老化によって免疫力が低下する原因の一端を解明 京大ら
2022年10月31日 19:57
京都大学、理化学研究所などは28日、老化により免疫力が低下する原因の一端を解明したと発表した。研究グループによれば、キラーT細胞内において、加齢によってスペルミジンと呼ばれる物質の濃度が低下し、ミトコンドリアの機能が低下。キラーT細胞の活性が低下することが、その原因の1つだという。
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■キラーT細胞とは?
キラーT細胞は、我々の免疫において重要な役割を担う、リンパ球の1種だ。ウイルスに感染した細胞やがん細胞の排除を主な役割にしている。
歳を取ると、感染症にかかりやすくなったり、がんになりやすくなったりするが、このキラーT細胞の活性低下が一因になっている。
しかし、加齢によるT細胞の活性低下については、キラーT細胞内におけるスペルミジンと呼ばれる物質の濃度の低下が関わっていることは解っていたが、その詳細な仕組みについてはよく解っていなかった。
■キラーT細胞の機能が低下する仕組み
研究グループではこの仕組みを解明するため、ミトコンドリア代謝やエフェクター機能に注目しつつ、マウスについて、分子生物学的手法を用いて研究を進めた。
その結果、キラーT細胞内で加齢によってスペルミジンの濃度が低下すると、脂肪酸酸化、エネルギー産生などのミトコンドリアの機能が低下。キラーT細胞の活性の低下につながっていることを突き止めた。
がん免疫療法の中核を担う免疫チェックポイント阻害薬は、加齢によって効きにくくなっていくが、その原因の1つに加齢によるキラーT細胞の活性の低下が考えられている。そのため、今回の研究成果は、そのような免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいがんの治療に対して、新しい治療戦略を与える可能性がある。
研究グループでは今後、免疫チェックポイント阻害薬とスペルミジンの補充を併用した治療法について臨床応用を目指し、さらに研究を進めていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)