相場展望11月14日号 米国株は金利引上げ減速論で上昇も、インフレ高止まりを警戒 円高が及ぼす日本株への影響に注目
2022年11月14日 10:55
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)11/10、NYダウ+1,201ドル高、33,715ドル(日経新聞より抜粋)
・インフレのピークアウトが意識され、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを緩めるとの見方が広がり、2020年4月以来の上げ幅となり、8月中旬来の高値となった。
・10月CPIはエネルギー・食品を除くコア指数が前年同月比+6.3%上昇と、伸びが9月+6.6%から減速し、市場予想+6.5%も下回った。インフレ鈍化と受け止められ、FRBが12月FOMCで上げ幅をこれまでの+0.75%から+0.5%に縮小するとの観測が強まった。
・利上げ減速で、米景気の過度な悪化が免れるとの見方も投資家心理を支えた。
・米長期金利は一時3.81%を付け、前日4.08%から急低下した。金利低下で、相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株が大幅高。米国株の底入れが近いとの見方も押し目買いを誘った。
・セールスフォース・マイクロソフト・アップルなどが大幅上昇、消費への懸念が和らぎホームデポ・ナイキなど消費関連銘柄の上げも目立った。アマゾン・メタも急伸。
【前回は】相場展望11月10日号 バイデン民主党は善戦も、「インフレ退治優先の利上げ継続の覚悟強まる」と予想 日本株:「円安一服」「米国株の連れ安」に備えを
2)11/11、NYダウ+32ドル高、33,747ドル(共同通信より抜粋)
・米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース鈍化への期待が継続し、買い優勢。
・前日に発表された米消費者物価指数の上昇率が市場予想を下回ったことを好感した買いが続いた。
・ただ、前日に+1,200ドル超上昇した反動で利益確定の売りもあり、上値は重かった。
・中国の新型コロナ対策が緩和されることへの期待感も相場を支えた。
・ドラッグストアのウォルグリーン、スポーツ用品のナイキ、半導体のエヌビディア、インテルが上昇。医薬品のメルク、医療関連サービスのユナイテッドヘルスが下落。
●2.米国株:米国株は楽観論で反発も、米賃金上昇が続きインフレは高水準圏で高止まり
1)米株式相場の大幅反発の状況
・米FRBの通常の利率変動幅は「0.25%」、それを『3倍速した0.75%』を4連続 上昇と過去に例を見ないぐらい金利引上げをした。
・この3倍速の状況下、WSJ紙は「12月の引上げは0.75%ではなく、『0.50%』の減速観測」記事を掲載した。つまり、「3倍速⇒2倍速」への減速予測をした。
・ウォール街は、その記事に飛びついて株式相場は「楽観論」が主流となり株価大幅反発の起爆剤となった。
・追い打ちをかけたのが、米10月消費者物価指数(CPI)が+7.7%と前月比の鈍化である。
2)米インフレ鈍化の影響で、米インフレピーク達成の思惑?⇒ドル安・金利低下を連想
・ドル急落し、11/11には138円台にドル安/円高。米多国籍企業にとって、ドル高は業績悪化要因であり、ドル安は歓迎であり、株価的にも好材料となる。
・米10年債利回りも3.8%台に急低下した。ハイテク株にとっても、高PER(株価収益率)であり、金利低下はハイテク株買の有力な材料となる。
3)米10月CPIは、インフレ減速の可能性を示すデータであるが、「断定できない」
・米国の賃金率上昇が続いており、単月のCPIの鈍化だけで「インフレ減速」との判断は時期尚早である。
4)米株式市場は「超楽観的」過ぎる
・経験則では、11月は1年で最も上昇する月である。そして、12月は上昇率が鈍り、1~3月はマイナス株価となっている。
・インフレ率の上昇は10月CPIでは鈍化したといっても、依然として高水準にあることに変わりはない。
5)暗号資産(仮想通貨)は総崩れの可能性⇒株式市場への影響を注視
・暗号資産(仮想通貨)交換業のFTXの負債総額は数兆円とも言われているが、損失額の大きさは不透明であり、その影響も現状では定かではない。
・ただ、リスク資産に対する警戒感が強まったのは事実であり、今後の動向に注視したい。
6)米10月CPI(消費者物価指数)は、インフレは収まっていない、まだまだ続くインフレ抑制
・10月CPIはインフレ減速の可能性を示唆する、初期の兆候にすぎない。
・米国経済の需要低下があって、賃金上昇が下げるまでは、インフレは収斂しない。
・それまでは、FRBは金利上場幅は+0.75%から+0.25%まで調整するだろう。つまり、通常の上昇幅+0.25%の「3倍速」から、12月予想「2倍速」に予想しただけがWSJ紙の予想記事である。「1倍速」に言及していないことに注目するべきではないだろうか。依然として、金利上昇の過程の中での調整にすぎないと思われる。
7)米国株相場は、景気減速のソフトランディングを期待しているが、ハードランディングになると思われる
・これだけの「超金融緩和相場」のもと、「高インフレが続く」と「インフレ退治には痛みを伴う需要減対策」が必要であろう。つまり、ハードランディングになる。
・株式市場は「金利上昇幅」だけに注目しているが、「総需要の引締め」には「市場からの資金回収」も必要となる。FRBの『QT(資産圧縮)』は始まったばかりである。その「QTを米株式相場は織込んでいない」、ことを忘れないようにしたい。
8)米債券市場は、依然として「慎重」
・米10年債/2年債利回りの「逆イールド」は、11/11で▲0.519%と拡大傾向にあり、米債券市場は米株式市場の楽観とは違う展望をしていることに注目したい。
●3.米10月CPI消費者物価指数は前年比+7.7%、予想7.9%・9月8.2%と鈍化(フィスコ)
1)米10年債利回り4%割れ、3.87%台まで低下
2)ドルが急落、141円台に
3)FRB利上げ減速観測
●4.米イエレン財務長官、インフレ鈍化に向かう転換点とは不明(ロイター)
●5.米・先週分新規失業保険申請件数は予想を上回り+22.5万件(フィスコ)
●6.暗号資産(仮想通貨)交換業者のFTX、米破産法適用申請(ブルームバーグ)
1)グループ会社アラメダだけで資産・負債は100億ドル(約1.39兆円)を超える。
2)今月、FTXの財務面に問題があるとの報道をきっかけに信用不安が高まり、投資家が相次いで資金を引き揚げたことで、資金繰りが行き詰まった。(読売新聞)金融庁は11/10,FTXジャパンに対して一部業務停止命令を含む行政処分を出し、利用者が預けている資金の保全を求めた。ソフトバンクG投資ファンドや大阪なおみ選手など著名スポーツ選手も出資していた。
3)FTX破綻で「投資家の資金は戻ってこない」、米SEC委員長が警告(Forbes)
4)サマーズ氏、FTXのメルトダウンは「エンロン型不正の匂い」を指摘(ブルームバーグ)
●7.ビットコイン、一段安なら株のベアマーケットラリー終了も=エバコア(ブルームバーグ)
1)エバコアによると、「新型コロナ渦前の2019年の高値13,850ドルを割込めば、圧力が高まり、現在の株式のベアマーケットラリーが終了するだろう」と分析した。
2)ビットコインは11/9に一時▲16%下洛し、2年ぶりに16,000ドルを割込んだ。
●8.テスラ株、過去2年間の上昇消す、マスク氏の追加売却開示後(ブルームバーグより抜粋)
1)マスク氏はこの1年間で約360億ドル相当のテスラ株を売却した。現在の保有14%。
2)マスク氏は「株式を売却しない」と繰り返し否定していたが、11/8に39.5億ドル(約5,800億円)の相当の実施したことで、今後のさらなる売却の可能性にドアを開いた、との指摘がある。
3)バイデン大統領が11/9に、「マスク氏と他国の関係は調査するに値する」と発言したことも、下げ幅を拡大した。
●9.フィラデルフィア連銀総裁、今後数ヶ月で利上げペースが減速すると予想(ブルームバーグ)
●10.ディズニー、予想下回る決算で、採用凍結・全社的コスト削減(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/10、上海総合▲12安、3,036(亜州リサーチより抜粋)
・前日までの軟調地合を継ぐ流れとなった。
・中国国内では新型コロナの感染拡大が止まらず、経済活動の停滞が危惧された。当局は新型コロナ感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を堅持していることもあり、行動抑制などの防疫措置も各地で強化された。
・また、直近で公表された経済指標は弱い内容が多く、中国経済鈍化の警戒感も高まっている。ただ、下値を叩くような売りは見られない。
・「経済指標の下振れは、景気対策につながる」との見方も根強く、政策で恩恵を受けやすい銘柄群の一角は物色された。
・業種別では、半導体関連の下げが目立ち、軍事関連も安い。酒造・食品はしっかり。
2)11/11、上海総合+51高、3,087(亜州リサーチより抜粋)
・内外環境の改善で投資家心理が上向く流れとなった。
・中国の国家衛生健康委員会は11/11、新型コロナの防疫対策(入境規制)を一部緩和すると発表した。中国共産党の最高指導部が11/10の会議で、新型コロナ感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を継続する方針を確認する一方で、同時に過剰な措置や画一的な措置は是正する必要があると指摘した。
・外部的には、米インフレ指標の下振れを受け、「米金融当局は利上げペースを減速する」との観測がプラス。米10年債利回りは急低下し、為替相場は元高方向で推移。
・米中関係の改善も期待された。米中両政府は11/10、「インドネシアのバリ島で11/14バイデン大統領と習近平・国家主席の首脳会談を開催する」と発表した。
・業種別では、不動産の上げが目立ち、消費関連も物色され、エネルギーなどが上昇。
●2.中国雇用悪化、失業率9月全体5.5%、若年層(16~24歳)17.9%(テレビ朝日)
・大学卒業1,976万人の15%しか就職決まらず
●3.中国不動産セクターに対する地方政府の救済関与強化に懸念(ブルームバーグ)
1)中国政府の後押しを受け、地方政府の資金調達事業体(LGFV)が不動産開発会社の未完成工事の主な買い手となっている。
2)このため、LGFVの債務総額は最大60兆元で、中国GDPの約半分に相当し、デフォルトになれば大混乱を引き起こす可能性がある。
●4.中国アリババ、「独身の日」セールの取引額を異例の公表見送り(産経新聞)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/10、日経平均▲270円安、27,446円(日経新聞より抜粋)
・米中間選挙が予想外の接戦となり、政治・経済の先行き不透明感から前日の米国株が下げた流れを受け、売り優勢となり、一時▲340円を超えた。
・10月米消費者物価指数(CPI)の発表を11/10に控え、午後は動きが鈍かった。
・主要企業の決算発表が相次ぐ中、業績や収益見通しが市場の期待に届かなかった銘柄が売りに押された。暗号資産(仮想通貨)のビットコインの価格が大きく下げているのも投資家心理の重荷となった。
・10月米CPIの結果は、米金融政策を巡る市場の思惑に影響を与え、11/10の米株式相場が大きく動く可能性があるため、東京市が場では全体に売り一巡後、積極的に持ち高を傾ける動きは限られた。
・決算発表したホンダ・クボタが下落、ファストリ・東エレク・浜ゴムが下げた。上昇修正したフジクラがストップ高、鹿島・川重も大幅高した。
2)11/11、日経平均+817円高、28,263円(日経新聞より抜粋)
・米10月消費者物価指数(CPI)を受けて前日の米株式相場が急騰したのを背景にハイテク株を初め幅広い銘柄に買いが入り、28,000円台を回復した。
・米労働省が11/10発表した10月CPIが市場予想を下回る伸びにとどまり、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの見方から米株式相場が急伸。急速な米金利引上げの伴う景気減速懸念が後退し、11/11の東京市場でも投資家心理が上向いて活発な物色につながった。
・これまで株価が冴えなかった値嵩株のハイテク株を中心に買いが強まり、東エレクとアドテストの2銘柄で日経平均を+170円ほど押し上げた。
・午後に不適切発言をした葉梨法相の更迭方針が伝わったが、相場への影響は限定的。
・エムスリー、サイバー、リクルート、安川電、キーエンスが高い。百貨店は下落。
●2.日本株:円高が及ぼす株価への影響に注目
1)円高に基調が転換、8円を超える円高
・円/ドルの推移
11/4 11/11
147.06円 138.74 : 8.32円もの円高
・円安で株高となった輸出企業にとっては、マイナスとなる。
2)テクニカル指標(11/11)は、過熱感を示唆
・移動平均線(25日)+3.8%、(200日)は+4.10%と過熱感を示す。
・騰落レシオ(6日)は122.46と、やや過熱を示唆。
3)外国人先物は11/9から売り転換が続く
・特に、11/11日経平均が+817円高したが、外国人先物は▲7,000枚台の大口売越し、今後の動向に注目したい。
4)日経平均11/11+817円高も、値下がり銘柄数が517銘柄と多く、注視したい
・値上がり銘柄数1,260は、日経平均の上昇幅に比べて意外な少なさ。
●3.先端半導体の国産化へ新会社「Rapidus」(ラピダス)設立へ8社が出資(NHK)
1)トヨタ、デンソー、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFG銀行
2)新会社では、自動運転やAI、スマートシティなど大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない先端半導体の技術開発をし、5年後の2027年をメドに量産化を目指す。回路幅は、現在の主力15~6ナノ⇒現在の先端3ナノ⇒目標2ナノ以下
3)政府も研究開発に700億円補助の方針。
●4.企業動向
1)楽天 モバイル部門で人員削減、2019年携帯事業に参入も苦戦(ブルームバーグ)
2)いすゞ ロシアでの生産撤退を検討、3月から現地工場は停止している(共同通信)
3)オリックス DHC買収へ3,000億円、ブランド強化(共同通信)
4)三井化学 米の眼鏡レンズ加工メーカー買収(時事通信)
●5.企業業績
1)ミズホ 3月通期純利益見通し+70⇒+85億円、前年比+10%増(ロイター)
2)クボタ 12月通期営業利益+2,600⇒+2,400億円、前期比▲2%減(ロイター)
北米の農機具不足、タイ洪水で販売減少
3)ブラザー 4~9月決算、事業利益+359億円、前年同期比▲27.3%減(フィスコ)
4)カシオ 7~9月営業利益+52億円、前年同期比▲15.6%減、予想▲20億円
通期予想270⇒240億円に下方修正、円安・中国販売不振(フィスコ)
5)不二製油 上期決算営業利益51億円、前年同期比▲36.0%減、予想70億円(フィスコ)
6)東京エレク 今期営業利益7,160⇒5,460億円に▲2割以上の下方修正(ブルームバーグ)
7)マツダ 3月通期純利益見通し1,300億円、前期比+59.4%増(ロイター)
8)東芝 9月中間決算、営業利益は27億円、前年同期比▲93.3%減(朝日新聞)
9)ソフトバンクG 上期決算純損失▲1,290億円赤字、前年同期+3,635億円黒字(毎日新聞)
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・4661 オリエンタルランド 業績回復期待
・4912 ライオン 業績回復期待
・9021 JR西日本 業績急回復
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