日本のコロナワクチン接種、「個人的体験」ツイートで進む 東大の研究

2022年12月25日 08:12

 東京大学は23日、新型コロナウイルスのワクチン接種について、Twitter上で「個人的体験」が共有されることで、安心感が醸成された可能性があると発表した。1億件以上のツイートを公衆衛生の観点で分析した。日本のワクチン接種が、欧米よりスピーディに進んだ一因と推測される。

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 今回の研究は、東京大学大学院の小林亮太准教授が千葉商科大学、ベルギーのゲント大学らと共同で行った。2021年1月から10月の間に実施され、新型コロナワクチンに関して日本でつぶやかれた内容を分析した。

 2021年1月当初は投稿内容が分散していたが、職域接種がはじまった6月から個人的体験のツイート割合が増えていった。「自身の副反応」「接種の予定や報告」「接種後の体調」などが急増。10月には個人的体験は全体の70%にまで増えた。

 尚、陰謀論を唱えるツイートは6%程度と少なく、その内ジョークを含む内容も多かった。このことから、日本ではTwitterが陰謀論の温床にはなっていないことも示唆された。

 日本の新型コロナワクチンの接種開始は欧米から2カ月以上遅れたにも拘わらず、接種が急速に進んだ。医療従事者の接種開始からおよそ8カ月で、接種率は72%に及び、世界229カ国中14位となった。

 今回の研究は、接種期間中にワクチンに対する関心がどのように推移していったかを明らかにするために実施。これまでこうした調査はアンケートで行われてきたが、質問項目の設定に左右されるなど課題があった。そこでソーシャルメディアの分析に着目。

 今回の調査では、800万ユーザーが投稿した1.1億件の内容に関して、機械学習技術を活用し15のトピックに自動分類。さらにデータサイエンスの研究者の協力で、「個人的な事柄」「ニュース」「政治」「陰謀論のユーモア」の主要な4つに整理した。当初は個人的事柄は30%だったが、10月には70%にまで急伸したと分かった。

 データ解析技術を発展させれば、ソーシャルメディア上のデータから人々の関心や興味を推測することができる。東大では今後、公衆衛生などの政策決定に役立つことを期待している。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る

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