トヨタ、ロシアの自動車事業から完全撤退 メンテ・サービスは継続

2022年9月27日 11:52

 トヨタが、遂にロシア事業から撤退する。9月23日、公式に発表した。ロシアのウクライナ侵攻を受け3月4日からロシアトヨタのサンクトペテルブルク(TMR-SP)工場の稼働を停止していた。トヨタとトヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)は、ロシアの生産拠点であるTMR-SPでの生産事業を終了することを決定。今後は新車販売も行わない。日本の自動車メーカーがロシア撤退方針を明らかにするのは初めて。ウクライナ侵攻の長期化リスクの高まりを受けた結果と云えそうだ。

 以下、トヨタの公式コメント。

『ロシアにおける生産事業を終了する決断は、私たちにとって決して軽々しくできることではなく、どのような道が最善なのか、トヨタとして検討を重ねてきました。TMR-SPは3月4日、部品調達ができなくなり、操業を停止しました。その後も、稼働再開に向けて生産ラインの保全を日々実施するなど準備を継続してきました。トヨタは、世界中のステークホルダーの皆様に支えられながら、自動車事業を展開しています。「トヨタ」のブランドは創業以来、80年以上にわたって築き上げてきたものです。トヨタの価値観、トヨタの名を冠した製品は私たちが守り、次世代に継承し続けなくてはなりません。トヨタの価値観と製品は、われわれそのものであると考えています。

 しかし、半年が経過しても生産再開の可能性は見い出せず、このままではトヨタが目指す製品づくりができないこと、また、現在の状況が続けば共に良いクルマづくりを目指してきたロシアの従業員に対して十分な支援ができなくなることから、ロシアでの生産活動を終了すること以外に選択肢がないと判断しました。

 TMR-SPは、生産終了に向けた手続きを開始します。従業員に対しては、最大限の支援を提供する計画です。モスクワの拠点は規模を縮小したうえで再編成し、ロシアにおいてトヨタ、レクサスにお乗りいただいているお客様に対し、安全と安心を確保するための体制を維持します』

 トヨタは3月の工場停止以降も、約2000人の従業員は設備の保守などに取り組み、給料を支払ってきた。が、従業員への退職金の積み増しや、再雇用の支援などに十分な資金を確保できるよう、早期に撤退を判断したという。

 トヨタロシアは、2007年からサンクトペテルブルクで現地生産を始め、2021年はSUVの「RAV4」などを生産していた。

 トヨタ以外の国産大手では、日産がロシア工場の稼働休止を12月末まで延長することを決定。アライアンスを組む三菱自も同様に生産を止めている。が、撤退の判断には至っていない。日産、三菱自と連合を組む仏車大手ルノーは5月、保有するロシア最大手アフトワズの株式約68%を同国政府系機関に売却。ロシア事業から撤退した。6年間の買い戻しオプションが付いているものの、売却額はわずか1ルーブルだった。

 ロシア政府は撤退した外資系企業の資産を国営銀行などが接収できるようにする法案の成立を目指しており、撤退したくても合弁を組む現地企業などとの売却交渉が難航するケースが後を絶たない。(編集担当:吉田恒)

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