がん幹細胞に高い選択性と有効性持つ化合物発見 新規抗がん剤に期待 京大など
2022年10月14日 08:18
京都大学、順天堂大学などは11日、微生物由来中分子化合物レノレマイシンが、大腸がん幹細胞に対して非常に高い選択性と有効性を示すことを確認したと発表した。研究グループによれば、がん幹細胞を選択的に死滅させる薬剤には、他の抗がん剤と組み合わせることで、より少ない副作用でがんを退縮させる可能性があるという。
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■がん幹細胞とは?
がん幹細胞とは、未分化ながん細胞だ。未分化なまま自己を複製する能力(自己複製能)と、さまざまながん細胞に分化する能力(多分化能)を持っている。いわばがん細胞の親玉的な存在だ。
このがん幹細胞は通常のがん細胞と共にがん組織を構成しているが、既存の抗がん剤に対して強い耐性を持ち、がん再発の大きな要因の1つになっている。そのため、世界中でこれをターゲットにした研究が進められているが、いまだ有望な抗がん剤は開発されていない。
そこで研究グループは、独自にがん幹細胞の培養システムを構築。これに基づいて、微生物代謝産物ライブラリーを使って、スクリーニングを実施した。
■微生物由来中分子化合物レノレマイシン
その結果、研究グループは3つのイオノフォアを特定した。イオノフォアとは、細胞膜などの生体膜について特定のイオンを通しやすくする物質の総称だ。
その3つのイオノフォアの中でも、レノレマイシンが、大腸がん幹細胞に対して非常に高い選択性と有効性を発揮することを確認した。その活性はサリノマイシンの10倍以上の強力な活性を持つという。なおサリノマイシンは、2009年に確認されたがん幹細胞に対して有効なイオノフォアで、現在も盛んに研究が進められているが、まだ臨床には至っていない。
また同時に、レノレマイシンが、細胞に対して強烈な毒性を持つ活性酸素をつくりだすことで、がん幹細胞を殺傷することも突き止めた。
研究グループでは今後、今回開発したがん幹細胞の培養システムに基づいて、化合物スクリーニングを継続し、がん幹細胞に対する新しい抗がん剤の候補を探していきたいとしている。
今回の研究の成果は、10月8日に、国際学術誌「The Journal of Antibiotics」オンライン版に掲載されている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)