電力事情の再確認 EV車普及を前に
2022年10月25日 16:23
ロシアのウクライナ侵略と、これに対する各国の制裁措置により、勃発以前の「脱炭素」の議論は傍らに追いやられた様だ。
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「角を矯めて牛を殺す」の諺があるが、脱炭素、CO2削減と騒ぎ立てた結果、経済が崩壊しては何にもならない。
ロシアの凶行が、せめて地球規模のヒステリーを沈静化する一助となってくれれば、極悪非道のロシアによる唯一の社会貢献ポイントとなるだろう。
●地球は氷河期から温暖化の過程にあるらしい
SB日本語版の報道によると、「IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、これまでの予測よりも10年早い2021-2040年に世界の平均気温上昇が産業革命以前から1.5度以上に達するとの新たな予測を発表した」という。
地球は本来「温暖化」と「寒冷化」のサイクルを繰り返している。
2013年8月8日発行の「Nature誌」でも、『氷期-間氷期が10万年周期で交代する気候変動は、日射変化に対して気候システムが応答し、大気-氷床-地殻の相互作用によりもたらされたものであり、大気中の二酸化炭素(CO2)は、氷期-間氷期サイクルに伴って変動し、その振幅を増幅させる働きがあるが、CO2が主体的に10万年周期を生み出しているわけではない』としている(アンダーラインは筆者)。
地球の寒冷化は約10万年周期で温暖化と寒冷化を繰り返し、その間にも小さな温暖化と寒冷化が繰り返されている。また、現在の温暖化は事実であるが、大きな500万年スケールで見ると現在も寒冷化傾向にあるとされる。
ここでは一般認識としては、現在は温暖化の過程を辿っているとされるので、これを基に論を展開する。
●人類の祖先の誕生は400万年前
人類の祖先の誕生が400万年前で、地球誕生から現在までを1年としたカレンダーに換算すると、12月31日の午前7時頃だ。
今の人の形に至ったのが31日の23時49分のことで、人類の文明が文字を使うようになったのが、31日の23時58分34秒となるそうだ。
人類としては、10万年周期のサイクルを既に40回経験している筈だが、文字を使う様になって以降だと、1年の終わり、大晦日の残り1分半しか存在しないから未知の領域である。
現在、地球温暖化の象徴として、海面上昇等の問題がクローズアップされているが、もし現在が氷河期にむけての「寒冷化」の過程であるとするなら、「地球の寒冷化を防げ、温室効果ガスであるCO2の排出量を確保しろ!」と騒ぐのだろうか?
成程、永久凍土が溶け出して、封じ込められていた病原菌等が活性化し、蔓延が危惧されたり、海抜が低い地域での陸地の消失が話題になっているが、ある程度は人類の英知で対応が可能だと思われる。
一番問題なのは、短絡的に「脱炭素」を声高に叫び、現在の経済環境に対する影響にはそっちのけで騒ぎ立てることだろう。
●電力事情に問題の無い国
現代の人間社会には欠くことの出来ない「電力」一つとっても、「再生可能エネルギー」で賄える国は極めて少ない。
「EV車は前途洋々か?」(2021年10月6日付)でも、各国の電源構成事情について述べたが、 EV車に関する「1充電走行距離」等の問題が全て解消したにしても、自動車を全てEV車にして「走行に使用する電力」を、不自由なく利用可能な国は極めて少数である。
加えて、上記記事内での資料の調査時点は2017年で、ロシアのウクライナ侵略戦争勃発以前のデータである。
供給余力にはらはらせずに電気を使える国は、せいぜい「原子力発電比率71.5%のフランス」や「水力発電約50%のノルウェー」位だろう。
ドイツの場合、「ノルドストリーム」「ノルドストリーム2」といった、メルケルの能天気な「ロシアの天然ガスへの全面的な依存」と「脱原発」の施策が一挙に崩れ去り、10月18日付日経新聞夕刊1面トップにも、「独、原発全基稼働可能に」「電力安定へ方針修正」と、原発への回帰が大々的に報道されている(写真参照)。
現状は客観的に見て、ウクライナ侵略戦争は膠着状態であり、ロシアが年内に経済制裁に音を上げて戦争終結するなり、経済破綻して国家崩壊することは期待薄である。従って、2023年4月に原発を完全に稼働停止することは、現実的ではない。
日本でも、生活基盤たる「電力」の供給自体に不安があるのに、「一戸建ての一家3人が、4日間暮らせる」電力で300~400km程度しか走れないというのが現状のEV車を、補助金まで出して普及させる必要があるのかを改めて問いたい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)