相場展望11月17日号 米中間選挙は上下両院で「ねじれ」に、政策に苦慮 決算発表イベントはまもなく終了、相場に変化も

2022年11月17日 12:16

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/14、NYダウ▲211ドル安、33,536ドル(日経新聞より抜粋
  ・直近2営業日で大幅上昇した後で、目先の利益を確定する売りが優勢だった。
  ・FRBブレイナード副議長が11/14、「おそらく利上げペースを減速するのがまもなくく適切になる」と述べ、金利上昇の余地が限られるとの見方から、FRBによる金融引締めの警戒が和らぎ、一時+200ドル超上昇する場面があったが、買いは続かなかった。
  ・前週発表の10月米消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回り、インフレがピークアウトしたとの観測からNYダウは11/10~11に+1,200ドル余り上昇した。11/14は短期的な利益確定したい投資家の売りが優勢だった。11/15に決算発表を控えるウォルマートとホームセンターのホームデポが大幅下落。
  ・マイクロソフト・ボーイングが下落、メルク・トラベラーズなどディフェンシブ株が買われた。ナスダック総合は3営業日ぶりに下落、アマゾン・テスラの下げが目立った。

【前回は】相場展望11月14日号 米国株は金利引上げ減速論で上昇も、インフレ高止まりを警戒 円高が及ぼす日本株への影響に注目

 2)11/15、NYダウ+56ドル高、33,592(日経新聞より抜粋
  ・インフレ鈍化を示す物価指標を受け、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの期待が強まった。
  ・もっとも、短期的な過熱感も意識されやすく、上値は重かった。
  ・11/15発表の米10月卸売物価指数(PPI)は前月比+0.2%上昇し、伸び率は市場予想+0.4%を下回った。インフレのピークアウト観測が改めて意識された。
  ・米長期金利が低下したのも支えに、NYダウの上げ幅は午前中に一時+450ドルに、達し、8月以来の高値圏に浮上し、利益確定売りが出やすかった。
  ・買い一巡後は上げ幅を縮め、下げに転じる場面があった。
  ・このところ上昇が目立っていた建機のキャタピラーや化学のダウなど景気敏感株や医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株の一角が下落した。
  ・ロシアのミサイルがNATO加盟国のポーランドに着弾し、死者が出たと伝わり、地政学リスクの高まりで売りが増え、上値を抑えた。好決算のウォルマート+7%高、米長期金利の低下でハイテクの半導体関連が上昇。

 3)11/16、NYダウ▲39ドル安、33,553ドル(日経新聞より抜粋
  ・小売大手のターゲットの低調な業績見通しを受け▲13%安、年末商戦の消費への懸念を誘い、消費減速の懸念が強まりディズニー・ナイキなど消費関連株が売られた。ハイテクのセールスフォース▲4%安、スマホのアップルも下落した。半導体関連株の下げが目立ち、マイクロン・エヌビディア・AMDにも売りが波及。
  ・反面、業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ株が買われ、下支えした。マクドナルド・ユナイテッドヘルス・P&Gが買われた。

●2.米国株:12月の米利上げ幅に注目、中間選挙での「ねじれ」に留意

 1)12月米利上げは、12/14のFOMC会合で決定予定
  ・今年最後の米利上げを決定するFOMC会合結果は12/14発表。
  ・利上げ幅は、(1)+0.75% (2)+0.50%のいずれかに収斂している。

 2)10月インフレ「鈍化」と言われたが、要因分析すると「鈍化の兆し」程度である。
  ・雇用は逼迫感が根強いままであり、10月小売も前年比+8.3%と好調を示している。ガソリン価格は反騰し始めている。サウジはじめロシア含むOPECプラス諸国は、各国の財政事情からしても80ドル/バレル以上を維持する方向で、日量200万バレルの減産で合意した。世界経済の減速に併せて、価格維持のため減産幅を調整すると思われるため、米国ガソリン価格の低下によるインフレ抑制効果は期待できない。

 3)QT(FRBによるバランスシート縮小)が進行すれば、FRBは金利引上げ政策に頼る必要性が薄まる
  ・QTの進行で、市中資金がタイトになるため、市場金利が上昇するためである。
  ・いずれ、FRBは(1)金利引上げ政策から、軸足を(2)QTに移行すると思われる。
  ・新型コロナ対策のためFRBは市場に5兆ドル超の資金を流入させた。まだ、11月末時点でわずか4,000億ドル程度の資金しか回収できていない。
  ・そのため、FRBは当面、(1)金利引上げ政策に頼った施策を継続させざるを得ない。したがって、雇用の逼迫は続いているため、FRBは金利利引上げを継続することしかインフレ退治の手段は無いと見ている。

 4)米中間選挙、下院は共和党が制す、政権と上院は民主党で、「ねじれ」
  ・与党・民主党は、記録的なインフレで劣勢が伝えられていた。
  ・しかし、トランプ・共和党政権時代の最高裁人事で保守派多数となり「人工中絶禁止」判決が下された。そのため、女性票が民主党に流れた模様だ。
  ・また、トランプ支持派による議会襲撃などもあり、若者を中心に反トランプ気運の高まりで、中間層などから民主党投票へと流れたようだ。
  ・中間選挙の投開票日において、米株式相場は「ねじれ歓迎」で大幅上昇した。理由は、民主党勝利なら「増税」必死となるところ、緩和されるとの思惑が優勢となったためだ。
  ・しかし、「ねじれ」となると、バイデン政権は政策運営で妥協を迫られ、レイムダック化への可能性が増す。
  ・債券市場は冷静に慎重に見ている。米2年・10年債利回りの逆転現象が起き、債券市場は景気減速懸念を心配している。その金利逆転幅が11/16にさらに拡大し、「▲0.665%」となった。
    11/9 ▲0.483% ⇒ 11/11 ▲0.568% ⇒ 11/16 ▲0.665%
  ・株式市場は「先行き」を見て動く習性が強いが、足もとの現実を見ると、株式市場の「浮かれ」が気になるところである。米中央銀行のFRB高官は、異常な3倍速の金利引上げ幅の見直し発言をしている。株式市場は、それを「金利引上げ停止」と間違って受け止めているように思われる。米10月売上高は前年比+8.3%、雇用も逼迫が継続している。米FRBの「金利引上げ幅の調整はあっても、引上げ政策は変えず」と予想。
  ・この認識ギャップの差を埋める動きが、株式市場に起こらないという保証は無い。やはり「株式が吹いたら売り・下げたら買い」の相場展開がしばらく続くと思われる。

●3.米10月生産者物価指数(PPI)、予想以上に改善(フィスコ)

        10月前年比 予想  9月
 1)総合PPI   +8.0%  +8.3  +8.4
 2)コアPPI   +6.7%  +7.2  +7.1

●4.米10月生産者物価指数(PPI)、予想以上に改善(フィスコ)

        10月前年比 予想  9月
 1)総合PPI   +8.0%  +8.3  +8.4
 2)コアPPI   +6.7%  +7.2  +7.1

●5.経済指標

 1)米10月小売売上高、前年比+8.3%増、前月比+1.3%増で予想+1.0%を上回る(ロイター)
  ・消費支出が10~12月の米経済を下支えする可能性を示唆した。自動車購入が堅調。 

 2)米10月鉱工業生産指数の中の製造業、前月比+0.1%増と予想+0.2%を下回る(ロイター)
  ・金利上昇で製造業の勢いが急速に失われていくことを示唆した。

 3)米9月企業在庫は前年比+17.8%増、前月比+0.4%増と予想+0.5%を下回る(ロイター)
  ・借入コストの上昇で需要抑制され、企業が追加発注に慎重になったことを示唆。

 4)米10月輸入物価は前月比▲0.2%減、4カ月連続下落、インフレピークの兆候(ロイター)
  ・前年同月比は+4.2%上昇、9月+6.0%、1年8カ月ぶりの低さだった。

 5)米10月生産者物価指数(PPI)、予想以上に改善(フィスコ)
           10月前年比 予想  9月
  (1)総合PPI   +8.0%  +8.3  +8.4
  (2)コアPPI   +6.7%  +7.2  +7.1

●6.来年の世界経済、さらに厳しさ増す恐れ、既に多くのリスクが今ここに(ブルームバーグより抜粋

 1)リスク
  ・米金融当局の急速な利上げが、2023年に米経済の景気後退を招く可能性。
  ・天然ガス価格の急騰で欧州に同じことが起きる恐れ。
  ・中国では「ゼロコロナ政策」と不動産危機のダブルパンチが中国経済を停滞に近い状態に追い込む恐れ。

 2)こうしたリスクが一度に起こると、世界生産から約5兆ドル(約700兆円)が吹き飛ぶとブルームバーグ・エコノミストは予測。

●7.米バーFRB副議長、「暗号資産に関し強力な監督体制導入が重要」(フィスコ)

●8.NATO同盟国ポーランドに露ミサイルが着弾し2人死亡(DZHフィナンシャル)

 1)米国ホワイトハウス、「正式情報確認できず」と発表(フィスコ)

●9.米ブレイナードFRB副議長、利上げ減速を示唆、引締めは継続(時事通信)

●10.バーFRB副議長、インフレが高過ぎで、米経済は大きな打撃を受けると警告(ブルームバーグ)

 1)上院銀行委員会の公聴会で11/15に証言。
 2)失業率は10月3.7%⇒2023年に4.4%に悪化する見通し=FOMC参加者の予想
 3)暗号資産による金融システムへの影響を懸念(ロイター)

●11.米インフレ期待が再び悪化、ガソリン値上げで家計圧迫=NY連銀調査(ブルームバーグ)

●12.米アマゾン、週内にも約1万人削減、従業員の3%相当、景気悪化を見通し(ロイター)

●13.バフェット氏のバークシャー、台湾TSMC株41億ドル超を取得(ロイター)

●14.米財務長官、批判的なEUなどとインフレ抑制法を巡り協議の用意(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/14、上海総合▲3安、3,083(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の新型コロナ感染拡大が不安視される流れとなった。
  ・国内の新規感染は11/13に16,072人(無症状含む)に達し、4/25以来の高水準を記録した。北京市など複数の主要都市では、過去最多を更新している。国家衛生健康委員会は11/11、新型コロナ防疫対策の一部緩和を発表したばかり。足もとでは、重慶市一部などが11/12、事実上の都市封鎖に踏み切った。
  ・また、中国では明日11/15に10月各種経済統計が公表される予定(小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資など)。内容を見極めたいとするスタンスも買い手控え要因として意識されている。
  ・中国経済対策の期待感や、為替市場では元高で推移していることを好感した買いが先行したものの、指数は後場途中からマイナスに転じた。
  ・業種別では、空運・空港・ツアー業者・ホテルの旅行関連が安い。石炭・自動車も冴えない。不動産は物色された。金融・医薬品も買われた。

 2)11/15、上海総合+50高、3,134(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済指標の下振れで、景気テコ入れ期待が高まる流れとなった。
  ・10月中国経済統計では、鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資などの伸びが事前予想以上に低下している。
  ・また、中国の習近平主席と米国のバイデン大統領が11/14にインドネシアで初めて直接会談し、衝突回避で合意したことも、買い安心感を誘った。
  ・9/22以来となる心理的節目の3,100を回復した。
  ・業種別では、電子部品・電器関連の上げが目立ち、不動産・醸造が高い。

 3)11/16、上海総合▲14安、3,119(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重なスタンスが強まる流れとなった。
  ・国内の新型コロナ感染再拡大が改めて不安視された。11/15の新規感染者数(無症状含む)は2万人を突破し、一部地区では外出規制など防疫措置が強化された。
  ・最も下値は限定的。
  ・足もとの経済指標の下振れを受け、当局が景気テコ入れを強化するとの思惑が根強く指数はプラスで推移する場面もあった。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、ITハイテク・金融も冴えない。軍事は高い。

●2.中国10月小売売上高は予想に反して前年割れ、コロナが景気の足枷(ブルームバーグ)

            10月前年同月比  予想   9月
 1)10月小売売上高    ▲0.5%減 +0.7%増 +2.5%増
 2)10月工業生産      +5.0%増  ―    +6.3%増
 3)1~10月固定資産投資  +5.8%増 +5.9%増   ―

●3.中国経済、予想以上に減速、財政・金融政策の限界も露呈(ロイター)

●4.中国10月失業率5.5%、市場予想と一致(フィスコ)

●5.世界の金融機関、中国で密かに人員削減、中国ビッグバン失速(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/14、日経平均▲300円安、27,963円(日経新聞より抜粋
  ・朝方、米株式先物の上昇で、海外短期筋の買い先行、小幅上昇する場面があった。
  ・ただ、前週末に+817円高と大幅上昇のため、短期的な過熱を警戒した利益確定目的の売りが優勢だった。日経平均寄与の高いソフトバンクGの下落が相場の重荷になった。
  ・為替相場では円相場が138円台後半まで円高・ドル安が進み、自動車など輸出関連株や、訪日客(インバウンド)関連の一角も売られた。
  ・日経平均は取引終了にかけて下げ幅を拡大し、今日の安値引けとなった。
  ・値嵩の東エレク・ファストリには積極的な買いが続き、日経平均を下支えした。
  ・決算発表したオリンパスが急落、任天堂・トヨタが安い。日本電産・資生堂が上昇。

 2)11/15、日経平均+26円高、27,990円(日経新聞より抜粋
  ・前週末まで急上昇した米国株が前日に下落した流れを受け、朝方は安く始まったが、米利上げペースの減速期待は根強く次第に買いが優勢になった。
  ・中国のゼロコロナ政策の修正観測も相場の下支えになった。
  ・業種別では、非鉄金属や鉄鋼業など素材関連が買われた。前日に決算発表があった大手金融株も強かった。三井住友FGは今期の連結純利益予想を上方修正したほか自社株買いも発表し、株価は+4%超高となり年初来高値。新型コロナ関連で材料の出た製薬株の上げも目立った。
  ・市場は「外部環境が悪く、もともと慎重スタンスの投資家が多かっただけに、米利上げペースの減速観測など前向きな話が出ると、株価は上げやすい」の声。
  ・7~9月の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質が前期比▲1.2%減(年率換算)だった。個人消費の伸び悩みもありマイナスとなったが、「国内経済よりも海外動向が重要」との声もあり、相場への影響は限られた。
  ・11/14の米中首脳会談については、「対話継続で、想定の域を出ない」との見方。
  ・住友鉱・三菱自・神戸鋼・アドテスト・日本郵政が買われ、リクルートは▲6%超安。

 3)11/16、日経平均+38円高、28,028円(日経新聞より抜粋
  ・米国のインフレ鈍化を示す物価指標を受け、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの期待が投資家心理を支えた。
  ・一方、ポーランドに着弾したロシア製ミサイルを巡って地政学リスクの高まりが警戒され売られ一時▲250円に迫る下げの場面があった。ただ、バイデン大統領が「露から発射された可能性は低い」と述べるなど、過度な警戒感が後退し、買戻された。
  ・米10月卸売物価指数(PPI)が予想を下回り、主要3指数が上昇した。インフレのピークアウト期待の高まりで米長期金利が低下し、東京市場でも半導体関連銘柄を中心にハイテク株が買われた。
  ・市場では「金融引締めや景気減速懸念に対し楽観的な見方が出ている」との声。
  ・米共和党のトランプ前大統領は、次期大統領選に出馬すると表明したが、市場では相場への影響は限定的との見方が多かった。

●2.日本株:決算発表イベント終了後の展開には、「慎重」に

 1)決算発表イベントが、まもなく終了
  ・ここは慎重に対処したい。
  ・「押し目買い⇒吹いたら売り」の相場取り組みが良さそうな展開を予想する。
  ・外国人先物の動きは、小幅ながら売越し基調が継続している。
  ・11月は経験則的には「上昇の月」であるが、既に高値圏に入っており、リスクを考慮すべきと思われる。

●3.7~9月GDP、年率▲1.2%、マイナスは4四半期ぶり、個人消費伸び悩む(NHK)

●4.企業動向

 1)日医工  債務超過▲356億円、上場廃止(北国新聞)
 2)7&I   そごう・西武を、米投資会社フォートレスに売却(ダイヤモンド)
 3)電通   ロシア事業を現地合弁企業に売却、損失▲370億円(時事通信)
 4)ティッシュ2社 ネピアは1/21に20%値上げ、クリネックスは2/1に15%(時事通信)
 5)大手外食 約7割が値上げ、2~3度目の値上げも2割以上(東京商工リサーチ)

●5.企業決算

 1)オリンパス  2023/3期営業利益2,120億円、前期比+45%増、予想2,310から下方修正(日経新聞)
 2)三井住友FG 2023/3期純利益7,300⇒7,700億円に上方修正(ロイター)
 3)DOWA  上期決算、経常利益369億円、前年同期比▲22.2%減(フィスコ)
         通期予想680⇒570億円、前期比▲25.1%減に下方修正
 4)マツキヨココ 3月通期純利益350⇒381億円に上方修正、前期比+11%増(日経新聞)
 5)東京エレク 3月通期営業利益7,160⇒5,460億円に下方修正、前期比▲8.9%減
        メモリー向け減(日刊工業新聞)
 6)SMC    3月通期営業利益2,550⇒2,485億円に下方修正、前期比+8%増(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・3141 ウエルシア     業界株価好調の流れを期待。
 ・5713 住友金属鉱山    銅国際価格上昇。

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