拡大するパワー半導体市場、世界市場は2030年には5兆円超へ

2022年8月22日 08:17

 電気自動車市場の拡大や再生可能エネルギーの普及、5G関連などの情報通信機器分野の発展などを背景に、パワー半導体市場の需要が拡大している。

 富士経済が5月に発表した、パワー半導体の世界市場を調査結果によると、パワー半導体市場は2022年見込みの2兆3386億円に対し、2030年には5兆3587億円規模に拡大すると予測している。

 とくに大きな伸びが期待されるのが、電気自動車や充電インフラ、 サーバー電源や太陽光発電装置などの用途で需要の拡大が見込まれているSiC製パワー半導体だ。富士経済のレポートでも、2022年見込み1206億円に対し2030年には9694億円規模に市場が膨らむと予測。2021年6月の同調査レポートでは2020年493億円、2030年1859億円予想とされていたことからも市場の急成長ぶりが分かる。背景としては、欧州をはじめとした各国で脱内燃車に向けた動きが活発になっていることが挙げられている。量産効果による低価格化で既存のSiパワー半導体からの置き換えがさらに進展し、高級車だけでなく幅広い車種でも採用されると予測しているのだ。

 

 そんな市場の動きを受けて成長している企業に、ドイツのニュルンベルグに本社を置くセミクロンがある。セミクロンは、主に中出力範囲(約2kW~10MW)におけるパワーモジュールおよびシステムの世界主要メーカーの一つだ。同社の製品は、最新の汎用インバータや産業用オートメーションシステムに広く活用されているが、近年は、 風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー分野、電気自動車分野にもシェアを広げている。

 こうなると、また日本メーカーが遅れをとってしまったと思われるかもしれないが、実はそうではない。このセミクロンと10年以上にわたって、SiCパワーモジュールの開発分野で協力関係を築いているのが、京都市に本社を置く、ローム株式会社だ。ロームは、世界で初めてSiC MOSFETの量産を開始した企業だ。以来、チップからパッケージまで、幅広いSiC製品ラインアップを提供しており、SiC製品の技術開発で業界をリードしてきた存在でもある。

 そんな両社は7月15日、セミクロンの車載用パワーモジュール「eMPackR」 にロームの第4世代SiC MOSFETを採用することを正式に発表し、新たな協業をスタートさせた。

 今回採用されたロームの最新第4世代SiC MOSFETは、短絡耐量時間を改善し、業界トップクラスの低オン抵抗を実現したデバイスだ。車載主機インバータへ搭載することで、電気自動車の航続距離延伸やバッテリーの小型化に大きく貢献することができるという。セミクロンは、SiC MOSFETの特性を十分に引き出すため中・高出力SiCコンバータ向けに特別に設計した「eMPackR」を革新的なパワーモジュールと評しており、すでにドイツの大手自動車メーカーと 10億ユーロ の供給契約を結んだことも発表している。

 パワー半導体市場では、中国系パワー半導体メーカーの台頭なども注目されているが、今回の新たな協業によって、車載用SiCパワーモジュールでセミクロンとロームが強力な存在感を示すことになるのは間違いないだろう。(編集担当:今井慎太郎)

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