日産とルノーの出資見直しで、対等な関係構築へ (下)

2022年10月21日 12:00

 日産が保有するルノーの株式が15%であるの対して、ルノーが保有する日産の株式は43%にも及ぶ。現在の販売台数や技術力に反比例しているかのようで、過去の経緯はあったにしても、バランスを欠いていることは明白だ。

【前回は】日産とルノーの出資見直しで、対等な関係構築へ (上)

 近い将来、エンジン車事業会社としてガソリン車やハイブリッド車部門を継続する新会社(社名はルノー?)と、EV車事業会社として設立される「アンペア」がルノーを引き継ぐ。

 エンジン車事業を受け持つ新会社に、ルノーと中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団傘下の吉利汽車が40%ずつ出資、石油会社が残りの20%を保有するプランが公表されている。EV車事業会社にはルノーが過半数を出資し、日産と三菱自動車が各15%程度の出資で調整中だ。この出資見込みだけでも、ルノーがEV車にかける意気込みが窺える。

 懸念されるのは、エンジン車事業の協業先として、吉利汽車が参加することだ。日産がルノーをリードして磨いてきたエンジン車技術が、日産の承諾なしにルノーを通して吉利汽車へ流れるリスクが生じる。吉利汽車は独メルセデス・ベンツグループとの提携関係のもと、次世代HV向けのエンジンを共同開発しているから、穿った見方をすると先行グループの知見を効率よく収集できることになる。

 自動車業界がEV化へと舵を切ったことは、中国に有利に働いていると言われる。高度な技術水準に到達している内燃機エンジン部門で、後発の中国が先行グループに追いつくことは至難なことだった。

 それに対して部品が半減する(と言われてきた)EV車は、参入が容易だ。なんと言っても、誰もが1からのスタートになる訳だから、全ての参加者に公平であることも間違いない。確かに中国勢のEV車攻勢は、割り切りの良さや価格競争力を意識した値付けもあって突出している。

 それに加えて、内燃機エンジンで卓越した技術力を誇るベンツと日産のノウハウを獲得できるなら、EV化の流れが中国に与えた恩恵は計り知れない。応用力のある中国の技術者にとっては、宝の山であろう。日産の技術者は、日産のノウハウがルノー経由で吉利汽車へ流れることを危惧している。この問題にどんな歯止めをかけられるのかが焦点の1つだ。

 18日、フランスのルメール財務相が、日産とルノーの出資割合に変動が起こることを前提に、「連合が維持される保証」を求めると発言したという。日本側の本心は将来の行動を制約するような言質を与えたくないだろうが、フランス側は「一札書け」と言っている。

 吉利汽車と連合の保証問題にどんな対応をするかで、交渉の行方が微妙になることは否めないが、すでに「11月8日に分社化などの事業戦略説明会を開催する」と公表しているルノーに、残された選択肢の幅は限られている。日産の永年の懸案に、意外な形でケリが付く日は近い。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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