トラスショックの世界的影響は!?
2022年9月30日 17:03
●経済対策が嫌気されてポンドが急落
英国トラス新政権が23日に打ち出した大幅な減税を柱とする経済対策が嫌気され、英国通貨ポンドが急落し、ポンド・米ドルのパリティ割れも現実味を帯びている。
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22日には英国中央銀行・イングランド銀行(BOE)が0.5%の利上げを決定し、英国債の売却を発表。利上げと減税策が原因で、英国10年債利回りは急騰し、26日には5%を超えた。
英国債の利回り上昇は米国債の利回り上昇に飛び火し、NYダウも急落。ついに3万ドルを割り込むこととなった。
まさに“トラスショック”とも言える今回の急落だが、今後も世界的な影響は続くのだろうか?
●トラス氏の減税策
トラス首相が打ち出した成長プランは、所得税の最高税率の引き下げや法人税の引き上げ凍結、印紙税の削減など、まさかの減税策だった。
1980年代の英国サッチャー首相のサッチャリズムや、米国レーガン大統領のレーガノミクスを想起させる政策だが、単なる富裕層優遇との批判が強い。
経済成長により、減税分を5年で回収できるとしているが、インフレを加速させ、財政も景気も悪化するだけと懸念されている。
●苦境が続きそうな英国
国民生活の苦境も深刻で、英国のインフレ率は直近40年で過去最大を記録。さらなる値上げが予想されており、家計を圧迫している。
トラスショックを受けて上昇した金利を抑えるために、BOEは28日に国債の買い入れを表明し、火消しに回った。
異例の介入とも言える国債の買い入れで、一旦金利の上昇も収まり、米国金利の上昇も歯止めがかかって、株価も上昇した。
だがトラス新政権が、金融引き締めの中での減税策というアンバランスな政策を引っ込めない限りは、根本的な問題は解決しない。
英国はエリザベス女王の逝去により、豪州などから英連邦離脱との声があるなど、英連邦の危機も囁かれている。スコットランド独立問題の再燃も噂されている。
経済的な問題だけでなく、EU離脱後の英国の国家としての根本的な問題も燻っている。
元々値動きの激しいポンドだが、英国の動向が世界を大きく動かしかねない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)