鉄道駅と道の駅が異業種コラボ 地域の魅力再発見する旅 和歌山県すさみ町

2022年8月22日 08:19

 和歌山県すさみ町で、珍しい「駅のコラボ」が実現する。

 駅といっても、一方はJRきのくに線の周参見駅で、もう一方は道の駅すさみ。つまり、駅は駅でも「鉄道の駅」と「道の駅」の異業種コラボなのだ。

 昨今の地方創生ブームの中、地域に密着し、地元の食や観光情報を発信する「道の駅」は、多くの旅行者から人気を集めている。その数も年々増加の一途をたどっており、令和4年8月5日の時点ではなんと、全国に1198駅もの「道の駅」が登録されている。車での旅行やサイクリングの際などに、誰しも一度は立ち寄ったことがあるのではないだろうか。昨今では「道の駅」目当ての旅をする、道の駅マニアの旅行者も増えているという。それほどまでに人気を集める「道の駅」の魅力とは何なのだろう。

 

 多くの人の「道の駅」のイメージはおそらく、旅の休憩場所ではないだろうか。トイレ休憩に立ち寄ったり、地域のお土産を求めたり、他には道路情報や観光情報、緊急医療情報などを提供してくれる場所というのが、一般的な「道の駅」のイメージだろう。でも「道の駅」にはもう一つ、大切な役割がある。それは、地域と交流を図ることのできる貴重な地域連携、地方創生の場でもあるということだ。中には、文化教養施設や観光レクリエーション施設などと併設されていたり、最近では、住宅メーカー大手の積水ハウスと世界最大のホテルチェーン・マリオットインターナショナルが共に推進して、道の駅に近接するホテルを展開する「Trip Base 道の駅プロジェクト」なども話題になっている。同プロジェクトは単なるホテルのチェーン展開ではなく、自治体や地元の企業などとも密に連携することで その地を訪れた旅行者たちが地域をより深く知り、隠された魅力を発見するための最前線基地の役割を果たしている。「道の駅」は今や、通りすがりに立ち寄るだけのただのパーキングエリアではないのだ。

 本件の「駅のコラボ」も、実はそんな「Trip Base 道の駅プロジェクト」の取り組みの一つでもある。

 JR西日本が運行する特別急行列車「WEST EXPRESS 銀河」紀南コースの停車駅「周参見」駅で、今年10月3日から来年3月8日までの約5ヶ月間にわたって「道の駅すさみ」のオリジナル商品であるレタスの美味たれや、名物のイノブタジャーキーなどの地域の人気産品の出張販売を行う。「WEST EXPRESS 銀河」では、停車駅でその地域ならではの魅力を感じられるおもてなしが充実しているが、すさみ町でも観光促進、地域経済の活性化を目指して、和歌山県すさみ町と積水ハウス、「道の駅すさみ」を運営する株式会社信濃路、モバイルオーダーシステム「売り子―ル」を展開する株式会社ウフル、そしてJR西日本の5者が連携する。また、これらの商品は「WEST EXPRESS 銀河」の乗車1週間前から、乗車日の新宮駅出発1時間後まで「売り子ール」を介してスマホから商品の購入予約をすることもできる。予約さえしておけば、お目当ての商品が現地に行ったら売り切れていたなんて悲劇も防げるし、安心だ。周参見駅での受け渡しもスムーズに行える。

 さらに今回は新たな取り組みとして、きのくに線の普通列車(御坊?新宮間)で導入されている 自転車をそのまま車内に持ち込めるサービス「きのくに線サイクルトレイン」の利用者に、道の駅すさみのすぐ隣、フェアフィールド・バイ・マリオット・和歌山すさみに併設されている「望海(のぞみ)のゆ」の割引券が配布される。サイクリングを楽しんだあとは、すさみ八景のひとつである須崎江の絶景を眺めながらの入浴。きっと贅沢でゆたかな時間が過ごせることだろう。

 「道の駅」同様、地域のまちも、通りすがるだけではもったいない。日本にはまだまだ、未だ発見されていない魅力がたくさん溢れている。官民が手を取り合って地域の魅力を発信し、滞在時間を伸ばすことで、観光促進と認知拡大に繋げていく。すさみ町でのこの取り組みは、すさみ町はもちろん、全国の地域経済活性化のモデルケースにもなりえるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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