死語になった自動車用語「有鉛ガソリン」
2022年7月5日 12:59
有鉛(ゆうえん)ガソリンとは、Wikipediaによると、「アルキル鉛を微量添加されたガソリンのことである。レシプロエンジンのノッキングを防止するアンチノック剤としてアルキル鉛が添加されており、無鉛ガソリンと比較してオクタン価も5~15ほど上昇する」。
【こちらも】死語になった自動車用語「タイヤクロスチェンジ」
●ノッキングとは
ここでノッキングについて、簡単に説明して置こう。
エンジンを高性能化するには、圧縮比を高めてやるのが一般的だ。しかし、圧縮比を上げると、十分に圧縮過程が終わらないうちに、爆発してしまう事象が発生する。
これを「ノッキング」と呼んで、通常の上死点で爆発した場合の音とは違った「カラカラ」といった異音を発する。つまり、上死点に達する前に、爆発によってピストンの頭が「ノック」された様な異音だからノッキングなのだ。
●オクタン価
このノッキングに耐える数値(アンチノック数値)が「オクタン価」であり、「オクタン価が高いガソリン」=「ハイオク(ハイ・オクタン価)ガソリン」なのだ。
変な説明になるが、「レギュラーガソリン」より「ハイオクガソリン」の方が燃えにくいと考えて欲しい。
一般的なトラックやバンに搭載するエンジンは、最高回転数も低目で、圧縮比も比較的低い。
これに対して、スポーツカーに搭載するエンジンは、高圧縮比の高回転・高出力エンジンである。圧縮比が高く、最高回転数が大きなエンジンの場合、異常着火し易い。
そこで、そんな過酷な状況でも異常着火し難い、言い換えれば「燃え難い」性質が必要となる。そのため添加剤で「燃え難く」=「異常着火し難く」=「アンチノック性を高く」したのが「ハイオクガソリン」なのだ。
●「有鉛ガソリン」
再びWikipediaから引用すると、「有鉛ガソリンは、第2次世界大戦中を含めて1970年代頃まで、自動車の燃料などに広く用いられていた。
しかし人体に有毒で大気汚染の原因となるため、日本では自動車用レギュラーガソリンが1975年に、自動車用高オクタン価ガソリン(ハイオク)も1987年に完全に無鉛化された。1980年頃まではハイオクガソリン用にアルキル鉛がわずかに使用されていたが、今日ではMTBEなど含酸素系添加剤に完全移行している。
1975年2月1日生産分からのレギュラーガソリン無鉛化に伴い、無鉛ガソリン対策車と有鉛ガソリン車を区別するために4種類のステッカー(3 cm×5 cm程度)が作られ、ガソリンタンクの周辺や窓ガラスに貼られることとなった」。
*赤(有鉛): プレミアムガソリンを用いる車両(主に当時の欧州車、ハイオク指定の高出力エンジン搭載車)
*緑(混合): 1/3程度有鉛ガソリンを混合する車両(主に当時のレギュラー仕様の無鉛対策以前のトラック)
*オレンジ(高速有鉛): 高速道路・山道を走行する際に有鉛ガソリンを用いる車両(当時のレギュラー仕様の無鉛対策以前の乗用車)
*青(無鉛): 無鉛ガソリン対策車両
有鉛ガソリンの製造・販売終了に伴い、1990年代以降に製造された新車にはこのステッカーは貼られていない。
「有鉛ガソリン」という言葉自体が通じないことも珍しく無く、死語の世界へ旅立ったと考えられる。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)