光合成に匹敵するエネルギー変換効率で水を分解する光触媒開発 東工大
2022年8月22日 17:04
東京工業大学は18日、緑色植物の光合成に匹敵するエネルギー変換効率で、太陽光によって水を分解し、水素を生成する光触媒の開発に成功したと発表した。同様の光触媒反応の効率としては、従来の約100倍に該当する。研究グループによれば、この触媒の開発の成功は人工光合成の実現に向けたブレイクスルーになる可能性があるという。
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■色素増感型光触媒とは?
太陽光の約半分は可視光線だ。この可視光線を有効活用できれば、光触媒における太陽光のエネルギー変換効率を大幅に高めるられる。
だがこれまで水分解の光触媒として広く研究されてきた酸化チタンなどの金属酸化物は、そのほとんどが紫外線しか吸収できなかった。そこで研究グループは、酸化物ナノシート(HCa2Nb3O10)と、可視光線を吸収する色素分子(ルテニウム錯体)を組み合わせた光触媒を開発した。
このように紫外線を吸収する金属酸化物と、可視光線を吸収する色素分子を組み合わせた光触媒を、色素増感型光触媒という。
一方で研究グループが開発した色素増感型光触媒にも、問題があった。この色素増感型光触媒では、色素分子や電子伝達剤(I3-/I-)などと電子(e-)との間に逆反応と呼ばれる特殊な反応が起こり、電子(e-)が水素の生成に使われる前に減少してしまうのだ。そのためエネルギーの変換効率が低下してしまう。
■酸化アルミニウム(Al2O3)とポリマーでコーテイング
そこで研究グループは、独自に開発した色素増感型光触媒を、酸化アルミニウム(Al2O3)とポリマーでコーテイングすることで、この逆反応の抑制に成功した。
これにより、太陽光のエネルギー変換効率は、酸化アルミニウムとポリマーでコーテイングしない場合の約100倍に到達。太陽エネルギーの水素への変換効率は0.12%に達した。これは、緑色植物における太陽光のエネルギー変換効率に匹敵するという。
研究グループでは今後、色素分子の分子設計やコーテイングするポリマーについてさらに検討を重ね、本触媒の性能の向上を図っていきたいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)