ウォール街を知るハッチの独り言  過去の事例から学ぶ長期投資の効果(マネックス証券 岡元 兵八郎)

2022年10月13日 09:20

*09:20JST ウォール街を知るハッチの独り言  過去の事例から学ぶ長期投資の効果(マネックス証券 岡元 兵八郎)
さて、マネックス証券の「メールマガジン新潮流」が、10月11日に配信されました。
そのなかから今回は、同証券のチーフ・外国株コンサルタント、『ハッチ』こと岡元兵八郎氏のコラム「ウォール街を知るハッチの独り言」の内容をご紹介いたします。

近年YouTubeやTwitterなどのSNSで米国株のインフルエンサーと呼ばれる多くの方々が米国株投資について情報発信をする時代になっています。 そんな中、アメリカの個人投資家の普通の方で何十年も長期投資を行ってきて大成功をした方の話は私も余り聞いたことはありません。SNSがない時代、株式投資で成功していても、現在ほど簡単に他の人に知らしめることはできませんでしたし、そういうことをしようと思う人もそれほどいなかったのかもしれません。

1ヶ月くらい前のことです。アメリカの個人投資家の成功例はないかと調べていたところ見つかりました。
この方はロン・リードさんという、1921年生まれで2014年に92歳で亡くなられた方です。
お仕事はというと長い間ガソリンスタンドに勤務、その後もアルバイトとして百貨店で働いていたというごく普通の方なのです。そんな普通のロンさんが亡くなった後のこと、ご本人の遺言で、近くの図書館に約1.4億円、病院に約5.7億円の寄付をされたのです。 地元のメディアがこの事実を報じると、このロン・リードさんとは一体どんな金持ちなのかと、全国的に報道されるようになるのです。彼は家族の中で初めて高校に通ったくらい、貧しい農家で生まれ育ちました。そんな彼が亡くなった時、ロンさんはおよそ9.6億円もの資産を保有していたのです。

彼はどうやってそれだけの大金を貯めたのでしょうか。はい、もちろん株式投資です。
彼は1959年から株式投資を始め、少しずつ買い続け、売ることはせず、配当金はそのまま使わずに同じ銘柄に再投資し続けたのです。たった、それだけです。
これは、長い間上がり続けている米国市場であったからこそできたことだと思います。 その長年の投資の結果、彼が亡くなった時、彼は毎月約240万円の配当金を受け取っていたと言います。当時の為替で年間約2,880万円の配当収入です。
資産の9.6億円の内訳はというと、増配をおこなってきた米国の優良銘柄など95以上の銘柄を保有していたと言います。彼が保有していた銘柄の上位5社は、ウェルス・ファーゴ(WFC)、P&G(PG)、アメリカン・エクスプレス(AXP)、コルゲート・パルモリーブ(CL)と言った誰もが知る一般的な銘柄です。

例えば、彼が最も多く持っていた銘柄は銀行のウェルス・ファーゴです。 同行は2008年の世界金融危機の際に株価は高値から4分の1まで下落したのですが、その時も売らずずっと保有、その間も配当金をコツコツ再投資し保有株数を増やした結果、彼のウェルス・ファーゴ株は金融危機の前の高値を更新、2014年の保有残高は約6,100万円となったのです。 保有していた銘柄の中には、もちろん失敗した銘柄も含まれています。
2008年の世界金融危機の時には、保有していたリーマン・ブラザーズが倒産してしまったのですが、それでも彼のポートフォリオは95銘柄以上に分散されていましたので、全体的には被害は大きくなかったようです。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ロンさんは「優れた銘柄ピッカーであるだけでなく、驚くべき倹約と忍耐を示した。それが彼に長期に渡る複利の成長をもたらした」としています。

人生100年と言います。長生きするにあたって、お金はないよりあったほうが良いのは間違いありません。ロンさんが行った米国の優良株を長期で保有し、配当金の再投資を継続すること、これはただの海の向こうで起きた過去の成功談ではなく、今を生きる私たちにとっても教訓となる、決して今からでも遅くない資産形成の方法の一つではないかと思っています。

マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント 岡元 兵八郎
(出所:10/11配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)《FA》

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