【どう見るこの相場】『北半球の暖房需要期入り』もオンして原油関連株に早めボトムアウトを期待

2022年9月21日 16:18

 台風縦断なのに、妙に秋風が気に掛かる3連休明けである。きょう20日と21日にFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)が開催され、一部ダブって21日、22日には日本銀行の金融政策決定会合が開かれる。秋風は、どうもそこら吹いてくるらしい。両会合の結果発表次第ですでに調整していた日米株価が、さらにリスクオフとなるか織り込み済みとしてボトムアウトするか、サイコロの目の出たとこ勝負になり首筋とフトコロ具合が急に冷え込む場合もあるからで、秋相場から年末相場への方向性を決定付けることになる。

 なかでも重要ポイントは、FOMCでの金利引き上げ幅である。0.75%か1%か、さらに金融正常化策が年内にも打ち止めになるのか、それともさらに長期化するのかなど、米国景気のソフトランディング(景気減速)かハードランディング(景気悪化)かを左右する。季節の諺の「暑さ寒さも彼岸まで」の通りに秋分の日を挟んでせめて波乱相場が安定化してくれることが望ましいが、スンナリとは行ってくれない難しさと背中合わせである。

 調整していたのは株価ばかりではない。国債(長期金利)も為替も商品価格も総崩れである。米10年債国債利回りは、今年6月に消費者物価指数(CPI)が急上昇しインフレ加速を裏付けた「CPIショック」で急上昇(価格は下落)し、その後、ピークアウト(価格は上昇)したとして株価反騰をサポートした。しかし、東京市場の休場中の前日19日の朝方には、一時この10年債国債利回りが、3.51%と6月高値3.49%を上回っており、ピークアウトかボトムダウンかの重要分岐点に差し掛かっている。

 今週の当特集が注目する原油価格も、目下、同じ分岐点に差し掛かっているようである。原油先物(WTI)価格は、今年3月に1バーレル=130ドル台にタッチしたあと、足元では85ドル台と3割強も下げ、前日19日には一時82ドル台まで売られて持ち直したと伝えられている。ウクライナへ軍事侵攻したロシアが、EU(欧州連合)向けに天然ガスの供給を制限し、エネルギー需給がひっ迫したままの状況にもかかわらずである。インフレ抑制に向けた相次ぐ各国の金融引き締め策による景気後退やロックダウン(都市封鎖)頻発による中国景気不調で需給悪化懸念が強まったための値崩れで、OPEC(石油輸出国機構)の減産決定も効いていない。

 しかし、この85ドル台まで下げた前週央に一部通信社が、米政府の戦略石油備蓄の積み増しを報道したことを受けて下げ渋りの動きも示した。また、原油需要が季節的に増加するキャッチコピーには、夏場の『ドライビング・シーズン入り』と冬場の『北半球の暖房需要期入り』がある。今夏の『ドライビング・シーズン入り』は、不完全燃焼気味だったが、この彼岸過ぎからは『北半球が暖房需要期入り』を前に需給好転を試す展開も想定させる。EU各国も、供給不安の強いロシア産の天然ガスの代替エネルギーとして原油輸入に急ぐとの観測もある。仮に年末年始に寒波が到来するようなら追加輸入が忙しくなる可能性も否定できない。そんなこんなで原油関連株は、FOMC後にWTI価格がどう動くか見極めつつ、ボトムアウトを先取りし早手回しの対処も一考余地が出てくるとするのが、当特集の問題提起である。

 個々の銘柄でみても、こうしたステージ転換を裏付ける材料がある。代表は、鉱業株のINPEX<1605>(東証プライム)である。同社株は、今2022年12月期業績をすでに3回も上方修正しており、3回の業績上方修正は、原油先物価格の北海ブレント価格が、期初予想の1バーレル=53ドルが95ドル、為替レートが、同じく1ドル=103円から125円と見直したことによるものである。

 ところが相次ぐ上方修正にもかかわらず株価は、WTI価格の下落とともに今年6月につけた年初来高値1831円から1293円まで急落し、前週末は1508円と調整ステージにある。前日19日の北海ブレント価格は、91.76ドル、為替レートは143円台で、北海ブレント価格が1ドル変動すると純利益が60億円、為替が1円変動すると28億円変動する各感応度からみても下げ過ぎを示唆しているといっていい。実際に同社のPERは5.9倍、PBRは0.6倍、年間60円に増配した配当利回りは3.9%と市場平均より割安である。

 このほかもう少しロングスパンに視野を広げると、注目材料となるのが、石油・天然ガスの開発権益の相次ぐ取得である。仮に今後、軍事情勢の変化からウクライナとロシアが停戦することにでもなれば、エネルギー安全保障関連の石油・天然ガス開発株として「停戦の配当」期待の買い物が入る可能性があるからで、ウクライナ・ロシアの軍事優劣をウオッチしつつ関連のエネルギー開発関連株までマークする余地が出てきそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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