東北大、超音波による早期アルツハイマー治療技術開発 厚労省の先駆的医療機器に
2022年9月18日 08:14
東北大学は16日、低出力パルス超音波(LIPUS)による治療が、早期アルツハイマー病に安全かつ有効であることを確認し、早期アルツハイマー病に対するLIPUS治療機器が、厚生労働省の先駆的医療機器制度の対象品目に指定されたと発表した。
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厚労省の薬事・食品衛生審議会は9月5日付けで、「先駆的医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品指定制度」の対象品目に指定。LIPUS治療技術の社会実装を目指して、東北大学はスタートアップ企業サウンドウェーブイノベーションを設立した。
治療では、ヘッドギア型のプローブを患者の両側のこめかみに装着。特殊なパルス波超音波を全脳に照射する。1回の治療時間は1時間で週に3回の治療を3カ月ごとに行う。低出力衝撃波が血管新生作用をもたらし、患者の自己治癒能力を活性化すると言う。
脳内の一酸化窒素量が低下すると認知機能も低下することが、動物実験で示唆されている。低出力パルス超音波は、脳内の一酸化窒素量を増やし、血管を拡張。微小循環障害を改善させると見ている。
実験では治療回数が増えると有効性が増加すると確認できた。治療効果が蓄積し、認知機能の悪化を食い止めるだけでなく、改善させる可能性があると言う。今後、対象患者数を大幅に増やして治験を行い再確認していく方針だ。
東北大学大学院の下川宏明客員教授らの研究グループが、マウス実験において低出力パルス波超音波がアルツハイマー病の治療に効果があると明らかにした。
それを受けて、2018年~2021年にかけて早期アルツハイマー病の患者を対象に臨床試験を実施。同意を得た少数の患者に同治療機器を用いたところ、効果があることが強く示唆された。安全性についても確認できた。
下川客員教授は兼ねてから、音波による自然治癒力の活性化に着目。低出力衝撃によって重症狭心症を治療する手法を開発している。既に世界25カ国で1万人以上の治療に用いられ、安全性と有効性が確認されている。
世界的に超高齢化が進み、アルツハイマー病の患者も急増している。これまで有効な治療がなく、新たな治療法の開発が待たれている状態だ。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る)