期金利が日銀の許容する変動幅の上限0.50%を大きく超える場面があった。日銀が来週1/17~18に開く金融政策決定会合で追加の政策修正に動くとの思惑が強まった。金利の先高観が強まり、利ざや改善を意識した買いが銀行株に集まった。三菱UFJなどメガバンクが連日で昨年来高値を更新し、コンコルディア・ふくおかFGなど地銀株も軒並み大きく上昇した。
  ・板硝子・東宝の下落が目立ち、キッコーマン・エムスリー・三井不が売られた。2023/3期の純利益を上方修正したセブン&アイが上場来高値、日本製鉄が上昇した。

●2.日本株:日銀の事実上の再利上げと、日米金利差縮小による円高に注意

 1)1/13、日経平均はファストリの1銘柄を除くと、実質▲113円下落で反動安の範囲
  ・1/13の日経平均は▲330円安となったが、ファーストリテイリングの1銘柄で▲217円下洛したため。
  ・なお、ファーストリテイリングは1/13、株価は▲6,350円安・▲7.95%と大幅下落。

 2)日経平均とNYダウの年初来の推移
  ・         12/30   1/13   差異    上昇率
    日経平均   26,094円  26,119  + 25円高  +0.10%
    NYダウ    33,147ドル 34,302 +1,155ドル高 +3.48%
  ・相違点:
   日経平均は、日銀の事実上の再利上げ警戒と円高で横ばい。
   NYダウは、インフレ率鈍化で、長短金利低下の恩恵を受け上昇。

 3)日米の金利差が縮小し、円高へ
  ・          12/30    1/13   差異      騰落率
   10年債金利 米国  3.879%   3.498  ▲0.381%低下  ▲ 9.82%低下
          日本  0.410%   0.500  +0.090%上昇  +21.95%上昇
   日米金利差     3.469%   2.998%  金利差が▲0.471%縮小⇒円高へ。
   円・ドル      132.52円  129.13円(米国1/13は127.88円)
      12/30比で、日本時間1/13は2.56%円高、米国時間比とは3.50%円高に拡大。

 4)日銀の金利上限拡大前後の日本10年債金利の推移
  ・  12/19   12/20 1/13
     0.251% 0.400 0.510 上限拡大前からは10年物金利は203%上昇。

 5)日経平均テクニカル指標は、「売られ過ぎ」は解消し、下落余地の高まりを示唆
  ・ストキャスティクス 1/3   1/12  1/13
    RSI      16    47   44
    FAST      8    74 74
    SLOW     11    54   68

 6)日本株式市場は、日銀の事実上の再利上げと、日米金利差縮小による円高進行が焦点
  ・日銀・金融政策決定会合の日程: 1/17~18、3/9~10、4/27~28。

 7)日経平均1/16は、「金利引上げ予想」と「円高の進行」で動揺する可能性がある
  ・特に、日銀の決定会合の結果待ちで今週前半は様子見ムードが広がりそう。

●3.TSMC魏CEO、日本に2カ所目の工場建設を検討(フォーカス台湾)

 1)最新の熊本新工場では、2024年に回路線幅12ナノ、16ナノ、22ナノ、28ナノ特殊製造プロセスの量産を開始予定。

●4.企業動向

 1)QBハウス  カット料金を4月から1,200⇒1,350円に値上げ(時事通信)

●5.企業業績

 1)サイゼリヤ  9~11月営業利益+16.97億円と黒字転換(ロイター)日本事業は赤字、豪州・アジア事業が好調

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)   

 ・2801 キッコーマン   業績堅調。
 ・5929 三和       業績好調。
 ・8439 東京センチュリー 業績堅調。

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