相場展望1月5月号 米国3大課題: (1) 業績悪化 (2) 逆金融相場 (3) 景気後退 日本株は「売られ過ぎ」の場面⇒自律反発期待
2023年1月5日 10:28
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)1/03、NYダウ▲10ドル安、33,136ドル(日経新聞より抜粋)
・スマホのアップルと電気自動車のテスラが大幅下げ、投資家心理を冷やした。
・週内に主要な米経済指標の発表など重要イベントを控え、様子見ムードも強かった。
・主力2銘柄の下げが相場のムードに影響した。アップルは部品納入業者に対して生産縮小を要請したと前日に伝わり、業績懸念の売りに押された。NYダウ構成銘柄ではないが、テスラは一時▲15%安と急落した。前日に発表した2022年10~12月期の販売台数が市場予想を下回り、失望売りが出た。
・米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げで、今年は米景気が後退局面入りするとの懸念がくすぶっている。前月に下げが目立った消費関連株や景気敏感株の一角に打診的な買いが入り、NYダウは午後に下げ渋る場面もあったが、買いの勢いは限られた。
・今週は12月開催分の米連邦市場公開委員会(FOMC)議事要旨や、12月米雇用統計の発表など重要イベントを控える。内容を見極めたい投資家が多く、相場の方向感が欠けた面もあった。
・医療保険のユナイテッドヘルス・飲料のコカコーラなどディフェンシブ株が下げた。原油安で石油のシェブロンも安い。反面、前週まで下げがきつかった航空機のボーイングなど景気敏感株の一角は上昇。映画娯楽のディズニーも高い。アナリストの買い推奨が出たアマゾンは+2%高。
・ハイテク比率の高いナスダック総合指数はアップルとテスラの下げが響き続落した。エヌビディアやAMDなど半導体関連株も下げた。
2)1/04、NYダウ+133ドル高、33,269ドル(日経新聞より抜粋)
・中国経済の回復への期待が一定の支えとなり、景気敏感株や消費関連株に買いが入った。
・ただ、週内に発表される米雇用統計を見極めたい投資家も多く、上昇の勢いは限られた。
・中国が新型コロナ感染拡大を防ぐ厳格な措置を緩める方向にある。株式市場では世界経済に前向きな動きだと楽観的に捉えるムードが優勢だった。
・中国が自国の半導体業界への補助金を抑えるとの一部報道を受け、米国の半導体関連銘柄が買われたのも相場を支えた。
・一方、午後に発表された2022年12月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、金融引締めを継続する方針が改めて確認された。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ継続への警戒が上値を抑えた。1/6に米雇用統計の発表を控え、様子見ムードも漂った。
・中国の経済再開の恩恵を受けやすい航空機のボーイング、娯楽映画のディズニー、半導体のインテルが買われた。化学のダウ、スポーツ用品のナイキも高い。電気自動車のテスラ・半導体のインテルが上昇した。アナリストが投資判断を引下げたソフトウェアのマイクロソフト・医療保険のユナイテッドヘルス・石油のシェブロンが下落した。
●2.米国株:米国の3大課題:(1)企業業績悪化 (2)逆金融相場 (3)インフレ抑制で景気後退
1)3つの大きな課題を抱える米国株式相場
(1)企業業績の悪化を織込んでいない
SP500企業利益減益予想・・1株当たり利益231⇒180ドルに低下予想。
(2)逆金融相場を織込んでいない
2020~2021年は新型コロナショックを克服するためFRBは5兆ドルの資金を市場に供給した。結果、景気は急回復したが、株式市場には「過剰金融相場」をもたらした。副作用として高インフレを招き、インフレ抑制に追い込まされた。2022年3月から、金融引締め策に転じ、(1)金利引上げ(2)市場からの資金回収に着手。2022年度の下落の主要因は、(1)金利引上げである。2023年度からは(2)市場からの資金回収による「逆過剰金融相場」に突入するが、この「逆過剰金融相場」の株式市場への影響は織込んでいない。
(3)高インフレは下方硬直性が強く、退治には長時間と総需要抑制からくる景気後退を招くのは、必須。
・FRBの金利引上げは2023年前半で終了、「停止」は年内まで続き、「引下げ」は2024年に入ってからと想定する。
・ただ、資金回収が進捗するため、米株式市場は「逆金融過剰相場」の「逆風」は収まらない。
・株式市場の好転には、FRBによる「資金回収」の停止⇒「再度の資金供給」への政策転換が待たれると予想する。
●3.FOMC議事要旨の概要
1)タカ派維持、2023年利下げ予想なし。
2)労働市場の均衡化に伴い、失業率は上昇。
3)FRBメンバーは、全般的にインフレリスクが鍵を握るとみている。
4)歴史は、時期尚早な緩和政策への転換を警告している。
5)多くのFRB高官が、両方のリスクを均衡させる必要性を強調。
●4.ラガルドECB総裁、インフレ2%に低下まで金利の上昇が必要 (ブルームバーグ)
●5.IMF専務理事が2023年の世界経済を警告、米国経済は比較的柔軟性がある(フィスコより抜粋)
1)国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は、今年の世界経済が2022年に比べ一段と厳しいものになると警告した。世界の経済大国である米国・欧州・中国の全ての国の経済成長が減速するためだと答えた。IMFは世界の3分の1の経済が景気後退すると予想している。景気後退しない国でも、国民は景気後退時のように感じることになると指摘した。
2)米国は景気後退を回避する可能性があるが、欧州経済はウクライナ戦争が重石となり、より脆弱で、欧州連合(EU)のほぼ半分の諸国が景気後退入りするだろうとした。
3)さらに、世界で2番目に大きな中国経済が、新型コロナ抑制のための都市封鎖によりビジネスや消費が鈍化し、サプライチェーンや貿易の流れを損なうことになり、世界経済の成長に響くことになる。中国の2022年経済は過去40年間で初めて世界成長を下回る可能性が強い。
●6.最大リスクは「余裕失うロシア」、米調査会社「ユーラシア」報告書の5大リスク(共同通信)
1)ならず者国家ロシア:戦闘長期化で余裕を失うロシアが、核兵器使用の威嚇・揺さぶり強化
2)中国の習近平国家主席
3)人工知能(AI)の発展
4)インフレ
5)イラン
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)1/03、上海総合+27高、3,116(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策への期待感が相場を支える流れになった。
・12月の中国製造業PMI(国家統計局などが集計)が大幅に下振れしたことを受け、「当局は景気テコ入れスタンスを強める」との見方が広がった。
・人民元高の動きもプラス。1/3の為替市場では、対米ドルの人民元が元高基調を強め、昨年8月の水準で推移している。人民元国際化の思惑が高まった。
・中国人民銀行(中央銀行)は12/30、人民元の為替取引の時間を1/3から延長すると発表。人民銀は声明文で、アジア・欧州・北米市場の取引時間帯をより多くカバーすることで、人民元建て資産の魅力を高める狙いと説明した。
・景況感悪化を嫌気した売りが先行したが、下値は堅く、指数は程なくプラスに転じた。
・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立ち、発電電力設備が物色、酒造・食品が下洛。
2)1/04、上海総合+7高、3,123(亜州リサーチより抜粋)
・中国リオープン(経済再開)の進展が好感される流れとなり、約3週間ぶりの高値水準を回復した。
・香港と中国本土との往来再開について、1/4にも詳細が発表されると伝わった。
・新型コロナウイルスを巡って、防疫措置の緩和以降、感染者が爆発的に増加したものの、コロナ拡大はピークを打ったとの見方もある。当局の発表によれば、広州では発熱外来の患者数が昨年12/23以降から減少。首都・北京を含む中国の大都市では、感染拡大ペースが鈍化し、人出が回復傾向に向かいつつあるという。北京や上海・重慶などでも感染拡大の波が収束に向かいつつあるという。
・ただ、株式指数の上値は重い。前日までの急ピッチな上昇を受け、売り圧力を意識した。
・中国人民銀行(中央銀行)が前日に続き、市場から資金を吸収したことが嫌気され、株式指数は安く推移する場面もみられた。
・業種別では、不動産の上げが目立ち、旅行関連・金融がしっかり。ハイテクは冴えない。
●2.中国12月経済活動さらに落ち込む、PMI製造業47・非製造業41.6急低下(ブルームバーグより抜粋)
1)コロナ流行拡大で、12月製造業PMIは47に低下、予想47.8・11月48。非製造業は41.6に急低下、予想は45だった、11月46.7。ずれも2020年2月以来の低水準。 PMI=購買担当者指数。
2)ゼロコロナ政策の唐突な撤回で、多くの都市に流行が広がり、国民は外出を控え企業は操業を停止した。
3)政策転換とコロナ感染拡大は、1~3月の中国経済にさらなる足枷となりそうだ。春節(旧正月)に見込まれる旅行急増も事態を悪化させる恐れがある。
4)2022年の中国国内総生産(GDP)成長率はわずか3%となった公算が大きい。
5)2023年は1~3月は停滞が見込まれるが、通年の成長率は4.8%への回復が見込まれる。
●3.WHO:中国における新型コロナ感染拡大はオミクロン変異株の亜種2種類が主体(フィスコ)
1)変異株亜種は「BA.5.2」「BF.7」が主体、中国疾病管理予防センターのゲノム分析による。
●4.EUは中国にワクチン寄付を申し出、中国は拒否姿勢「接種能力ある」(共同通信)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)1/04、日経平均▲377円安、25,716円(日経新聞より抜粋)
・2023年大発会の東京市場は、1/3の米国株安を受け、主力株の一角に売りが膨らみ2022年3月15日以来およそ9カ月半ぶりの安値。日経平均が大発会に下げるのは、2021年以来の2年ぶり。
・金融引締めによる米景気の減速懸念がくすぶっていることに加え、新型コロナ感染拡大による中国経済の不透明感も重荷となった。世界経済の動向を受けやすい海運・鉱業の下げが目立った。
・ただ、売り一巡後は自律反発狙いの買いが入り、下げ渋った。
・米国で1/4に発表される経済指標を見極めたいとの雰囲気が広がり、午後は25,700円台を中心に狭い値幅での動きが続いた。
・ファストリ・東エレクが下落し、トヨタ・村田製が昨年来安値を更新。金融が逆行高。
●2.日本株 : テクニカル指標では「売られ過ぎ」のサイン点灯⇒買い直し優勢か
1)2022年の年間騰落率
・日経平均 ▲ 9.36%下洛: 4年ぶりの年間安。要因は(1)世界的インフレ進行 (2)米国利上げ (3)日銀の事実上利上げ
NYダウ ▲ 8.8 : 下洛は4年ぶり。2008年以来の大きい下洛。
ナスダック ▲33.1 : 2008年の▲40.5%以来の大きさ。
SP500 ▲19.4 : 2008年の▲38.5%以来の大きさ。
上海総合指数▲15.13
2)テクニカル指標は1/4に「売られ過ぎ」サイン点灯 ⇒ 買戻しの可能性
・「空売りー騰落レシオ(25日)」が26.2と低下し「売られ過ぎ」サイン。
・「25日移動平均線乖離率」が▲5.51%、「200日乖離率」が▲5.68%と、▲5%超。
・ストキャスティクスのRSI(14日)が16、FASTが8、SLOWが11と低い水準。
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・3038 神戸物産 円高効果を期待。
・3141 ウエルシア 決算発表に期待。
・8331 千葉銀行 金利高で利ざや拡大期待。
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