パリ国際自動車ショーからの展望
2022年11月10日 08:16
「パリ国際自動車ショー」が4年ぶりで開催された。だがフォルクスワーゲン(VW)やBMWなどの独大手メーカーや、トヨタ自動車などの国産メーカーは軒並み参加を見送った。
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欧州市場でのメーカー別新車販売台数トップ10のうち、実に7社までが不参加となり、その結果、出展社数は前回(18年)の約260社から、半数以下の120社弱という。
新興メーカーが多く、出展車の主力はEV車であった。
●2022年1~6月の欧州EV車販売順位
10月18日付日経に掲載された、マークラインズのデータによれば、
(1)VW(独)
(2)ステランティス(欧州)
(3)テスラ(米)
(4)現代自動車グループ(韓)
(5)ルノー・日産(仏・日)
(6)BMWグループ(独)
(7)メルセデス・ベンツ(独)
(8)浙江吉利控股集団(中)
(9)上海汽車集団(中)
(10)フォード(米)
以上の10社である。
●まともな自動車メーカーは?
(1)VW、(2)プジョー、Jeep、(5)日産・ルノー、(6)BMW、(7)ベンツ、(8)ボルボ、(10)フォードと車名を挙げれば、ガソリン車でも過去蓄積した「自動車造り」のノウハウを持っている企業も多い。
ボルボの様に、中国資本傘下となっていても、まともな自動車造りの経験が蓄積しているので、まともなメーカーに分類出来るだろう。
しかし、(3)の様な走行中にボンネットが開いたり、自動運転作動不良を起こす企業や、(4)の様に米国道路交通安全局(NHTSA)にエンジンの欠陥隠しで課徴金を課されたりする企業は「まともな自動車メーカー」に計上する訳には行かないだろう。
●「自動車」を甘く見てはいないか?
数千円以下で購入可能な家電製品なら、「失敗した!カスを掴んだ。やっぱり少々高くてもまともなメーカーの製品を初めから買っておくべきだった」で、諦めがつくかも知れない。
しかし、自動車は「命を乗せている」、安全性が必須要件の商品である。
今までに「まともな自動車」を造った経験が無いメーカーに、「安全性を確保した自動車」を造れるはずが無い。
「まともな時計が造れない」、「まともなカメラが造れない」そんな国に、「まともな自動車」なんて造れるはずが無いのは理解出来るだろう。
低レベルの時計を買って、狂っていたので約束の時間に間に合わなくても、やっと巡り合ったシャッターチャンスをカメラの故障で逃しても、命に別状は無いが、自動車ではそうはいかない。
筆者がいつも言うのは、自動車の安全性に対するあるべきスタンスは、「事故発生率を小さくする」といった外国メーカーの考え方では無く、「事故はゼロにする」という日本のメーカーのスタンス、倫理観である。
●ハイブリッド車より簡単に造れるEV車
HV車は、「内燃機関(殆どはガソリンエンジン)とモーターを複合的に作動させる」という、高度な技術レベルを要する。
この日本製のHV車に、「技術的に対抗不能」だと悟ったが、日本に屈するのを潔しとしない結果、EV車に逃げ込んだのが欧米メーカーだ。
また、最初から内燃機関に取り組んでも、未来永劫、日本車はおろか欧米の車にも、途上国のノックダウンや現地生産車にも歯が立たないから、表面上は手軽に造れると思えるEV車に土俵を変えて何とかしようとしたのが中国だ。
●自動車の歴史的な流れ
そもそも自動車は、18世紀に蒸気機関を搭載した「蒸気自動車」として登場した。
電気自動車は、フランスのトルーベが1881年のパリ 電気博覧会で展示した、モーター搭載の三輪自動車が、充電式電池搭載では初の電気自動車とされる。
世界初のガソリン車は、1886年から1893年の間に25台が製造されたという、ベンツの三輪車“ベンツパテントモートルヴァーゲン”である。
自動車の黎明期には蒸気機関・電動モーター・内燃機関が動力源の覇権を争っていたのだ。
蒸気機関が脱落し、「電気自動車」は誕生が先だったが、その欠陥を「ガソリンエンジン搭載車」が補って、現在の自動車文明を発展させたのである。
まともな内燃機関エンジン搭載の車やHV車が造れなくても、低技術でも造れるのがEV車なのだ。
日本には283社ものメーカーが存在した「バイクメーカー乱立時代」から、現在の4社に集約された事実から推測しても、殆どは淘汰されるはずなのは明白である。
果たして何社生き残れるのだろうか。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)