野菜や果物、死亡リスク下げる 9.5万人を20年間追跡調査 国立がん研究センターら
2022年9月10日 07:52
国立がん研究センター(東京都中央区)と横浜市立大学(神奈川県横浜市)らの研究グループは8日、野菜や果物を摂取すると死亡リスクが低くなるとの研究結果を発表した。20年間、9万5000人の追跡調査を行った結果だ。
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研究開始から5年後に実施した食事調査票に回答した人の内、がんや肝疾患、循環器疾患になっていなかった9万5000人を追跡調査した。
果物の摂取量が多いグループは、そうでないグループに比べて全死亡リスクが8~9%低下。心臓血管関連の死亡リスクも9%低かった。野菜摂取量が多いグループも、そうではないグループより全死亡リスクが7~8%低くなると分かった。
野菜や果物にはビタミンやミネラル、食物繊維の他、ポリフェノールやカロテノイドが豊富に含まれている。欧米人を対象にした調査研究では、野菜や果物の摂取量が多いと、循環器疾患をはじめとした全死因による死亡リスクが下げられると報告されていた。
遺伝的背景や生活習慣、職種間の異なるアジア人を対象とした大規模調査はこれまで行われていなかった。今回の調査によって、アジア人も野菜や果物の摂取が死亡リスク低下につながることが判明。
ただし、野菜や果物の摂取量が多ければ多いほど死亡リスクが下がるという結果ではなかった。
農林水産省などが策定した食事バランスガイドによると、野菜摂取は1日350g以上、果物は1日200g以上の摂取が推奨されている。今回の研究の推計では、野菜は1日300g以上、果物は1日140g以上とることが望ましいと算出した。
欧米の研究では野菜や果物の摂取が、がんや呼吸器疾患の死亡率を下げると報告されている。だが、国内で実施した今回の調査では、その関連性は認められなかった。中国の研究でもがんによる死亡率の低下との関連は認められていない。アジア人のがんの原因は感染症が多いことなどが人種差につながっていると推測している。
この調査は、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、新潟県長岡、長野県佐久、茨城県水戸、東京都葛飾区、高知県中央東、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部、沖縄県宮古(呼称は1999年当時)の合計11保健所の管轄に住む40~69歳を対象として行った。(記事:土佐洋甘・記事一覧を見る)