【どう見るこの相場】インフレはモノ?それともカネ?高配当利回り・キャッシュリッチ銘柄で新常態にも備え

2022年7月20日 10:50

【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】

 下世話に「お医者さんより先にお坊さんがきた」という。これは、急病人が出たときなどの非常事態の際の手順のチグハグ感を表した例え話である。普通、誰かが発病するとまず病人の枕元に駆け付けるのはお医者さんで、病気を診断し治療に精を出す。しかし薬石効なく病人が万が一となった場合、続いて枕元に呼ばれるのは、故人を弔うお坊さんでお経をあげてもらうことになる。ところが、お医者さんより先にお坊さんが駆け付けてしまい、万が一を先取りする手順前後が起こってしまうことを皮肉っている。

 現在の米国の金融マーケットを海のこちらから素人目でみていると、どうもこの下世話な例え話を連想してしまう。米国経済は現在、インフレという病気である。枕元に付きっ切りなのは、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長で、お医者さんよろしく「インフレ・ファイター」として次から次と治療法を施術中だ。前週13日に発表された6月の消費者物価指数が、前年同月比9.1%上昇と40年半ぶりの高い伸びとなったことから、7月26日から開催予定FOMC(公開市場委員会)での政策金利の引き上げ幅は、0.75%どころか1%に引き上げられるショック療法の観測も出た。

 ところがマーケットは、この政策金利の引き上げを招いたインフレそのものでなく、早くも政策金利引き上げによるオーバーキルによるリセッション(景気後退)を先取りして、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、今年1~6月の上半期に15.3%も下げ、60年ぶりの大きな下落率となってしまった。まさに下世話の例え話のように、米国経済の枕元にはお医者さんよりマーケット参加者の鎮魂を祈るお坊さんならぬ、米国なら神父さんか牧師さんが沢山集まっているような状況のようである。東京市場が3連休中の前日18日には、NYダウは、取引時間中の350ドル高から大引けでは215ドル安と反落して引け大荒れとなったようだが、これもリセッションが、ソフトランディングで済むのか、ハードランディングを強いられるかでマーケットが揺さぶられている結果に違いない。

 手順が前後するからアセットアロケーション(資産配分)にも歪みが生じているのかもしれない。例えば「インフレはモノ、デフレはカネ」という資産形成・防衛のためのイロハ中のイロハのパラダイム(規範)である。インフレは、カネの価値がドンドン減価するのだからこのヘッジ資産として浮上するのはモノのはずである。ところがこのモノの価格が、このセオリーに反して下落が止まらない。原油先物価格、金価格、コモディティ価格とも今年前半の高値からは大きく値を崩している。この価格下落は、ロングポジションを取ってきたファンド筋による需給要因によるもので、需給悪が一巡すればリバウンドが期待できるとの見方もあるようだが、いまのところその兆しらしいものは見当たらない。

 反してカネへの選好が強い。ドルは独歩高が続き、24年ぶりの歴史的な円安・ドル高局面にある。さらに米国の長期国債への需要も強く、10年物国債利回りは、今年6月のピーク3.5%が、前日18日は2.9%台と下落(価格は上昇)している。ヘッジ資産のモノの地盤沈下が続き、安全資産の国債へのリスク回避が強まったことになる。「インフレはモノ」が、「インフレもカネ」へパラダイムシフト(規範変遷)を起こし、ニューノーマル(新常態)入りしたかのようである。

 当特集も、再三再四「インフレはモノ」のセオリーに言及してきたが、米国市場の動向をみるにつけ、ここはやはり「インフレもカネ」にいったんは軸足を移し新常態を試し備える時期にあるのではないかと思い至った。ということで今週の当特集は、「カネ」関連株、金持ち企業株、キャッシュリッチ株にアプローチしてみることにした。注目したのは、債券投資代わりの安全資産の東証プライム市場の高配当利回り株、よりディフェンシブなスタンダード市場の高配当利回り株、さらに別枠として堅実経営では国内有数の名古屋銘柄である。キャピタルゲイン狙いではなく、株価の下値硬直性に着目したインカムゲイン狙いと急がないことが肝要となるはずだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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