防衛運転 その1

2022年9月19日 07:31

 一般に、交通ルールを守って、安全に気を配りながら運転することを「安全運転」という。しかし、昨今のドライバーは、従来のドライバーとは次元が異なって来た様に思う。こんな状況下、自身を守る「防衛運転」について考えて見たい。

【こちらも】現代の車はフェイルセーフだ

 「防衛運転」とは、安全運転は勿論、他車や歩行者の異常な行動や、周囲の環境や状況に即座に対応出来る運転の呼称である。

●先ず安全に停車出来ること

 「現代の車はフェイルセーフだ」(2020年12月20日付)で、2019年の東池袋暴走事故で母と子を「殺し」、多数に怪我を負わせた旧通商産業省工業技術院の元院長が、「車が暴走した」と主張した際にも解説したのは、車の構造原理と車の止め方だ。

 元院長が主張した『エンジンが暴走してフルスロットルの状態になり、キーをOFFにしても停止しない。ブレーキを踏んでも全く作動せず、ミッションがDレンジからNレンジに全く動こうとしない』という状況が揃って起こり得る確率なんぞは何億、何兆分の1も起こる筈が無い。

●車は動力が車輪に伝わって走る

 画像(写真1参照。直4 2.8L 1GD-FTV(ディーゼルエンジン)&シャシー、画像提供トヨタ自動車)で説明すれば、車は原動機(赤色)の力を駆動輪(緑色)に加えなければ、たとえエンジンが最大出力の状況で回っていようが走らない。

 走っている途中で「エンジンが暴走」したら、「エンジンを止める」か、ミッション車なら「クラッチを切る」、オートマチック車なら「ニュートラルにする」と、駆動力(黄色)が駆動輪(緑色)に伝わらない。後はブレーキで停車させれば良いだけだ。

●車の止め方

 車は駆動源のエンジンと、駆動輪との間を切断すれば、動力が車輪に加わらないから、後は惰性だけで転がる。そのままにしておけば、機械抵抗、路面抵抗、空気抵抗等で次第に慣性が減少して、最後には停止する。

 また、当然ブレーキを使用するから、駆動力を失った車は、ブレーキの摩擦抵抗によって減速され、ブレーキを使用しない場合とは格段に短い距離で停止する。

 逆に、フートブレーキ(足踏み式のブレーキペダル)が作動しない場合には、ニュートラルにしてパーキングブレーキ(サイドブレーキやハンドブレーキ)で減速を試みる。

 そして、ミッション車ならシフトダウンで減速する。オートマチック車でも機構によって差異はあるが、シフトゲートにマニュアルのゲートがある車なら、こちらでシフトダウンすれば良い。

 最悪のケースではミッションを壊す覚悟でPレンジにシフトする。残念ながら、筆者はこの方法を実験でも経験したことが無いので、車の挙動がどうなるかが不明である。

●車は墜落しない

 免許取得直後に、父親から何度も教えられたのは「ハンドルで逃げるな」だった。何かあったら、「先ず車を止めろ」。

 その際にエンジンが止まろうが、路上にいるのだから、飛行機の様に墜落する危険性はゼロだと。ハンドルで逃げるから、歩道に突っ込んだり、対向車線に飛び出したりする。

 「カウンターステアで躱す(かわす=身を翻して避ける)」なんて高等技能は、一流のプロレーシングドライバー以外には不可能だと認識しておくべきである。

 「車の向きを極力変えずに、真っすぐに道路から逸脱せずに止める」これが第1歩だと考えて欲しい。

 次回以降、いろいろな「防衛運転」のヒントを述べて行きたい。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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