相場展望1月2日号 株式相場: 2023年前半は警戒、終盤から回復か 2024年11月米大統領選挙を意識した動きに注目
2023年1月2日 11:28
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)12/29、NYダウ+345ドル高、33,220ドル(日経新聞より抜粋)
・米長期金利の上昇が一服し、このところ売られていたハイテク株や消費関連株の買い直しが優勢となり、一時+417ドルに達する場面があったが、年末前で休暇を取る市場関係者が多く、薄商いで値動きが大きくなりやすかった。
・長期金利は利上げの長期化観測から上昇が続き、前日に11月中旬以来の高水準を 付けたが、12/29は前日終値を下回る場面が目立った。金利上昇局面で相対的な割高感から売られていた高PER(株価収益率)のハイテク株に押し目買いが入り、顧客情報管理のセールスフォース・スマホのアップル・ソフトウェアのマイクロソフトが上昇した。ハイテク株が揃って買われ、投資家心理がやや上向いた。電気自動車のテスラが+8%高、交流サイトのメタの高く、下げが目立っていたエヌビディアなど半導体も総じて上げた。
・中国での新型コロナ感染再拡大を受けて、足元で下げていた消費関連株にも買いが広がった。前日に2020年3月以来の安値を付けた映画娯楽のディズニーが大きく上げ、クレジットのアメックスやスポーツ用品のナイキが買われた。
【前回は】相場展望12月29日号 年末・年始の上げ相場は期待薄か 中国コロナ感染に警戒、世界各国規制と経済活動影響
2)12/30、NYダウ▲73ドル安、33,147ドル(日経新聞より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引締めが、米景気や企業業績を圧迫するとの警戒感が根強く、前日に上昇が目立った消費関連や景気敏感株への売りが相場を押し下げた。
・米長期金利が1カ月半ぶりの高水準に上昇し、株式の相対的な割高感が意識されたのも、売りを誘った。
・米長期金利は一時3.90%(前日終値は3.82%)と11月中旬以来の高さとなった。
・個別では、ホームセンターのホームデポや映画娯楽のディズニーの下げが目立った。年末を前に持ち高調整の買いが入り、取引終了にかけて下げ渋った。
・NYダウは、年間で▲3,191ドル(▲8.8%)下落した。下落は4年ぶり。下落幅・下落率ともにリーマンショックのあった2008年(▲4,488ドル・▲33.8%)以来の大きさだった。
・ハイテク株比率が高いナスダック総合指数は前日比▲11安・▲0.1%安と反落した。年間では▲5,178安・▲33.1%下落した。下落率は2008年の▲40.5%以来の大きさだった。
・機関投資家の多くがベンチマークにするSP500株価指数は前日比▲0.3%安、年間の下落率は▲19.4%と、これも2008年の▲38.5%以来の大きさだった。
●2.米国株:2023年見通し:前半は警戒、終盤から回復 2024年11月は米大統領選挙、1年前からの経済対策に期待
1)米長期金利と米国株は「逆相関」が続く
・長期金利の上昇 ⇒ 米国株の下落(特に、ハイテク株の多いナスダック総合指数)
長期金利の下落 ⇒ 米国株の上昇(同上)
・米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)高官発言は「タカ派」的であり、政策金利を5.25%以上まで引上げを主張する者もあることから、長期金利は依然として上昇過程にあると言える。
・インフレの上昇率は鈍化が見られるものの、歴史的高水準圏にあることに変わらず。したがって、FRBのインフレ抑制政策は継続し、長期金利は引上げが継続と予想。
・ただ、2023年終盤以降、金利引下げ論が強まる可能性があると見る。
2)急激な円高・ドル安に傾く
・ドル・円の推移 : 12/16 137.31円⇒ 12/28 133.91⇒ 12/30 131.11円
・ドル安は、米国経済の後退を読み始めた可能性がある。もちろん、日銀の再金利引上げの予測も要因としてはあるが、急激なドル安に注目。
3)株価チャートでは、弱気相場の継続中と読める
・NYダウは下げ止まりを示唆、SP500は下げ基調の中の一時的反発を示唆。構成銘柄数は、NYダウが30銘柄、SP500は500銘柄である。その観点から見ると、米国株式は現状「弱気基調」の中にある、と言えそうだ。
・この株式の急騰相場を牽引してきたハイテク株だが、2022年初から大きく下落した。原因は「米長期金利の上昇」にある。ハイテク株は高PER(株価収益率)であり、長期金利高を意識して割高感から大きく売られ底割れ感がある。このため、ハイテクの株価回復は見込めず、調整は続くと見る。
・米株式市場の牽引役であったハイテク株の低迷期は、長期金利引上げ停止と引下げが見通せるまでは困難な時期が続きそうだ。
・なお、半導体市場は、メモリー系の市場は軟調継続、loTやAI向けは堅調に推移。半導体製造装置は、中国向けが規制強化で軟調に、先端半導体向け装置は順調な展開と予想。
4)長期金利「引上げ停止」は2023年後半、「引下げ」は2024年頃になると見る
・米景気後退に向かう中、米長短金利の逆転現象「逆イールド」が発生、継続している。
・2024年11月は米大統領選挙、その1年前から景気対策が打ち出され、景気は徐々に回復に向かうと予想する。
5)このような金利見通しから、2023年前半は警戒時期、2023年終盤から反攻開始と予想
・米企業業績の1株当たり利益は231ドル程度とのアナリスト予想があるが、米国並びに世界経済は下方修正されており、実際は180ドルになるとJPモルガンは見ている。
・米株価はこの企業業績悪化を織込んでいないため、織込み始める2023年前半は警戒したい。
・株式相場は「見通し」で動くものであるため、米企業業績回復の6カ月前当たりから上昇に転じる可能性があると見る。2024年11月に米大統領選挙、1年前からの景気刺激策に期待したい。また、米企業の利益回復予想も出始めると予想する。
・FRBの金利低下予測が強まり、2023年終盤から株式市場は先取りした動きが見られると予想する。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)12/29、上海総合▲13安、3,073(亜州リサーチより抜粋)
・前日の軟調な地合を引き継ぐ流れとなった。
・中国のリオープン(経済再開)の進展に伴い、国内感染が急増していることがマイナス材料になった。経済活動が再び停滞すると懸念される。
・また、米長期金利が上昇基調を強める中、人民元安の進行も不安がくすぶる状況だ。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、エネルギーも安い。医薬品・軍事関連が高い。
2)12/30、上海総合+15高、3,089(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策への期待感が相場を支える流れとなった。
・中国商務部は12/29の記者会見で、消費の回復拡大に注力すると表明した。
・中国人民銀行(中央銀行)の資金供給スタンスもプラス。人民銀行は12/30,1,810億人民元の資金を市中に供給し、この1週間で9,750億元(約18兆5,890億円)に達し、2019年1月以来の大きさとなった。
・米長期金利の上昇一服も好感された。米利上げの長期観測がやや後退する中、昨夜の米債券市場では、米10年債利回りが低下に転じている。
・業種別では、金融が相場を牽引し、発電・消費関連・運輸が買われ、医薬品は冴えず。
●2.中国株:2023年は習近平・3期目に注目、イデオロギー主導が顕著か 経済テクノクラートが不在の中、中国経済運営に注目
1)習近平・国家主席のイデオロギー主体の国家運営にリスク
2)経済に強い李克強・首相は3月に退任
・習近平・国家主席の信認が高い李強氏が首相に選任されると思われる。新首相の経済運営力は不透明であり、注目を要する。
3)米中対立の激化
・米国下院議会で1月に主導権を握る共和党は、民主党よりも対中国政策は強硬的である。
・中国は経済力を背景に外交・軍事等は攻撃的であり、中国の権益拡大政策に変更がない。
4)中国ゼロコロナ政策撤廃から、新型コロナ感染再拡大し、経済活動への影響に懸念広がる
・中国国内消費の減退。
・世界の工場の地位低下。
・東南アジア、インドなど他国への移転増加。
・サプライチェーン重要視で中国進出企業の自国生産への復帰が目立つ。
5)中国不動産業界の低迷は打破されていない
・不動産業界の中国GDPに占める割合は25%と言われるが、値下げ・販売戸数の減少と低迷が続く。
6)中国の国内問題が拡大
・失業率の上昇。
・高齢化。
・賃金高。
・生産人口の減少。
・少子化。
・地方政府の財政悪化。
7)欧州諸国では、強権的な中国への警戒感が広がり中国の孤立が進展
・ロシア・プーチン大統領との親密さ。
●3.中国、半導体製造強化を指示、自前生産で日米協力に対抗(共同通信)
1)中国の習近平指導部が、半導体の製造を強化する指示を工業情報省などに出したことが12/30に分かった。半導体の製造装置や材料の技術を入手するため、外国企業の買収も視野に入れる。日米などが安全保障上の観点から半導体の分野で協力関係を強めているのに対抗し、自前で生産する体制を整える。
2)世界で需要が多い低価格製品の生産に大規模な投資を実施することも求めた。国際市場での価格競争を激化させることで、他国のメーカーの経営体力を奪う戦略だという。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)12/29、日経平均246円安、26,093円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株安や中国での新型コロナ感染拡大に伴う世界景気や企業業績への懸念から、リスクを回避する売りが優勢となり、9/30以来3カ月ぶりの安値となった。
・前日の米株式市況ではハイテク株比率の高いナスダック総合指数が年初来安値を更新。米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、ハイテク株を中心に売りが広がった。東京市場でも投資家心理が弱気に傾き、午前は幅広い銘柄に売りが出た。
・中国でのコロナ感染拡大に伴う懸念も売りを誘った。
・市場では「経済情勢などを考慮するグローバルマクロ系のヘッジファンドが日本株の株価指数先物に売りを出した」との指摘があった。現物株では鉱業や海運業など景気敏感株の下げが目立った。
・売り一巡後は下げ渋った。短期の自律反発を見込んだ買いや、株式指数先物に散発的な買いが入った。
・JT・昭和電工・サッポロが大幅安、三越伊勢丹・商船三井が下落。三井不・コナミが上げた。
2)12/30、日経平均+0.83円高、26,094円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式相場の大幅な上昇を引き継いで高く始まり、上げ幅は一時+200円を超えた。
・もっとも、その後は年末年始の休場を控えて、見送りムードが強まった。散発的な手仕舞い売りに押され、下げに転じる場面もあった。
・米長期金利の低下を好感し、前日の米株式相場はハイテク株を中心に上昇した。東京市場でも相対的にPER(株価収益率)の高いグロース(成長)株に買いが先行したが、円高傾向や米株価指数先物の軟調な推移が重荷となり、買いは続かなかった。
・東京市場は明日から4日間の休場に入る。市場では「積極的な金融引締めや景気減速への懸念から、足元の米国株式相場は不安定。年末年始の休場中に保有株を持ち越すにはリスクがある」との声があった。
・今期業績予想を上方修正したアダストリアが大幅高、川崎汽船・Jフロントが上げた。東エレク・日揮・味の素・リクルート・明治・シャープ・任天堂が安かった。
●2.日本株:日本の未来を語り、国民とのコンセンサス強化を求めたい
1)岸田政権は、経済強化策は不透明、増税強化は鮮明で国民への説明なし、国会無視
・国家歳入の前提となる国内総生産(GDP)増加策は見えず。
・歳出では対外国支援は積極的だが、歳入は増税と国債増加頼み。
⇒ 国民1人当たり所得は韓国に抜かれたという、国力低下は気にならないのか?
その中で、林外務大臣は外務省予算で他国への国防費供与20億円と言及。
専守防衛の日本で、国会で議論・衆院選挙で信認を得てからの事項ではないか。
・自民総裁選挙時と首相選任時の公約はどうなったのか?
2)世界の中の「日本」はどうあるべきか? 議論の高まりに期待
3)日銀の事実上の再利上げに警戒
・日銀は12月に事実上の利上げを実施、長期金利上限+0.25%引上げ+0.50%に上昇。世界の主要中央銀行は長期金利引上げを既に実施済みで、日銀は周回遅れで金利引上げを実施した。
・日銀の政策遅れで、円安が大きく進み、企業はコスト高、国民は値上げで苦しむ。
・日銀は国民の生活を守る観点での信頼のもとで、運営するはず。日銀は政策説明責任を果たすべきではないか。
・株式市場は日銀の金利引上げ動向を警戒している。
●3.企業動向
1)日医工 債務免除985億円、私的整理成立、ファンド傘下へ(時事通信)
●4.企業業績
1)アダストリア 2023/2期営業利益100⇒125億円・配当55⇒60円上方修正(フィスコ)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・3099 三越伊勢丹 訪日客増で業績回復期待。
・7168 コンコルディア 貸出金利上昇で業績期待。
・8750 第一生命 運用金利上昇で業績期待。
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