相場展望8月8日 米7月雇用の好調で、FRBは9月大幅金利引上げ? 最近の日経平均は、28000円台から反落する傾向

2022年8月8日 08:49

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/4、NYダウ▲85ドル安、32,726ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)の9月以降の利上げペースを探るうえで、8/5発表の米7月雇用統計に注目が高まっている。発表を前に投資家の様子見ムードは強く、方向感に欠ける相場展開だった。
  ・雇用統計では景気動向を映す非農業部門雇用者数の伸びが、6月から減速し、平均時給の上昇率は前年同月比で和らぐと見られている。
  ・FRBが7月に続き、9月も通常の3倍の+0.75%の利上げを実施するかを占ううえで、雇用環境を見極めたい市場参加者が多い。
  ・7月の大幅な相場上昇の後で、「重要指標の発表を前に買いを手控える投資家も多かった」との声が聞かれた。
  ・米原油先物相場が続落し、半年ぶりの安値を付け、シェブロンが▲3%安となった。管理部門の人員削減が報じられたウォルマートは▲4%安、ディフェンシブのJ&Jやベライゾンが安い。半面、原油安はインフレ鈍化につながるとの見方で消費関連のビザなどが高い。

【前回は】相場展望8月4日 米株式相場は再び金利上昇で、景気後退と企業業績悪化を織込む展開を想定 日本株は夏枯れ相場へ

 2)8/5、NYダウ+76ドル高、32,803ドル(日経新聞より抜粋
  ・米7月雇用統計は労働市場の改善を示す内容だった。
  ・足元で強まっていた景気後退懸念がやや和らぎ、金融や景気敏感銘柄に買いが入った。
  ・ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な金融引締めが続くとの見方から米長期金利は上昇し、金利上昇で割高感が意識されやすいハイテクは売られ一時▲237ドル安の場面があり、テスラ▲7%安・メタも安い。
  ・景気動向を映す非農業部門の雇用者数は前月比+52.8万人増と、増加幅は6月の39.8万人から拡大し、市場予想の25.8万人も大きく上回った。平均時給の伸び率は前月比、前年同月比ともに市場予想以上だった。JPモルガンは「雇用統計はFRBがインフレ抑制のためにすべき仕事が多いことを示した」と指摘。次の会合でも通常の3倍となる+0.75%の利上げを続けると予想した。
  ・売り一巡後は景気後退に陥る可能性は低いとの見方が次第に広がり、景気敏感株が買い直され、ダウやキャタピラーが上昇した。長期金利の上昇を受け、利ざや拡大の見方から銀行も上げた。
     

●2.米国株:米7月雇用統計の好調で、FRBは9月大幅金利引上げの確立高まる

 1)米7月雇用統計と求人数は米経済の好調を映す ⇒ FRBは大幅金利引上げ余地生ずる
  ・非農業部門雇用者数は前月比+52.8万人増
  ・失業率は3.5%
  ・平均時給は前年比+5.2%増
  ・6月末の求人数は1,070万人、求人倍率は1.8倍

 2)米金利は再び上昇に転じた 
  ・米債券市場で長期金利が8/1の2.573%⇒8/5の2.827%と大きく上昇。(債券価格は下落)特に、8/5の長期金利上昇幅は+0.129%と高かった。
  ・8/5は相対的に割高感が意識されるハイテク銘柄を中心に売りが先行、ナスダック総合は下落。金利の利ざや拡大期待で、銀行株は上昇。

 3)米株式相場は、長期金利の低下で株価上昇していたが、金利再上昇に留意したい
  ・8/5米株式市場は、NYダウこそ上昇したものの、SP500とナスダックは下落。
    NYダウ    +76ドル高 (+0.23%高)
    ナスダック総合 ▲63安   (▲0.50%安)
    SP500     ▲4,145安  (▲0.16%安)
  ・長期金利の上昇で、米国株は上昇⇒横ばいに転じた
    NYダウ 8/1 32,798ドル ⇒ 8/5 32,803

 4)米株式相場の上昇は「限界に達したか?」
  ・長期金利の低下とFRB金融緩和期待で、米国株式市場は反騰した。だが、長期金利低下による恩恵は限界に達しつつあると思われる。
  ・長期金利の水準と株価の相関を見ても、上昇余地は少なくなったようである。
  ・債券市場から見ると、長短金利差の『逆イールド』は8/5で▲0.403%に拡大した。
    10年債    2.827%
    2年債     3.230%
    逆イールド ▲0.403%
   株式市場は短期的思惑で動くが、債券市場は長期的視野で動く習性がある。この観点から見て、株式相場は債券市場の視点に引き寄せられていく可能性があり、今後の展開に注目したい。

 5)金利上昇緩和を見込んで株買いに「飛び乗った」投資家は、雇用統計の好調さで9月+0.75%と通常の3倍利上げ予想で『飛び降りる』可能性が高くなった
  ・FRB高官は、物価高抑制のため引続き「金利引上げ」で一致団結している。
  ・8/10発表の米消費者物価指数(CPI)に目が離せない状況となった。
  ・次回、米金融政策決定会合のFOMCは9/20~21の予定。

●3.米7月雇用者数は予想上回る伸び、景気後退懸念和らぎ、積極的な利上げ継続(ブルームバーグより抜粋

 1)非農業部門雇用者数は前月比+52.8万人、予想+25万人・前月+39.8万人を上回る。

 2)7月失業率は3.5%、約50年ぶり低水準、予想3.6%・前月3.6%。

 3)景気悪化を巡る懸念が強まるなかで、多くの産業で労働需要が安定的に推移している。数十年ぶりの高インフレを前に、米金融当局が積極的な金融政策姿勢を継続する理由付けになる可能性がある。

●4.米クリーブランド連銀総裁、インフレ抑制のため政策金利4%超に引上げへ(ブルームバーグ)

●5.BofA、株式市場から資金流出再開のため、投資家は利益確定売りを推奨(ブルームバーグより抜粋

 1)米銀行バンク・オブ・アメリカ(BofA)は、投資家が世界の株式を敬遠し、債券を選好する戦略を再開していると指摘した。7月に大きく上昇した米国株から距離を置くには妥当な時期だと分析した。
 
 2)SP500が4,200の水準に達する流れにおいて、売りを改めて指摘。米国株の最近の上昇局面は、持続的な上昇というよりも、「弱気相場のなかの一時的上昇」  と見ており、SP500の底値は3,600を下回る水準との見方を維持した。

 3)また、投資家心理はなお弱気だとしつつ、現在、売り方の買戻しがされていると指摘。SP500は、9/21の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定までは3,800~4,200のレンジで推移すると予想した。

●6.世界半導体売上高、4カ月連続で鈍化、利上げと地政学リスクの圧迫鮮明(ブルームバーグより抜粋

 1)米半導体工業会(SIA)によると、6月の半導体売上高は前年同月比+13.3%増と、5月の+18%増から鈍化した。4カ月連続鈍化は米中貿易摩擦が激化した2018年以来最長。

 2)この数十年間、半導体売上高の3カ月移動平均は世界経済のパフォーマンスと相関関係を示してきた。現在は世界的なリセッション(景気後退)懸念によりサムスン電子など半導体メーカーは投資計画の縮小を検討している。

 3)米国では実質GDP(国内総生産)が4~6月に2四半期連続の減少となり、欧州の製造業生産は縮小し、世界の見通しに暗雲が垂れ込めている。韓国の半導体輸出伸び率も4カ月連続で鈍化(6月+10.7%増⇒7月+2.1%増)、6月の半導体在庫は過去6年余りで最大の増加幅となった。台湾も同様の傾向が見られる。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/4上海総合、+25高、3,189(亜州リサーチより抜粋
  ・台湾を巡る米中緊張の警戒感が薄らぐ流れとなった、
  ・ペロシ米下院議長の訪台に抗議し、中国人民解放軍は台湾を囲むように6カ所で大規模な実弾演習を8/7まで実施する見通しだが、「本格的な軍事衝突に発展する恐れはかなり少ない」との見方が流れている。
  ・また、中国本土では新型コロナ新規感染の落ち着きや、当局の産業支援スタンスが改めて材料視された。
  ・業種別では、金融が上げを主導し、医薬品も高く酒造・食品もしっかり。半面、前日に逆行高した軍事関連は冴えず、自動車も安い。

 2)8/5、上海総合+37高、3,227(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合を継ぐ流れとなった。
  ・台湾を巡る米中緊張の過度な警戒感後退や、中国の産業支援策に対する期待感などが支えになっている。
  ・米金融政策に大きな影響を与える米雇用統計の発表を今夜に控え、上値の重い場面が見られたものの、引けにかけて上昇の勢いが増した。
  ・業種別では、半導体の上げが目立ち、医薬品・金融が高い。軍事関連・自動車は安い。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/4、日経平均+190円高、27,932円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の上昇を受け投資家心理が上向き、東京市場でも海運株など景気敏感株を中心に買いが入った。
  ・円安も日本株相場の支えとなったが、節目28,000円を上回る場面もあったが、利益確定売りなどが上値を抑えた。
  ・米半導体株指数上昇も、東京市場での半導体関連銘柄の買いにつながり、相場を上げた
  ・トヨタは決算が市場予想を下回り、下げ幅を拡大した。ソフトバンクG・第一三共が上昇、SUBARU・カシオが買われ、Zは大幅安、クボタ・オリックスが下げた。

 2)8/5、日経平均+243円高、28,175円(日経新聞より抜粋
  ・終値で28,000円台を回復し、6/9の28,246円以来およそ2カ月ぶりの高値を付けた。
  ・発表が本格化している国内企業の決算を手掛かりに、個別株の物色が強まった。
  ・前日の米株式市場での半導体株への買いが、東京市場に波及し、東エレクなどが上昇。
  ・日本製鉄や丸紅・キッコーマンなど決算を評価した買いが一部に入り、相場を支えた。
  ・米原油先物市場の下落も、コスト増に伴う企業収益の悪化への過度な警戒を後退させ、投資家心理を上向かせた。短期筋の先物買いも入り騰勢を強めた。
  ・任天堂・ネクソン・三井化学・協和キリンが高く、IHI・三菱重・ホンダが下げた。

●2.日本株:最近の日経平均は28,000円台を天井に下落する傾向

 1)4~6月決算発表シーズン本格化にもかかわらず、8月に入ってから日経平均の動きは緩慢
  ・日経平均 7/29 27,801円 ⇒ 8/5 28,175円 :上昇幅+374円、+1.3%高

 2)NYダウ、日経平均は8月に入ってから、米金利再上昇もあって方向感に欠ける気迷い状態と感じる動きになりつつある。

 3)日経平均はトリプル・トップが完成しつつあるので、今後の動向に注目したい。
  ・       3/24    6/09    8/05
   日経平均  28,252円  28,246円  28,175円
  ・日経平均の6/20⇒8/05の上昇幅は+2,404円高、上昇率は+9.3%。
   目標達成感が出ても良さそうな上昇幅である。

●3.電子部品の大手8社、在庫が3.1カ月と2年前の2.9カ月を上回り、生産調整(日経新聞)

 1)中国のロックダウン(都市封鎖)、スマートフォン出荷減速、自動車の生産成約が逆風。

 2)村田製作所や太陽誘電は稼働率を引下げており、最終需要の鈍化が続けば、踏み込んだ生産調整が必要になる恐れがある。

●4.公的年金運用、4~6月赤字▲3.7兆円、2四半期連続(時事通信より抜粋

 1)世界的にインフレが進むなか、米欧の主要中央銀行が金融引締めを加速させたことで景気後退懸念が浮上し、国内外市場で株価下落したことが響いた。

●5.企業業績

 1)トヨタ  4~6月純利益+7,368億円、前年同期比▲17.9%減、減産・原材料高(朝日新聞)
 2)任天堂  4~6月営業利益+1,016億円、前年同期比▲15.1%減(フィスコ)
 3)サイバネット 1~6月経常利益+9.8億円、前年同期比▲56.0%減(フィスコ)
 4)住友電工 4~6月営業利益+190億円、前年同期比▲34.4%減(フィスコ)
 5)日本製紙 2023/3月純損失▲250億円、前年+19億円黒字、燃料高・円安(時事通信)
 6)日立   4~6月純利益+371億円、前年比▲69.6%減(産経新聞)
 7)ソニー  4~6月純利益+2,181億円、前年比+3%増(産経新聞)
 8)パナソニック 4~6月純利益+489億円、前年比▲36.0%減(産経新聞)
 9)三菱電機 4~6月純利益+334億円、前年比▲45.8%減(産経新聞)
 10)富士通  4~6月純利益+172億円、前年比▲28.5%(産経新聞)
 11)NEC   4~6月純損失▲138億円の赤字(産経新聞)
 12)シャープ 4~6月純利益+269億円、前年比+24.3%増(産経新聞)


Ⅳ.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
  ・3769 GMOペイメント 業績好調
  ・7085 カーブス     業績好調
  ・7148 FPG       業績好調

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