最低賃金に過去最高の31円引上げが諮問され、コンビニ経営は成り立つのか?

2022年8月5日 16:44

 2日、厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会が、2022年度の最低賃金の引上げ額を全国平均で過去最高となる前年比31円、伸び率で3.3%にするという目安額を、後藤厚労相に答申した。

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 実際の引上げ額は都道府県ごとに4ランクに分けて30~31円の範囲で示されているので、今後は各都道府県の地方最低賃金審議会が其々の地域ごとの実情を加味して、多少上下する可能性はあるものの概ね10月初旬に新しい賃金が適用になる。仮に東京都で31円の引上げが実現すると、1072円が2022年度の東京都の最低賃金となる。

 最低賃金には企業が労働者に支払う時間給の下限という性格もあるため、引上げには所得格差の拡大抑止手法として、世界でも重視されている。今年度、世界の主要国や地域では、ドイツが14.8%増加の1610円、米ロサンゼルス市が6.9%増加の2095円、イギリスが6.6%増加の1522円となっている。

 最近話題になっているのは世界の主要国と我が国の賃金の比較だ。OECD(経済協力開発機構)が公表した2020年の加盟国のデータでは、日本の賃金が3万8515ドルなのに対して、ドイツが5万3745ドル、アメリカが6万9392ドル、イギリスが4万7147ドルなので、歴然とした格差が存在する。

 しかも劣後している賃金に対して、最低賃金の上乗せ分も見劣りするようでは格差は拡大するばかりだから、発想を変えた対応が必要となる時期は近いだろう。日本は既に「稼げない国」と看做されて、海外からの労働力が集めにくくなっているからだ。

 最低賃金はあらゆる企業が、フルタイム、パート、アルバイト等の雇用形態に関わらず適用されるため、1日8時間で25日間雇用した場合は、月間6,200円(年間7万4,400円)の支出増になる。さらに、下限が引上げになることで玉突き効果が生まれ、全体的な賃金の底上げに進むことを考えると、「31円」の波及効果は大きい。

 本年度の最低賃金の引上げに当っては、生鮮食品やエネルギーなどの消費者物価指数の上昇も多少加味されたものと思われるが、物価動向の先行きには不透明感が漂っているため、生活向上に対する寄与は読みにくい。

 最低賃金との関連で一時話題を集めていたのがコンビニだ。コンビニ本部と加盟店が結ぶフランチャイズ契約では、バイトやパートの賃金はオーナーの負担となる。今回の最低賃金の引上げは(31円×24時間×365日)年間で、1人当り27万円程度負担が増加することになる(1人が365日、24時間働き詰めになることは有り得ないので、1人8時間であれば3人、1人4時間であれば6人が関わる)。

 同様に昨年は24万円余りの負担増となっていたから、1人雇用すると昨年と今年の増加額は合計で50万円を越えることになった。雇用する人数が負担増としてオーナーにのし掛かるから、加盟店の経営問題はより一層深刻になる。

 加盟店の中から、今まで通りのロイヤリティに耐えられなくなる先が出てくることは容易に想像できる。新規出店を競う時代は終わり、値引き販売も容認して、24時間営業を強要することも出来なくなったコンビニの最大の聖域であるロイヤリティ問題の行方に、加盟店の関心はいや増しに高まっている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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