相場展望12月1日号 FRB議長「利上げ減速示唆」⇒(1)米国株急反発 (2)金利低下 (3)ドル安・円高 ⇒ 「利下げではない」注意

2022年12月1日 11:04

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/28、NYダウ▲497ドル安、33,849ドル(日経新聞より抜粋
  ・中国での新型コロナ対策への抗議活動が、中国の景気悪化を招き、世界経済に波及すると警戒され、景気敏感株やハイテク株など幅広い銘柄に売りが出た。
  ・中国の主要都市で前週末、新型コロナ感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ」政策に対する市民の抗議が広がった。中国のコロナ新規感染者数は過去最多の水準にあり、「中国景気の低迷が長期化する可能性が高まり、供給網の混乱を通じて世界景気を下押しする」と懸念された。
  ・景気敏感株が売られ、ボーイング・スリーエムが大幅下落、生産が滞ると伝わったアップル▲2%超安、中国の原油需要減少が警戒されシェブロンも安い。
  ・米連邦準備理事会(FRB)高官が金融引締めの長期化見通しを示したのも重荷。セントルイス連銀総裁は、インフレ抑制に向け「政策金利が経済に制約的になる道のりはまだ長い」と述べ、一段の利上げ余地を示唆した。NY連銀総裁も金融引締めを長く続ける考えを強調した。

【前回は】相場展望11月28日号 「逆イールド(長短金利差の逆転)」が発生してから約5カ月経過、そろそろ株価大幅下落を警戒したい

 2)11/29、NYダウ+3ドル高、33,852ドル(日経新聞より抜粋
  ・中国の厳しい新型コロナ規制が微修正されるとの期待から11/29の中国株が大幅に上昇し、投資家心理が改善した。反面、米連邦準備理事会(FRB)の金融引締めが長期化するとの警戒感が重荷。
  ・中国の衛生当局は11/29、高齢者へのワクチン接種強化や防疫措置の微調整の継続方針を発表した。感染拡大を封じ込める「ゼロコロナ」政策への抗議活動が中国の主要都市で相次いだことを受け、前日は中国経済の悪化を懸念した売りが広がっていたが、過度な警戒感が和らぎ、買い直された。
  ・もっとも、市場では「中国経済を巡る懸念はしばらく続く」との見方は根強く、買いの勢いは鈍かった。
  ・11/30にパウエルFRB議長の講演を控え、積極的な金融引締めが続くと警戒されたのも、相場の重荷になった。
  ・化学のダウ・航空機のボーイングなど景気敏感株の上昇が目立った。反面、金利上昇でハイテク株が売られ、アップル・セールスフォース・アマゾン・テスラが下落。

 3)11/30、NYダウ+737ドル高、34,589ドル(日経新聞より抜粋
  ・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の11/30講演を受け、12月FOMC会合での、利上げ減速観測が強まり、米長期金利は低下し、金利低下局面で買われやすい高PERのハイテク株など幅広い銘柄が買い優勢となった。
  ・パウエル議長は「利上げペースの減速時期は12月会合の可能性がある」と述べた。金融政策が景気や物価に与える影響には時間差があるとし、「政策金利がインフレを引下げるのに十分な水準に近づくに連れ、利上げペースを緩やかにするのは理にかなっている」との考え方を示した。
  ・足もとのFRB高官の発言を受けて、議長発言がインフレ警戒的になるとの警戒感が強かっただけに、利上げ幅の縮小を示唆する発言が株買いの安心感を誘った。
  ・特に、ハイテク株が買われ、マイクロソフト・アップル・セールスフォースが高い。金融引締めが景気を冷やすとの懸念がやや和らぎ、ビザ・ホームデポなど消費関連株も買われた。

●2.米国株:米パウエルFRB議長講演「利上げペース減速」を示唆 ⇒(1)株高(2)金利低下(3)ドル安・円高 ⇒ 「金利目標水準を引上げ」発言を忘れずに。

 11/30の大幅上昇は、FRB議長講演で「不透明感が去った」ことでの反発の範囲とみる。

 1)NYダウの推移 : 8/16高値を11/25に突破。1/4史上最高値には+2,210ドル必要。
  ・1/4最高値  8/16  9/30  11/30   
   36,799ドル 34,152 28,725  34,589
  ・9/30底値からの戻り率+20.4%。

 2)SP500の推移:12/27高値4,791を11/30は4,080と下洛傾向続く流れに注目
  ・2021/12/27 2022/3/29 8/16 11/30
    4,791    4,631  4,305 4,080

 3)米消費者の消費支出姿勢に変化、非実需・高額品を避け、食品など実需品にシフト
  ・米GDPの約7割を消費支出が占めるため、消費支出動向に注目が集まる。
  ・米国の年末商戦は年間の3割以上占め、どんな商店でも黒字になると言われる。最近では、前倒し傾向が見受けられるが、消費支出には依然として重要な期間である。
  ・今年の年末商戦は熱気がやや冷え込みそう
  ・予想では前年比+6~+8%と見込まれているが、インフレ率が直近で+7.7%のため、実質消費支出増は前年同期比で、横ばい程度か若干のマイナスが予想される。
  ・最近の傾向として、クレジットカードでの購入が目立ち、負債を膨らましながら購買している点にも注目したい。
  ・また、決算予想では小売大手のターゲットが下方修正、ウォルマートが上方修正した。
  ・ターゲットの販売製品構成は高額な電化製品などの割合が高く、ウォルマートは低価格な食料品割合が高い。この要因を背景に、両社の予想決算見込みに相違が生じている。
  ・以上のことから、「消費者は守勢に転じた」と見受けられ、景気減速や景気後退を読み始めたと思われる。

 5)したがって、米景気は下向きに転じ、米企業業績は総じて減速すると思われる。この状況は、いずれ株式相場にも響くと予想する。

●3.米パウエルFRB議長講演の要旨「利下げ減速を示唆」(フィスコより抜粋

 1)インフレ抑制には、まだ長い道のりがあり、任務達成まで軌道を維持する必要がある。

 2)FRBは当面、金融引締め水準を維持する必要がある。

 3)2023年の金利のピークは9月の見通しを上回る可能性が強い。

 4)ただ、過剰な引締めは望まず。そのため、利上げ減速へ。利上げペースを緩める時期は、早くて12月の可能性を指摘。

●4.米7~9月期GDPは前年同期比+2.9%増、予想+2.8%を上回る(フィスコ)

●5.米ADP民間雇用者数、11月は+12.7万人増、予想+20万人増を下回る(ブルームバーグ)

●6.WSTS(世界半導体市場統計)、2023年半導体予測▲4.1%減、2019年ぶり減少(ロイター)

●7.ハワイで世界最大の活火山噴火38年ぶり、住民に注意喚起(AFPBB)

●8.ユーロ圏11月消費者物価指数は10.0%上昇、2カ月連続2桁増(NHK)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/28、上海総合▲23安、3,078(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ感染拡大が売り材料視される流れとなった。
  ・中国で11/27に確認された新規感染者数は4万人を突破、5日連続で最多更新した。当局は感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を堅持。複数エリアでロックダウン(都市封鎖)など行動規制が実施されている。
  ・そうしたなか、首都・北京や商都・上海などで、異例の抗議活動がみられた。経済・社会の混乱も危惧され、中国経済の先行きも不安視。
  ・全国工業企業の利益総額は今年1~10月、前年同期比▲3.0%減の6兆9,768.2億元(約135兆円)に縮小した。マイナス成長は4カ月連続、減少率は1~9月の▲2.3%から拡大した。
  ・業種別では、金融株が下げを主導、エネルギー関連・ITハイテクも冴えない。

 2)11/29、上海総合+71高、3,149(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家のリスク選好スタンスが急回復する流れとなった。
  ・新型コロナ感染の防疫措置を巡る懸念がやや後退したほか、中国経済対策の動きが改めて材料視された。
  ・コロナ政策に抵抗し、週末に拡大した抗議活動については、ひとまず鎮静化の方向に向かっている。共産党機関誌の人民日報は、「ゼロコロナ」政策の重要性を強調しながらも、「行き過ぎた行動抑制があってはならない」との文章を掲載した。
  ・経済対策では、不動産ディベロロッパーの資金繰り支援策が相次ぐ状況。中国証券監督管理委員会は11/28,不動産企業のエクイティファイナンス再開など5項目の措置を発表した。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、金融・医薬品・ハイテク・インフラが高い。

 3)11/30、上海総合+1高、3,151(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済活動持ち直しの期待が相場を支える流れとなった。
  ・中国当局は新型コロナ感染の防疫措置を巡り記者会見し、無秩序な防疫措置は是正する必要があり、措置の微調整は続けると強調した。
  ・徐々に規制が緩和されるとの見方が強まっているが、上値は重い。
  ・中国11月製造業PMIは48.0、予想49.0・前月49.2から下降した。
  ・業種別では、自動車の上げが目立ち、石炭・メディアがしっかり。不動産は安い。

●2.中国、11月はさらに減速、ロックダウン拡大が響く(ブルームバーグ)

 1)ロックダウン制限対象は、先週末で4億1,200万人、前週末3億4,000万人から増加。

 2)10月は製造業、非製造業ともに縮小。卸売り・小売・不動産販売の減少が目立った。

●3.ファーウェイ、ZTEなど中国5社の機器、米国で販売禁止に(CNET)

●4.中国政府の締め付けで、中国IT大手の時価総額で軒並み下落(Forbes)

●5.中国、11月製造業PMIは48.0、非製造業46.7、市場予想を下回る(フィスコ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/28、日経平均▲120円安、28,162円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式市場で半導体関連などハイテク株が下落した流れで、東京市場でも東エレクなどに売りが優勢となり、一時▲200円超に下落した後、下げ渋った。
  ・中国での新型コロナ感染拡大を受け、中国経済の先行きに慎重な見方が広がった。
  ・東京市場でもNY原油先物相場の下げを通じて資源関連株に売りが広がった。
  ・もっとも、株価の先行きをみるうえでは今週末に発表される11月米雇用統計や12月米連邦公開市場委員会(FOMC)に対する関心が高く、足もとでは様子見ムードが広がりやすくなったこともあり、日本株の下値を模索する動きは限られた。
  ・住友不・塩野義・SMC・トヨタが下落、エーザイ・豊田通商・中外薬が上昇した。

 2)11/29、日経平均▲134円安、28,027円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株安が重荷となり、半導体や電子部品関連が売られた。下げ幅は▲260円を超え、節目の28,000円を下回る場面があった。売り一巡後は上海・香港株高や米株価指数先物の上昇を好感した買いが入り、相場全体を支えた。
  ・アップルの生産調整が伝わり、村田製・アルプスなどに売りが出た。
  ・米連邦準備理事会(FRB)高官から金融引締めに積極的な「タカ派」寄りの発言が相次いだことも投資家のリスク回避姿勢につながった。
  ・ソフトバンクG・ダイキン・エーザイが下落、ファストリ・資生堂・三井不が上昇。

 3)11/30、日経平均▲58円安、27,968円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めが長期化するとの観測が改めて浮上、運用リスクを避ける動きが優勢。ただ、下げ幅は前場に▲200円を超えたが、押し目買いも入り次第に下げ渋った。
  ・米連邦準備理事会(FRB)高官から金融引締めに前向きな「タカ派」的な発言が相次いでおり、投資家心理が弱気に傾いている。パウエルFRB議長の講演を控え、市場では「金融引締めに慎重な『ハト派』的な発言が出るとは見込みにくい」との声が聞かれた。パウエル議長発言を確認したいと考える投資家は多く、積極的に持ち高を縮小する場面が目立った。
  ・週末に11月米雇用統計を控えているのも、投資家の様子見につながった。
  ・MSCI指数構成銘柄の見直しでリバランス売買があり、売買代金4.15兆円と膨らむ。
  ・コナミ・キーエンス・カシオが下落、郵船・商船三井・IHI・川重・三菱重が上昇。

●2.日本株:12/1は米国株急騰を受け大幅反発予想、利益確定の機会、追い買いは注意

 1)日経平均の推移:昨年9/14高値まであと+2,702円上昇が必要、8/19抜けるか?
   ・2021/9/14  2022/3/9  8/19  9/30  11/24 11/30
   30,670円  24,717  29,222 25,937  28,383  27,968

 2)TOPIXの推移:昨年9/14高値まで、+133上昇が必要
   ・2021/9/14  2022/3/9  8/17  9/30  11/24  11/30
     2,118    1,758   2,006  1,835  2,018  1,985

 3)外国人は買越しを継続しているが、東証売買比率を下げており、売越し転換を注視。最近の外国人は、日本株の買い主体となる期待はできない。短期筋が中心と思われる。

●3.黒田・日銀、9月中間決算で初の国債含み損が▲8,749億円(共同通信)

●4.企業動向

 1)ホンダ   中国・武漢工場が稼働停止、感染拡大に伴う外出制限で(NHK)
 2)カゴメ   ケチャップなど329品目を2/1に7~24%値上げ、再値上げも(NHK)
 3)ニップン  冷凍食品60品目を3/1に3~13%値上げ(FNN)
 4)北陸電力  家庭用電力を4月に45.84%価格改定目指す(北陸放送)
 5)日本電産  イタリア工作機械会社「PAMA」150億円で買収(共同通信)

●5.企業業績

 1)京成電鉄  2023/3月純利益+257億円黒字に上方修正、前期▲44億円赤字(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・3086 Jフロント     業績好調。
 ・4661 オリエンタルランド 業績好調。
 ・9432 日本電信電話    業績堅調。

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