「思い出せないこと」と「忘れること」の違いを遺伝子レベルで解明 九大

2022年9月29日 16:39

 九州大学は28日、線虫を使った実験によって、記憶自体はあるが思い出せないことと、記憶自体が消去され忘れることの違いを遺伝子レベルで解明したと発表した。今回の研究成果は、認知症やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などのより深い理解につながる可能性があるという。

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■AWC神経細胞が線虫の記憶消去に関わる

 私達はさまざまな情報を記憶している。しかし、必要がなくなった記憶が溜まると、必要な記憶を思い出しにくくなってしまう。そこで、必要がなくなった記憶を消去し忘れるメカニズムが備わっている。

 研究グループは、これまでに線虫を使った実験により、線虫におけるこのメカニズムについて、AWCと呼ばれる神経細胞が関係していることを突き止めた。AWC神経細胞が分泌するTIR-1と呼ばれるシグナル伝達分子によって、線虫の記憶が消去されるという。

■AWC神経細胞が記憶を思い出させることにも関与

 研究グループは、さらに線虫を使った実験を進め、AWC神経細胞が、線虫が記憶を思い出すことにも関わっていることを突き止めた。

 線虫のAWC神経細胞で働いているdgk-1と呼ばれる遺伝子を働かなくすると、線虫は、記憶は残っているものの、その記憶に基づいて行動することができなくなった。研究グループによれば、記憶自体は残っているものの、思い出すことができなくなった結果、記憶に基づいた行動が取れなくなったと考えられるという。

 なお、線虫の記憶自体が残っているかどうかは、AWAと呼ばれる神経細胞の活動を測定することで確認することができる。

 研究グループは、dgk-1がつくるジアシルグリセロールと呼ばれるシグナル伝達分子が、線虫に記憶を思い出させることも突き止めた。AWC神経細胞は、線虫の記憶の消去だけではなく、記憶の想起にも関係していたというわけだ。

 研究グループでは、今回の研究成果は、認知症やPTSDなどの記憶に異常が現れる病気の、より深い理解と治療につながる可能性があるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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