退職トラブル事例1 身内経営の会社から1日でも早く逃げ出したい20代男性

2022年6月19日 17:06

 終身雇用の時代が終わり、会社を転職する人たちは年々増えています。それに伴い、会社を退職する際のトラブルも増加。退職したいのに会社の執拗な引き止めにあい、退職できないというケースも少なくありません。

 こうした背景から、2010年代後半に「退職代行」と呼ばれるサービスが登場しました。退職代行は、会社と労働者の間に入り、退職手続きを仲介するサービスのことです。この退職代行業者には、様々な労働トラブルを抱えた依頼が舞い込んできます。いわゆるブラック企業から逃れたいという依頼や、会社でトラブルを起こしてしまい逃げ出したいという依頼など様々です。

 この連載では、退職代行業者に実際あった依頼を紹介していきます。
※個人や企業の特定を避けるため、一部内容を変更してお届けします。


■パワハラ・モラハラは当たり前 身内経営の会社から逃げたい20代男性

 依頼者は、4月に学校を卒業したばかりの20代の男性。叔父が経営する会社で働いているとのことだ。会社は、身内だからといって甘い環境ではなく、逆に長時間労働を強いられていた。

 朝7時から、夜23時頃までの残業は当たり前で、帰宅後にも当たり前のように仕事の電話やメールが届く。翌日に返事をしようものなら、上司からひどい暴言をはかれるため、勤務時間外でもすぐに返事をしなくてはいけない状況だった。

 そうした生活を続けた依頼者は、仕事とプライベートの区別がつかなくなり、精神的にもまいってしまっていたようだ。

 そんな中、依頼者はあることをきっかけに会社に行けなくなってしまった。

■体調不良で会社を休むと・・

 そのきっかけは、依頼者の体調不良から起こった。

 ある朝、倦怠感と発熱を感じた依頼者は、病院にかかることにした。幸い、新型コロナウイルスではなかったが、勤務をすることが厳しい状況だった。そのため、病院から診断書をもらい、その日は会社を休むことに。

 具合が悪い中、家で休んでいると、上司から一本の電話が。

 「風邪なんて甘え。1日で治るだろ?明日は必ず出勤しろ」

 という内容だった。

 もともと精神疾患があった依頼者は、これをきっかけに精神状態が悪化。翌朝、会社には「まだ具合が悪いから休む」とメールだけをして、出社を拒否した。

 その後、上司や経営者の叔父から何度も着信があるが、全て無視。無断欠勤から数日たったある日、上司から1通のメールが届いた。

 「何日も無断で休むな。みんなに迷惑がかかる。明日来なかったら家まで行く」

 と書かれていた。

 このままでは、家にきて無理やり会社に連れて行かれてしまう。そんな状況を避けるため、依頼者は退職代行業者に依頼をすることに。

 「1日でも早く会社を辞めたいです・・・」と。


 その後、退職代行業者は会社に電話をし、退職手続きを進めることに。

 当初、会社側は退職代行業者とのやり取りを拒否していたようですが、無事に退職することに成功したようです。

 会社を辞めると伝えることは勇気がいる行為です。

 特に、パワハラやモラハラが横行する会社に、退職を伝えられない人は少なくないでしょう。退職代行は、そうした人たちが無事に会社を離れるための選択肢の1つになっています。

 しかし、全て会社側が悪いというわけでもありません。

 退職代行業者にくる依頼の中には、明らかに依頼者側に問題があるケースも少なくありません。この連載では、依頼者側・会社側双方のトラブル事例について今後紹介していきます。

関連記事

最新記事