物価が上昇する日本で、日産と三菱が共同開発したEV軽の「圧倒的な割安感」!
2022年6月24日 20:05
クルマは趣味性が高い。メーカーにこだわり、スタイルや性能にこだわる。各オーナーのこだわりポイントを集めたら、項目が多すぎて、細かすぎて、収拾がつかなくなるような気がする。そんな多様な選択肢の上位に、突然飛び込んできたのは、電気自動車(EV)だ。カーボンニュートラルという世界の趨勢を受けて方向性は見えていたが、欧州各国の政府やEUの姿勢がEVへの勢いを決定付けたと言っていい。
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数多いクルマの選択肢の中で、経済性や手軽さなどで存在感を見せているのが軽自動車だ。2020年度の国内自動車保有台数8185万台のうち、乗用車が3928万台(48.0%)なのに対して、軽自動車は3294万台と40%を占めている。
5月20日に日産と三菱自動車(三菱)が共同プロジェクトの成果として、EVの軽自動車を発表した背景には軽自動車が持つ国内マーケットの奥行きがある。日産は「サクラ」、三菱は「ekクロスEV」を発表した。軽自動車の重要なポイントが経済性にあることは言うまでもないから、今までEVに求められて来た航続距離にも割切りがある。
搭載されるバッテリーの総電力量は、40kwhの日産リーフ標準モデルの2分の1に相当する20kwhだ。そのバッテリーが満充電状態で走行できるのはWLTCモードで180km。エアコン等を使用した場合の実質航続距離は130km程となる。
現行EVで最大の航続距離を誇るのが、テスラのモデル3ロングレンジAWDで689kmだから、全くの比較対象外だ。だが軽自動車ユーザーに対する利用調査の結果では、1日の走行距離が10km未満のユーザーが50%を占めており、50km未満まで拡大すると80%のユーザーが含まれる。EVの航続距離を競うことは、数字上の順位付けになっていても、実用性と経済性という観点からはあまり意味がないということだ。
通勤、通学、日常の買い物等に使われる「下駄」替わりの軽自動車には、1回の充電で300~500kmという航続距離は「宝の持ち腐れ」の様なもので、切実に必要とされている訳ではない。
バッテリーと言うヤツは厄介で、重量が嵩むため航続距離を伸ばそうとして容量を増やすと、増加した重量がより大きなエネルギーを消費するため、重量増加に見合ったほど距離は増加しない。つまり、走行距離を長くするほど効率が悪くなるという二律背反性を抱えている。日産と三菱の軽自動車プロジェクトには、十分な合理性があるということになる。
価格は国の補助金が55万円なので、基本グレードの「サクラX」「ekクロスEVG」の場合、実質の購入価格(車両本体価格)は184万円程になり、自治体の補助金(東京都は45万円)という優遇策を活用すると負担感はさらに減る。ガソリンタイプの最上級ターボグレードである日産デイズハイウェイスターGターボが、164.89万円であることを考えると、お得感はさらに増す。
EVの充電設備は全国で3万カ所余になってガソリンスタンドの数を超えた上に、自宅充電が可能なもの魅力だ。自宅にAC200V/14.5Aの設備があれば、約8時間の普通充電で満充電となり、40分の急速充電でも80%までの充電が可能だ。朝に家を出て夕方に帰宅するのが生活パターンだという人であれば、帰宅後の充電で朝の出発には何の問題もない。
商品としてのEVを考えると、今までの時期が試行錯誤の導入期で、これからは本格的な普及期になりそうだ。黎明期のEVを牽引してきた三菱や日産が、EV車普及の旗を振るのは偶然ではない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)