相場展望8月1日 米国株は長期金利の再上昇(株価下落)に注目したい 日本株は高値圏にあり、反落リスクに備えたい
2022年8月1日 09:07
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/28、NYダウ+332ドル高、32,529ドル(日経新聞より抜粋)
・2022年4~6月の米実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナス成長となり、景気悪化で米連邦制度理事会(FRB)が利上げペースを緩めるとの期待が強まり、幅広い銘柄が買われた。
・取引開始後は、米経済のマイナス成長を嫌気した売りが先行した。ただ、FRBのパウエル議長は前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「利上げペースは経済指標と見通し次第だ」と述べていた。市場では「FRBは利上げに積極的にならない」との見方が広がり、米株は上昇に転換。
・GDP発表を受け、長期金利が低下すると、割高感が薄れ高PER銘柄の買いを誘い、ハイテクの一角が上げ、マイクロソフトが+3%高で終えた。決算が予想を上回ったハネウェルが+4%高、消費関連の上昇も目立ち、ナイキも高い。
・米下院が半導体企業への支援法案を可決、エヌビディアなどが上昇し、テスラも高い。市場予想を下回る決算のメタは大幅に下げた。
【前回は】相場展望7月28日 米、利上げ+0.75%で安心感、QTの織込み不足に懸念 日本株は、外国人買いが1カ月超続き「買われ過ぎ」
2) 7/29、NYダウ+315ドル高、32,845ドル(日経新聞より抜粋)
・ハイテク大手の決算が堅調だったと受け止められ、投資家心理が一段と改善した。原油高で大幅増収増益のシェブロンも買われNYダウを押し上げた。
・7月のNYダウは+6.7%上昇し、2020年11月以来の高い上昇率となった。ナスダック総合指数の月間上昇率は+12.3%と、2020年4月以来の大きさだった。
・市場予想を上回る決算が目立ち、業績悪化への過度な警戒感が和らいでいる。
・「決算シーズン前に持ち高を売りに傾けていた投資家の買戻しが膨らんでいる」との指摘があった。
・景気減速が強まると、FRBが利上げペースを緩めるとの見方も投資家心理を支えた。
・アップル+3%高、アマゾン+10%高、シェブロン+9%高、キャタピラー+6%高。最終赤字に転落したインテルは▲9%近く下げ、ドル高・原材料高が収益を圧迫するとの見方をされたP&Gは▲6%下落した。
●2.米国株:米株の反発上昇は長期金利低下による⇒長期金利の再上昇時に備えたい
1)FRBのインフレ率2%目標で、金利の逆イールドの長期化と拡大が続き、景気後退の懸念が高まる
・FOMCは7/27、「インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」と表明した。
・これは、6月インフレ率+9.1%⇒これを+2%に引き戻すことが目標。このインフレ退治のための金融引締めを本当に実施するなら、景気後退(リセッション)は免れない。やはり、政策金利は0%⇒+5%に引上げる可能性を示唆したと受け止めるべきだろう。3月からの連続引上げで、7月に政策金利は0%⇒+2.25%に短期間で急上昇した。(通常の金利引上げ幅は+0.25%。ところが、3月+0.25%⇒5月+0.50%⇒6月+0.75%⇒7月+0.75%)すでに、インフレの高水準と金利引上げで、需要を直撃しGDP(国内総生産)は2期連続のマイナス成長となった。さらなる金利引上げは、さらに景気後退を確実にすることになる。
2)長期金利の動向と、投機筋を中心に見た相場の推移
長期金利 投機筋
・1~6月中旬 : 金融引締めで長期金利上昇 投機筋の売りで下落
・6月下旬~7月: 景気後退懸念で長期金利低下 売り持ち高の買戻しで株価上昇
(長期金利急伸の反動下落) ⇒短期筋の持ち高は中立になる
⇒売り仕掛けの余地が生まれた
・8月以降 : インフレ退治で金利再上昇予想 ⇒短期筋の売り仕掛けに注目
3)6月下旬以降の株価上昇は「急落後の短期的自律反発」の範囲に留まると見る。FRBの金利引上げ継続で、長期金利が再上昇した時の「株価下落局面に備えたい」。
●3.米アトランタ連銀総裁、米国は景気後退入りには「ほど遠い」、利上げ続く(ブルームバーグ)
●4.米6月コアPCE価格指数は前年比+4.8%と、予想+4.7、5月+4.7を上回る(フィスコ)
1)6月個人消費支出(PCE)は2005年9月以来の大きさとなった。
2)個人消費は米経済活動の3分の2超を占める。6月の消費者支出は、ガソリンやその他のエネルギー製品の価格上昇のほか、医療費や自動車への支出増で押し上げられた。
3)変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEは、FRBがインフレ率を目標の+2%に引下げるにあたり、注目している指数である。
●5.米4~6月、雇用コスト指数は前年比+5.1%上昇、データ開始以降で最大の伸び(ブルームバーグ)
1)FRBはインフレ抑制に積極的スタンス維持に迫られ、景気後退のリスク高まる。
6.米4~6月GDP▲0.9%減、2四半期連続のマイナス成長でテクニカルリセッション(フィスコ)
1)1~3月GDP▲1.6%減に続き連続マイナス成長。
2)米スタグフレーション懸念などで、4月来の低水準まで金利低下。
●7.米著名投資家アックマン氏、インフレ退治に「かなり高い」金利が必要(ロイターより抜粋)
1)インフレは近く鈍化する見通しだが、米連邦準備理事会(FRB)が金利を長期間「かなり高い」水準に維持しなければ、2%の水準には低下しないとの見方を示した。
2)FRBは7/27、FOMCで+0.75%乗上げを決定。パウエルFRB議長は、インフレ動向次第で利上げペースを緩めることも可能とする一方インフレが鈍化し始めなければ次回会合で再び大幅な利上げが適切になる可能性もあるとした。
3)アックマン氏は、インフレに対するFRBの姿勢を「極めて緩和的」と一蹴し、約9%に達しているインフレの退治にはより高い金利が必要だとツイートした。「+4%かそれ以上というかなり高い金利が長期間維持されない限り、インフレ率を+2%に戻せない」とし、「FRBがなぜ中立金利に達していると考えるか理解に苦しむ」と述べ
た。
●8.中国アリババ、米当局監査受入れず、米証券取引委が上場廃止の「暫定リスト」に(読売新聞)
●9.米IT大手、4~6月成長減速が相次ぐ(FNN)
1)アップル 純利益+194.42億ドル、前年同期比▲11%減。中国からの部品供給減。
2)アマゾン 純損失▲20.28億ドル赤字、売上げ+7%増も人件費・燃料費のコスト増。
3)メタ 売上げ288.22億ドル、前年同期比▲1%、上場以来初の減収。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/28、上海総合+6高、3,282(亜州リサーチより抜粋)
・不動産業界を巡る透明感がやや薄らぐ流れとなった。資金不足などにより建設が中断した未完成住宅の工事再開を促すため、中国政府は銀行に1兆人民元(約20兆円)規模の融資を促す方針、などと伝わった。中国ではこのところ、未完成住宅のローン支払いを拒否する事例が相次いでいる。
・米利上げ加速の不安感もやや後退。パウエル米FRB議長はFOMC後の会見で、「ある時点で利上げペースを抑制することが適切になる」と発言した。
・業種別では、ハイテクの上げが目立ち、不動産もしっかり。銀行は冴えない。
2)7/29、上海総合▲29安、3,253(亜州リサーチより抜粋)
・様子見ムードが漂う流れとなった。
・7/31に7月製造業PMIが公表のため、内容を見極めたいとするスタンスが強まった。
・中国の新型コロナ防疫措置の継続も嫌気されている。中国共産党は7/28の中央政治局会議で、足元の経済情勢と下半期の政策活動について検討し、「ゼロコロナ」政策の堅持方針を確認した。会議では、成長目標の達成には言及がなく、「5.5%前後」の成長を目指す数値目標の達成を事実上放棄したとする見方も広がっている。
・業種別では、ホテル・観光の下げが目立ち、石炭は安く、半面、ガラスが高い。
●2.中国7月製造業PMIは49.0、新型コロナ再流行で再び50割れ(ロイターより抜粋)
1)中国国家統計局7/31発表、7月製造業購買担当者景気指数(PMI)は予想外に悪化し、景気改善・悪化の分岐点となる50を再び割込んだ。予想は50.4、前月6月は50.2と改善が見込まれていた。
2)7月非製造業PMIは53.8と、前月の54.7から低下した。
3)ロックダウン(都市封鎖)への懸念、消費者心理の低迷により、中国経済の回復への道のりはより長くなる恐れがある。
●3.英FT紙、中国政府は経営難のデベロッパー向けに1,480億ドルの融資計画(ロイターより抜粋)
1)政府主導による新たな資金調達スキームは、市場心理の改善には役立つのもの、不動産セクターを安定させるためには一段の対策を必要としている。
2)不動産開発業者やアナリストによると、不動産部門が抱える負債を解消するには1兆元(1,480億ドル)の新規融資でも十分ではない。
3)民間の不動産開発会社は市場の約70%を占めており、少なくともその半数は流動性の問題に直面している。
●4.中国共産党指導部、不動産市場の安定求める、刺激策は示唆せず (ブルームバーグ)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/28、日経平均+99円高、27,815円(日経新聞より抜粋)
・米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエルFRB議長の発言を受けた前日の米株式相場の大幅な上昇を引き継ぎ、東京市場でも買いが優勢で一時28,000円台を付けた。
・その後は、利益確定売りと円高もあり、輸出関連を中心に株式相場の重荷になった。
・今年に入り上値の抵抗水準となっている28,000円に到達したことで、目標達成感から売りが優勢となり、日経平均は急速に伸び悩んだ。
・通期上方修正の三菱自、4~6月期増収のエムスリーが上げ、大幅減益の三菱電が下落。
2)7/29、日経平均▲13円安、27,801円(日経新聞より抜粋)
・前日の米株式相場の上昇を手掛かりに買い先行したが、間もなく伸び悩み、円相場の急伸を受けて午後に下げに転じた。
・円相場が132円台まで円高となり、輸出関連の採算改善への期待が一服した。国内の製造業は円安効果を除くと業績が伸び悩んでいるケースが多く、輸出で稼ぐ自動車や電気機器への売りを促した。
・足元で発表が本格化している決算について、想定していたより厳しいとの評価もある。
・中国の景気減速の影響が出ているうえ、先行きについても世界景気の懸念が強まっており、村田製作所やパナなど決算発表後に売られる銘柄が目立った。
・心理的な節目の28,000円近辺で利益確定や戻り待ちの売りが出たことや、週末を控え持ち高調整の売りが出たのも相場の重荷だった。
・一方、下値は限られた。7/28発表の4~6月の米実質国内総生産(GDP)は2四半期連続でマイナス成長となり、FRBの利上げペースが減速するとの見方が浮上。米長期金利の低下を受けたグロース(成長)株買いが東京市場にも波及した。
・日産自・三菱自・日野自・デンソー・ジェイテクトが売られ、エムスリーが上昇した。
●2.日本株:株価は高値圏の買われ過ぎの局面で、反落リスクに備える構えで臨みたい
1)日経平均の最近の動向
・外国人短期筋の株式先物手口を見ると、6/22⇒7/29まで、買越しを継続している。外国人の先物買い枚数も低下傾向にある。
・テクニカル指標のストキャスティクス「買われ過ぎ・売られ過ぎ指標」も、買われ過ぎの高値圏にある。
・日経平均も200日移動平均線を越え、高水準といえる位置にある。
・7/29、日経平均27,801円、200日移動平均線27,561円
2)決算発表シーズンも最終段階で、好材料出尽くしとなりそうな局面を予想
3)臨まれる慎重なスタンス
・以上のことから現段階は、買い上がるよりも、利益確定売りのタイミングの局面にあるといえる。
・株価反落のリスクに備えた慎重な姿勢が良さそうだ。
●3.日本が次世代半導体の研究開発拠点、米国との協同視野(ロイターより抜粋)
1)日経新聞とNHKは7/29、日本が次世代半導体の研究拠点を整備すると報じた。
2)年内に拠点を新設し、2025年にも日本で量産する体制を整備。半導体の主要供給源である台湾を巡って有事が起きても一定量を調達できるようにする。研究するのは回線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当の半導体で、日本側は10年で1兆円の研究開発費を充てる案があるとしている。
●4.企業業績
1)パナソニック 4~6月最終利益+489億円、前年比▲36%減、原材料高騰(NHK)
2)日産自 4~6月営業利益+649億円、前年比▲14%減、原材料・物流高(朝日新聞)
3)小糸製作所 2023/3月純利益+350億円、前年比▲9%減、予想+460億円(日経新聞)
4)NEC 4~6月純利益▲138億円赤字、前年同期+2億円黒字(ロイター)
通期見通しは据え置いた
5)東邦チタ 4~6月純利益+34億円、前年同期比+82%増(日経新聞)
6)ソニー 2023/3通期純利益見通し+8,000億円、前年比▲9.3%減(ロイター)
巣ごもり後退でゲーム下振れ
7)大和証券 4~6月純利益+119億円、前年同期比▲50%減(ブルームバーグ)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・2871 ニチレイ 業績堅調
・4578 大塚 業績堅調
・8279 ヤオコー 業績堅調
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