銀行の常識が、社会の非常識 ジリ貧の銀行に足りないもの (上)
2022年10月14日 17:57
キャッシュレスへ向けた動きがいよいよ本格化してきた。個人間の少額送金サービス「ことら」が10月11日に一部の銀行で始まった。
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既にペイペイやLINEペイなどでは、割り勘の精算や家族間の仕送りなどが無料で送金できるようになっていたから、目新しさはあまりないが、時代の趨勢に乗り遅れたくないという生存本能に目覚めたかのようだ。
銀行が「ことら」を始めた一因には、スマホ決済グループが提供する高い利便性と効率性にユーザーが馴染んで、銀行への足が遠のいていることもあるだろう。
どんな商売でも、活気がある伸び盛りの事業には、野次馬も含めた多くの人々が集まって更に商機が広がる。そうした中で発想力の溢れた売り手側が、良いものやサービスを提供していると、実店舗やECを問わず人は群がるし、商売は活況を呈する。
銀行が今までやってきたことは、その反対だったのではないだろうか?顧客が集中しないように繁忙日や繁忙時間帯を告知するのは、「お客様の待ち時間を減らすため」という聞き心地の良いアナウンスとは裏腹に、本音は違うところにあったのかと思えてしまう。
一時期、閑散そうな窓口に払い戻しに行くと「機械の方が早くて便利」と言って、 ATMコーナーに誘導された経験を持つ人は多いだろう。同じような案内を何度も受けると、思わず「すみません」などと卑屈になって通帳を差し出すようになる。
CDやATMの拡大に血道を挙げたのも、「待ち時間が少ない」という美辞麗句は建前で、押し寄せる客に翻弄されたくないというあたりが正解と感じる。もちろん、情報通信システムのレベルが上がったことで可能になった、という時代背景があることは間違いない。
収益の確保に悩む銀行は、従来無料だったサービスから手数料を取ることを覚えた。今までやっていたから特に準備も必要なく、独占のようなものだから手っ取り早く稼げることも確かだ。
その手数料の中で頓珍漢なのが両替の手数料だ。三井住友銀行の場合、窓口で両替をすると、501〜1000枚で手数料が1540円と告知されている。例えば、日々のショッピングで毎日2円の釣り銭を貯金して1年後に溜まった1円硬貨を730枚、三井住友銀行の窓口で両替すると1540円の手数料を請求される理屈だ。
理不尽なことは銀行員も承知しているから、平身低頭して不利益であることを懇切に説明するだろうし、両替を希望する人もわざわざ810円の足を出すことに納得しないだろうから、現実にそんな取引は行われていない筈だ。問題は、両替を希望して差し出した現金を全てを巻き上げて、更に追い銭が必要になる可能性を想像しない無神経さにある。
※三井住友銀行を例にしたことに他意はない。日本を代表するメガバンクとして、イメージしやすい存在感に敬意を表して登場して頂いた。(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)