評価基準・環境で変わる「欲しい車」
2022年8月15日 08:00
●昔やった「自動車評価」論議
昔、1970年代半ばだったと思うが、「車両本体の取得費用」も、「維持費」も考慮せず、好きな欲しい車を3台選ぶと何になるかと、自動車メーカーの技術部門や、評論家、ジャーナリスト等の集まる席上で話しが盛り上がったことがある。
【こちらも】過疎地のPHV車活用
常識的な「車の完成度」とか「メーカーに対する信頼・評価」から、総合的な「自動車としての評価」と、選定者の趣味性~等々から、突拍子も無い車が挙げられるかと思っていたが、意外とまともな選択だった。
当時の評論家やジャーナリストの選択する3台の中には、殆どの場合ベンツが加わっていた。
「ヨーロッパへ旅行に行ったら、ベンツはただのタクシー車だったよ」と、合いの手が入っていたが、当時の国産車のレベルと比較すれば、やはりベンツの技術レベルには一目置かれている様だった。
●評価者の嗜好
例えば「レーサー」と「ラリスト」では競技にあたってのドライブに対する取り組み方が違う。
極端な表現をすれば、「レーサー」は如何に車に「ダメージを与えない」様な運転をするかだし、「ラリスト」は如何に車に与える「ダメージを少なく」して運転するかの違いである。レーサーは、車をジャンプさせるなんて、正気の沙汰とは考えない。
低重心で、路面への喰いつきや、回頭性、カーブの安定性に拘りがあるレース嗜好の評価者は、SUVの類にはあまり興味を示さない筈だ。
そしてラリー嗜好の評価者は、スポーツカーは路面舗装の整った道路を単に走るだけだといって、主に悪路走破性等に興味を示した。
●車の評価は「使用環境」によって変わる。
例えば、ソ連時代の「ジル」という車は、純粋に「自動車」として評価すれば、まともな評価は得られない代物だ。
しかし、この車は「党幹部専用」とされた車で、きちんと交通信号を守って走行していた「一般市民」の車と事故を起こした場合、たとえ「ジル」の方が赤信号を無視していても、「お咎め無し」で、青信号で安全運転していた一般市民が罰せられる。
勿論、駐車禁止も関係無しだ。
だから、当時のソ連で生活していたら、「ジル」が一番欲しい車となる。
●ロシアの自動車技術レベル
余談ながら、2022年5月、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ルノーがロシア連邦最大の自動車メーカーであるアフトヴァース(英語: AvtoVAZ)の株式約68%を、ロシアの国営企業である中央自動車エンジン科学研究所に売却し、ロシアから撤退した。
その結果、世界的な制裁で部品調達もままならないので、ロシアは5月には「新車認可の安全基準」を引き下げた。アフトヴァースの6月からの新車には、「ABS」も「エアバッグ」も省いた車を供給している。
こんな基礎的な部品でさえも、レベルが低いロシアの自前技術では、調達不能だからだ。
●過疎地に住んでいるなら
ガソリンスタンドの廃業で、近隣にガソリンスタンドが無くなってしまった過疎地域に在住の場合なら、『過疎地のPHV車活用』(2022年2月18日付)で述べた様に、PHV車(プラグインハイブリッド)を積極的に検討することが有効だと考えている。
電気だけは日本全国津々浦々、限界集落まででも給電されていて、EV車の充電が可能だということだ。そして万一、電力会社からの受電が不能でも、ソーラーパネルを設置することで、或る程度はカバー可能だ。
PHVを選択するのは、普段近隣を走行する場合はモータ走行して、戻ったら自宅で充電すれば良い。しかし車載電池の守備範囲を超えた距離だった結果「電欠」した場合は、エンジンで、たとえ遠方であろうがガソリンスタンドまで給油に行けば良いからだ。
勿論ガソリンなら、消防法適合の携行缶で、自宅にストックすることも可能だ。純粋なバッテリーだけのBEVは、過疎地であっても主役にはなり得ない。
●猛暑の昨今
炎天下、どうしても車で出掛けなければならない場合、車庫には「エアコンが不調の最新型ベンツ」と、10年程使いこんだ「エアコンは絶好調のフイット」の2台しか残っていない場合、どちらを選ぶだろうか?
「割り切ってハイヤーを使う」とかは無しとすると、殆どの人はエアコンが快適な古いフイットを選ぶだろう。
こんな猛暑の中、「車種のステータス」だけで、サウナの様な車室内の温度を我慢してベンツで出掛けるなんて、考えられない。
評価基準や環境で「選ぶ車」、「欲しい車」は変わって来るものだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)