相場展望9月15日 米国株: FRBの力強い金融引締め政策は変わらず 日米とも株価は9~10月乱調を予想
2022年9月15日 11:00
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)9/12、NYダウ+229ドル高、32,381ドル(日経新聞より抜粋)
・ドル高の一服で外需企業の収益悪化懸念が薄れたほか、9/13発表の8月米消費者物価指数(CPI)がインフレピークアウトを示すとの期待とアップルの+4%高が買いを支え、4日続伸で+1,236ドル上昇し、8月中旬の高値からの下落幅の4割強取り戻した。
・8月CPIの予想は、+8%上昇と、7月+8.5%上昇から伸びが鈍る見込み。だが、エネルギーと食品を除くコアCPIは高止まりを示す可能性がある。CPI発表後の株式市場の反応が読みにくい面もあり、NYダウは伸び悩む場面もあった。
・ドルの下落で、市場では「ハイテクなど海外事業の比率の高い企業の収益圧迫懸念が後退し、買い安心感が出た」との指摘があった。
・原油高でシェブロン・キャタピラーが上げ、アメックスなど消費関連が買われた。
【前回は】相場展望9月12日 米国株: リスクの過小評価、楽観が継続 日本株: 欧米株に対して底堅い動き
2)9/13、NYダウ▲1,276ドル安、31,104ドル(日経新聞より抜粋)
・8月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る上昇率となり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速を警戒した売りが強まり、5営業日ぶり今年最大の急落。急激な利上げが米景気悪化につながるとの見方から、幅広い銘柄が売られた。
・CPIは前年同月比+8.3%上昇と、上昇率は7月+8.5%から減速したが、市場予想+8.0%を上回った。エネルギーと食品を除くコアCPIの上昇率は+6.3%と、7月+5.9%から加速し、市場予想+6.0%も上回った。家賃や医療サービスなど幅広い項目で上昇が見られ、「高物価が米経済に定着しつつあることを浮き彫りにした」との指摘があった。
・インフレ抑制に向け、FRBが9/20~21開催のFOMCで通常の4倍に当たる+1.00%の利上げを決めるとの観測が急浮上した。
・米債券市場では金融政策の影響を受けやすい2年物国債利回りが一時、前日比0.22%高い(債券価格は安い)3.79%と15年ぶりの水順に上昇。長期金利の指標となる10年物国債利回りも上昇し、株売りを促した。
・短期投資家の投げ売りが加速したとの見方と、米国による中国の台湾侵攻阻止検討との地政学リスクが高まるとの懸念も、投資家心理の悪化につながった。
3)9/14、NYダウ+30ドル高、31,135ドル(日経新聞より抜粋)
・前日に▲1,276ドル安と今年最大の下げを記録した反動で、短期的な戻りを見込んだ買いが入り午前中に+171ドル高とこの日の高値に上昇した。
・ただ、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速への警戒感は強く、相場は一時▲219ドルまで下げる場面もあり方向感が乏しかった。
・8月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇し、FRBが大幅な利上げに動くと警戒された。
・9/14発表の8月米卸売物価指数(PPI)は前月比▲0.1%下落と2カ月連続で下げたが市場予想並となって利上げ加速観測に変化はなかった。
・ただ、米長期金利は朝方に一時3.47%と3カ月ぶりの高水準を付けた後は伸び悩み、前日終値近辺で推移した。長期金利の上昇が一服したのは投資家心理の支えとなった。
・医薬・日用品のジョンソン&ジョンソン、製薬のメルクなどディフェンシブ銘柄が買われ相場を支えた。原油高でシェブロンが上昇。金融引締めが景気を冷やすとの見方から景気敏感株が売られ、ゴールドマンSなど金融株も下げた。
●2.米国株:FRBの力強い金融引締め政策は変わらず
1)米国株楽観論者の9/14大幅下落に対するコメントは、「利上げ継続で警戒」
・FRBの大幅利上げ警戒(フィスコ)
・FRBの過剰な利上げ警戒(フィスコ)
・米利上げ加速を警戒(日経新聞)
・米国の利上げ加速の見方広がる(朝日新聞)
2)急落の要因は、コアCPIのさらなる上昇を予想させ、ピークアウトが見えないこと
・CPI総合の実績・予想・前月の変動は僅かにもかかわらず株価反応が大きすぎる。8月実績+8.3%、予想+8.1%、7月+8.5%
・コアCPIは、上昇傾向が止まらず、「高インフレ進行」を継続した。8月実績+6.3%、予想+6.0%、7月+5.9%
3)CPI発表前の楽観論で大きく上昇した「反動」で、9/6の元に戻っただけ
・NYダウの推移:9/6安値31,145ドル⇒9/12高値32,381⇒9/14時点31,135
・気懸かりな問題点は、9/6よりも9/14の終値が僅かながら低いこと。9/13の▲1,276ドル急落に対する9/14の反発が+30ドルと弱い。『先行きの下落を示唆』している可能性もあるので注意したい。QT(FRBの資産圧縮)の過小評価で相場に織込まれていないことが懸念。
●3.ノムラ、9月FOMCで1.00%の利上げ予想(9/14)(フィスコ)
●4.8月の米消費者物価指数は+8.3%上昇、市場予想+8.1%を上回る(読売新聞より抜粋)
1)原油価格の下落が続き、ガソリンが7月+44.0%上昇から+25.6%上昇に大きく低下。ただ、食品は+11.4%上昇で、高い伸びが続いている。
2)変動幅が大きいエネルギーと食品を除いた「コアCPI」は+6.3%上昇で、7月+5.9%から加速した。人手不足による賃金の増加や家賃の上昇が、インフレ(物価上昇)圧力となっている。
3)米国のインフレは、コロナ渦からの景気回復で需要が急増した昨年4月以降、加速している。
●5.原油先物は上昇、冬季に向け供給懸念高まる(ロイターより抜粋)
1)原油需要に対する期待は低下しているが、冬季に向けて供給懸念が高まっている。
2)米WTI原油先物は9/12、+0.99ドル高(+1.1%上昇)の87.78ドル。
3)米エネルギー省は9/12、先週時点で緊急原油備蓄在庫が4億3,410万バレルと、1984年10月以来の低水準となった。
●6.米、医薬・健康・農業のバイオ産業を国内回帰、中国依存の低減で大統領令(時事通信)
●7.米CPIは+8%と鈍化の予想も、コアCPI+6.1%で+0.75%の利上げ観測(ブルームバーグ)
●8.ゴールドマンS、数百人規模の人員削減を計画(ブルームバーグ)
●9.サムスンが半導体市場の失速について警鐘を鳴らす(EE Times Japan)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)9/12、祝日「中秋節」の振替休日のため休場
2)9/13、上海総合+1高、3,263(亜州リサーチより抜粋)
・景気テコ入れ策に対する期待感が持続する流れとなった。
・中国の国営メディアは9/12、「消費回復や投資促進に向け、李克強・首相は経済安定化策をさらに導入する方針」などと伝えた。もっとも、上値は重かった。
・中国の行動制限継続が懸念され、指数は一時マイナス圏に沈んだ。
・新型コロナの新規感染者数は国内で減少しつつあるものの、一部地域でロックダウン(都市封鎖)が続いている。市内の複数大学でクラスターが発生した北京市内では、コロナ防疫措置が強化された。
・業種別では、自動車の上げが目立ち、酒造・食品も高い。反面、不動産は冴えない。
3)9/14、上海総合▲26安、3,237(亜州リサーチより抜粋)
・米利上げ加速が懸念される流れとなった。米消費者物価指数(CPI)が予想を上回る上昇率となったことを受け、米金融当局は大幅利上げを継続するとの見方が市場に広がった。利上げ加速が世界景気を冷やすと不安視されている。
・為替で対人民元の米ドル高が進行している点もマイナス。資金流出懸念もくすぶっている。米中関係のさらなる悪化も警戒された。
・米国の大手メディアは、「米政府は中国の台湾侵攻を抑止するため、対中制裁を検討しているもよう」などと報じている。
・業種別では、発電・電力設備の下げが目立ち、医薬品・金融も安い。
●2.中国建機大手・三一重工、景気減速と新型コロナで売上▲4割減・純利益▲7割減(財新より抜粋)
1)1~6月決算で、前年同期比で大幅な減収減益に陥った。
2)中国建機業界の景気サイクルの下方局面、そこに中国経済全体の減速、新型コロナの流行、買換え先送り、工事着工率の低下などが重なり、需要が縮小している。また、建機の稼働時間も顕著に減少した。
●3.中国国有鉄道「国家鉄路」、1~6月赤字▲1兆6,000億円超(東洋経済)
1)ドル箱路線の北京=上海間も赤字。
●4.中国、医療機器も外国製排除、世界市場の分断深まる(日経新聞)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)9/12、日経平均+327円高、28,542円(日経新聞より抜粋)
・前週末の米国株高を受けて、投資家心理が上向き、主力の値嵩株への買いで日経平均は3日続伸し、8/26以来の高値となった。
・新型コロナの水際対策の緩和が意識され、インバウンド(訪日外国人)関連銘柄への買いが目立ち、日経平均は一時+400円に迫る場面があった。
・米国市場では長期金利の上昇一服を受け、ハイテクなどに買いが入り、東京市場でも高PER(株価収益率)のグロース(成長)株を中心に買われた。
・半導体関連銘柄・ソフトバンクG・ファストリ・空運・鉄道・百貨店が上昇した。
2)9/13、日経平均+72円高、28,614円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式相場の上昇を受け、東京市場でも運用リスクを取りやすくなった投資家の買いが先行し、上げ幅は一時+100円を超えた。
・政府の旅行支援策や新型コロナの水際対策の緩和などへの期待から陸運・空運が上昇。
・米8月消費者物価指数(CPI)の発表を控え、様子見ムードが広がり伸び悩んだ。
・日経平均は前日までの3営業日で+1,100円超上昇し、利益確定売りの売りが見られた。
3)9/14、日経平均▲796円安、27,818円(日経新聞より抜粋)
・米国の利上げが加速するとの警戒から、9/13の米国株式相場は今年最大の急落。東京市場でも投資家心理が悪化し、高PERのグロース(成長)株を中心に幅広い銘柄への売りが強まり、下げ幅は6/13以来(▲836円安)の大きさとなった。
・日銀が為替介入に備えると伝わると、株価先物に売りが出た。
・市場では「投資余力のある個人投資家は主力銘柄を中心に積極的に買いを入れていた」との声があった。
・ソフトバンクG・東エレク・ソニー・エムスリーが安く、高島屋・ANAが買われた。
●2.日本株:日経平均は底堅く推移するが、9~10月は株価乱調の季節
1)乱調となる要因
・例年、悪材料に敏感に反応しやすいのが秋相場の特徴。
・米国のインフレ抑制優先により経済を冷やすことでの景気後退。
・米中間選挙の不透明感。
・欧米・中国の経済悪化が顕在化するリスク。
・外国人投資家の先物売り懸念:9/7から買越し転換したが、様子見の薄い買い。
2)やはり日本株は欧米株に比べて底堅い動き
・株価急落時の日米株価下落率比較
・米国9/13:NYダウ▲3.94%、SP500▲4.32%、ナスダック総合▲5.16%
・日本9/14:日経平均▲2.78%、TOPIX▲1.97%
・底堅い要因
・配当権利取りの買い:海運の増配、薬品の好配当など。
・自社株買い:毎週1,000億円規模の買いが継続。
・円安の波及効果:円安効果を享受する企業が、日経平均構成銘柄の多数を占める。
・年初来の新高値銘柄が多数を占める状況が続き、日経平均を支える構図が明確。
・空売りが少なく、売り圧力が小さい。
●3.日銀9/13発表、8月企業物価指数は前年比+9.0%、18カ月連続で前年比増(テレビ朝日)
1)1960年以降最高。
2)2020年を100とした水準比115.1。
3)資源価格の高止まりや、円安による輸入物価の上昇が影響。
●4.アジアの天然ガス価格高騰、ウクライナ危機前の2倍以上に(産経新聞)
1)アジア天然ガス価格:2/28 24.4ドル⇒8/26 70.5ドル
●5.企業動向
1)明治 牛乳など乳製品115品目を11月から2.8~6.3%値上げ(日テレ)
2)スズキ 豪ソフトウェア企業に出資(時事通信)
3)中国電力 2023/3月通期予想、純損益▲1,390億円の赤字、値上げ検討(RCC)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・4666 パーク24 業績回復期待
・6472 NTN 業績回復期待
・9005 東急 業績回復期待
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