相場展望7月18日 米FOMCの利上げ、中国経済減速と失業率に注目 日本株は4~6月期決算発表シーズン入りに注視
2022年7月18日 09:24
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/14、NYダウ▲142ドル、30,630ドル(日経新聞より抜粋)
・インフレ指標の上振れが続き、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な利上げを続けると見た売りが出て、一時▲600ドル超を下げたが、主要企業の決算発表を見極めたい投資家による持ち高調整の買いが入り、下げ渋った。
・前日の米6月消費者物価指数に続き、米6月卸売物価指数も前月比+1.1%上昇と市場予想+0.8%を上回った。FRBが7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で1%の利上げを決めるとの観測がくすぶり、急速な金融引締めが景気を冷やすと見た売りが先行した。
・米主要企業の4~6月決算発表シーズンが7/14に金融大手から始まった。市場では「米株式相場は足元で下落が続いたため、決算内容を見極めたい投資家が持ち高調整の買いを入れた」との指摘があった。
・大幅減益決算発表をしたJPモルガンチェースが▲3%安、他の銀行株も下げた。景気金融のキャタピラー・ダウも安い。反面、アップル+2%高・ボーイングは高い。
【前回は】相場展望7月14日 米国債2年vs10年の逆イールドが一段と進行 短期筋の外国人による買い仕掛けの手仕舞いに注視
2)7/15、NYダウ+658ドル、31,288ドル(NHK・日経新聞)
・7/15発表の小売業の売上高が市場の予想を上回ったことに加え、「インフレ期待」と呼ばれる今後のインフレを巡る消費者の懸念などが示される指標に改善傾向が見られたことから、FRBの利上げ幅は前回と同じ+0.75%になるという見方が優勢となり、幅広い銘柄が買い戻されました。
・米景気の底堅さを示す経済統計の発表を受け、好感する買いが幅広い銘柄に入った。
・米連邦制度準備理事会(FRB)が急激な利上げに動くとの観測がやや後退したのも相場を後押しした。
・米6月小売売上高は前月比+0.1%増と、市場予想+0.9%を上回った。
・また、ミシガン大学が発表した7月消費者態度指数も前月から改善した。インフレが加速する中でも消費は堅調だとして、景気敏感や消費関連が買われた。
・ミシガン大学の消費者の期待インフレ率が低下したのも株買いを誘った。5年先の期待インフレ率は2.8%上昇と、前月3.1%から低下した。FRBが金融政策の判断で重視するデータだけに、7/26~27に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の4倍に当たる+1%の利上げを決めるとの見方が後退し、急激な利上げが景気を冷やすとの懸念が和らいだ。
・アメックスとディズニーが上昇、市場予想を上回る決算を発表したシティが大幅高。ユナイテッドヘルスは+5%高となり、NYダウを押し上げた。アマゾンやメタなど主力に加え、エヌビディアなど半導体関連も総じて上げた。
●2.米国株:当面の基調は「重い展開」を想定、インフレ懸念・金利上昇懸念の後退も
1)米NYダウは7/15、6月小売売上高が予想を上回ったことを好感し、+658ドル高。消費者は、貯蓄を取り崩す&クレジット高を増やして消費支出を増加させたため、小売売上高が予想を上回ったと思われる。そのような小売売上高の好調さは、長続きしない。従って、7/15大幅高は、大幅下落の反動で自律反発の範囲内と見るべきではないか。
2)CRB指数(国際商品先物)が下落していることから、インフレがピークアウトしたとの観測が浮上したことも、NYダウ反転のきっかけになったと思われる。
WTI原油先物 3/08高値 123.70ドル ⇒ 7/15時点 97.57ドル
CRB指数 6/09高値 329.59 ⇒ 7/15時点 277.64
3)米株式相場を取り巻く懸念材料
・7/26~27開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利上げ幅に注目
・4~6月業績の下方修正を注視
・7/14発表のJPモルガンチェースなど銀行決算は、経済見通し悪化を反映した貸倒引当金の積み増し、債券・株式引受業務の手数料収入の減少などを要因として、市場予測を下回った。
・今後の企業決算発表も、航空大手デルタの下方修正のように、市場予想を下回る発表が多発する懸念がある。
・米6月消費者物価指数は7/13公表され、前年比+9.1%と高い伸びとなり、インフレ圧力の根強さが示された。7/15の株式市場は、過度な金融引締めへの警戒がいったん後退したが、今後ともインフレと景気の動向を注視する展開が続くことに変わりはない。
・長短金利の逆転が起こり、「逆イールド」が9日連続で継続し、景気後退懸念が強まっている。
・上記の観点から、米株相場は国際商品市況の下落など好材料として反発する場面が予想されるものの、当面の基調としては上値の重い展開が続くと予想する。
●3.米PPIや失業保険申請件数が予想を上振れ、スタグフレーション懸念も(フィスコ)
●4.米6月生産者物価指数は前月比+1.1%、予想+0.8%・5月+0.8%を上回る(フィスコ)
●5.ダイモン氏、先行きに「複数の深刻な問題」、経済の「ハリケーン」に身構え(ブルームバーグより抜粋)
1)米JPモルガンチェースのダイモンCEOは、先月、経済の「ハリケーン」に身構えるべき
2)新型コロナ流行前より、「消費者が支出を増やし、雇用は十分にあり、賃金は上昇している」が、「明らかに信頼感は低下している」と述べた。
3)先行きは、「深刻な問題が複数待ち構えていることは確かだ」と続けた。
4)JPモルガンは、自社株買いを停止、4~6月業績は予想を下回る。
●6.米クリーブランド連銀総裁、CPIを受け7月会合で+0.75%以上の利上げ必要(ブルームバーグ)
1)ウォラーFRB理事、7月FOMCで+0.75%利上げ支持、より大幅利上げも視野(フィスコ)
●7.BofA、「米4~6月決算シーズンが失望なら、米国株は全面降伏も」と指摘(ブルームバーグより抜粋)
1)7~12月には深刻なリセッション(景気後退)とドル高のリスクが高まるため、米国株はさらに下落する可能性がある、と指摘した。
2)SP500指数は、年末の予想を▲20%引下げ、3,600とした。さらに、大幅下落の場合は3,000という水準を挙げた。
●8.ブラックロックのフィンクCEO、「経済情勢は数十年ぶりの厳しさ」(ブルームバーグより抜粋)
1)投資家は、(1)金利上昇 (2)インフレ (3)エネルギー価格の高騰で、過去数十年見られなかった困難に直面している。
2)4~6月利益は市場予想を下回る。1株当たり利益は7.36ドルと予想7.90ドルを下回る。長期ファンドの純流入額は急減速し、アクティブ運用ファンドの運用資産は減少した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/14、上海総合▲2安、3,281(亜州リサーチより抜粋)
・不動産ローンを巡る不透明感が重石。資金不足などにより建設工事が中断した未完成住宅に関し、物件購入者による集団ローン不払いが中国各地で続出している。
・不動産業界の債務リスクが改めて意識されたほか、銀行の不良債権増加につながると懸念されている。
・業種別では、金融が下げを主導し、不動産・エネルギーが安く、ITハイテクが高い。
2)7/15、上海総合▲53安、3,228(亜州リサーチより抜粋)
・不動産ローン不払い問題の混迷化が懸念される流れとなり、売り材料視された。
・この事態を重く受け止め、政府関係部局は複数の金融機関を招集し緊急会議を開いたものの明解な解決方法は提示されなかったと言う。
・中国景気の鈍化も警戒。4~6月の中国GDP成長率は+0.4%に失速し、市場予想の+1.2%を大幅に下回った。当局は景気対策を強化するとの見方で、指数は上昇する場面もあったが、買いの勢いは続かず、徐々に下げ幅を広げた。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、景気敏感な素材関連も冴えず。半面、自動車はしっかり、半導体・酒造が買われた。
●2.中国株:中国経済成長率の減速、失業率上昇が引き起こす、社会体制の揺らぎに注目
1)経済失速⇒失業率の上昇・就職率の低下⇒国民の不満⇒中国共産党一党独裁の求心力低下のシナリオへの恐れに注目したい。
2)2022年の中国経済成長率は目標5.5%前後だが、達成困難と思われる。
3)都市部の16~24歳の若年層の失業率は悪化し続け、6月には19.3%と統計開始以来の最悪の水準となった。今年の大学の新卒者は過去最多の約1,076万人となり、就職競争が激化している。そもそも、新卒者の完全就職に必要な経済成長率は+8%と言われてきた。中国経済成長率の低下とともに「大学卒業⇒失業」が増えてきており、中国の失業率増加が中国の政治・社会体制に及ぼす影響を注目していきたい。
●3.李克強・首相、インフレを防ぎながら経済を支える(ロイター)
●4.中国国家統計局は7/15、「中国経済は、多くの課題に直面」(ロイター)
1)中国国家統計局の報道官は、4~6月期は前年同期比+0.4%の経済成長を辛うじて達成したとし、中国経済は多くの課題に直面している、との見解を示した。
2)1~6月期全体でも+2.5%にとどまっており、中国政府目標の「5.5%前後」を大きく下回っている。(日テレ)
上海のロックダウンなど厳しい「ゼロコロナ政策」が経済を直撃したが、習近平指導部は今後もゼロコロナ政策を堅持する方針で、中国経済の先行きは不透明感を増している。
●5.中国不動産危機、悪化一途の住宅ローン返済拒否が銀行を直撃も(ブルームバーグより抜粋)
1)住宅ローンを組んで住宅を購入したものの、物件が未完成だとしてローンの返済を拒む借り手が増えている。
2)不動産が融資の担保になっており、最終的に金融セクターの打撃を与えるのが常だ。このため、中国当局が銀行側とこの問題を話し合うための緊急会合を開いた。
3)不動産セクターは、経済大国・中国のGDPの約4分の1を占める。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/14、日経平均+164円高、26,643円(日経新聞より抜粋)
・円相場が138円台/ドルに下落し、24年ぶりの円安水準になった。輸出採算の改善につながるとの観測から、自動車・機械の一部に買いが入った。
・前日の米株式市場で主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数が+0.7%高となり、東京市場でも東エレクなど半導体関連の買いにつながった。このところ下げが続いていたため、買い直す動きが出やすかった。
・キーエンス・オムロン・太陽誘電・川崎汽・マツダ・三菱商事が高く、東電は下落。
2) 7/15、日経平均+145円高、26,788円(日経新聞より抜粋)
・朝方は一部値がさ株の株価上昇が牽引して上げ幅を+200円超まで拡大したが、その後は世界景気減速への警戒から利益確定や戻り待ちの売りも目立ち、物色の広がりは限定的だった。
・7/14に今期業績予想の上方修正を発表したファストリが+8%超と急伸し、年初来高値を更新し、1銘柄で日経平均を+214円押し上げた。
・円相場が139円と、24年ぶりの円安で輸出企業の採算改善期待も相場を支えた。
・中国4~6月期の国内総生産(GDP)が市場予想を下回る一方、中国6月小売売上高が市場予想を上回り、相場には一定の支援材料になったとの指摘も聞かれた。
・米6月卸売物価指数が前月比で市場予想を上回るなど、米利上げ加速の警戒は根強い。米6月小売売上高の発表や、3連休を控え、午後は様子見ムードが強まった・
・塩野義・エーザイ・トヨタ・ホンダ・任天堂が高く、第一生命・三菱UFJが安い。
●2.日本株:外国人動向(株式先物の買い枚数が大幅縮小)と決算発表に注目
1)7月第1週(7/4~8)の日本株の買いの牽引役は、(1)外国人 (2)自社株買いである。
外国人は+1兆 1,905円もの買越し、事業法人の自社株買いは+1,338億円であった。反面、売り向かったのは、(1)個人(現金▲2,046億円) (2)投資信託(▲3,801億円)。
2)買い主役の外国人は、7/11以降急速に買いが細ってきている、ことに注目したい。
外国人の株式先物買い枚数: 7/8 +13,500枚買 ⇒ 7/15 +610枚買
3)4~6月期決算発表が7/14から本格化する。
2月期決算企業の3~5月期業績発表を振り返ると、
・好業績企業には、株価は大幅上昇
・不振業績企業や不透明企業には、売り
という明暗が明確に分かれる反応を市場はみせている。世界の景気減速の中での、3月期決算企業の4~6月期業績発表となるだけに、慎重なスタンスで臨みたい。
●3.企業動向
1)パナソニック 米カンザスにテスラ向けEV電池新工場建設へ(FNN)
■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)
・3141 ウエルシア 業績堅調
・4507 塩野義 業績好調
・6098 リクルート 業績堅調
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