ブラジル産牛肉が危機!? 今後の行方は?
2022年9月14日 11:17
●ブラジル産牛肉が危機?
世界的なインフレが大きな問題となっているが、世界一の牛肉輸出量(2022年)を持つ南米の大国ブラジルも例外ではない。
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ロイター通信によると、ブラジル政府の統計では、今年の牛肉消費量が統計開始以来過去最低になる可能性が高いという。
ブラジル国民が牛肉を食べなくなったのは、中国への輸出増加や、コロナ禍による失業者増に加えて、高インフレも理由の1つとなっている。
食文化として牛肉が定着していたが、バーベキュー自粛が呼びかけられるほど牛肉が貴重なものになりつつある。
かつてはBRICsの一角として注目されていたブラジルは輸出大国でもあるが、世界の牛肉価格にも影響を与えるのだろうか?
●ブラジルと牛肉
ブラジルは、日本の約22.5倍の面積を有し、人口は約2倍を有する南米最大の経済大国である。
大豆やとうもろこし、コーヒー豆の産地として知られているが、鶏肉・豚肉・牛肉の世界有数の輸出大国としても知られている。
牛肉は、2020年3月にコロナ禍によるレストランや店舗の営業停止を受けて需要が低下。2021年には非定型BSEが発生し、中国との協定に基づき、同年10月から12月まで中国との取引が停止された。
2022年10月に予定されている大統領選挙では、返り咲きを目指す元大統領のルラ氏が、牛肉の復活を公約に掲げており、牛肉へのアクセスを確保したいと明言している。
●気になる牛肉価格とブラジル経済
ブラジル産牛肉の輸出先は、50%以上が中国・香港向けであり、中国依存度が高くなっている。
中国はゼロコロナ政策により、ロックダウン等でいつ需要が激減し、価格が下落するかわからない。畜産のための森林伐採を批判する声もあり、生産体制を見直さざることになる可能性も否定できない。そうなれば、牛肉価格全体に影響が出ることもあり得る。
ブラジルは米国よりも先に利上げを開始しており、現在の政策金利は10%を超える。
ブラジル株も海外の資金流入が顕著であり、米国株が利上げにより売られる中、割安感も好感され、買われている。
飼料価格の高騰によって、価格が上昇することは今後も考えられるが、ブラジルの情勢不安などにより、世界中の牛肉の価格が左右されるまでの可能性は、現在の所は低いだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)