【株式市場特集】株安許容度を高めている銘柄にアプローチ、市場区分再編の関連銘柄が浮上
2022年6月14日 09:40
【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】
今週の当特集では、株安許容度を高めている、あるいは許容度を高めざるを得ない銘柄にアプローチしてみることにした。浮上するのは、今年4月に実施された東証の市場区分再編の関連銘柄である。
市場再編銘柄が、浮上するキッカケとなったのはメルカリ<4385>(東証プライム)である。同社株は、5月31日に東証グロース市場から東証プライム市場への上場が承認され、株価は、窓を開けて200円超高し、その後の6月7日の上場日を挟み高値波乱となっているが、TOPIX(東証株価指数)に組み入れられる今年7月末までになお一山も二山もの需給相場があるとの見方が有力である。マーケットでは、すでに大手証券がスクリーニングした候補銘柄を中心に「第2のメルカリ」探しも始まった。昨年7月以来、第一次判定でメルカリのグロース市場上場が決まり、市場再編関連株への熱気が急速に消失したのとは様変わりである。
ところが注目したいのは、この「第2のメルカリ」ではない。今年1月11日に東証が、上場基準には不適合だが、適合計画書を作成・提出して経過措置としてプライム市場の上場が承認した296社である。このいわば仮免許のプライム市場銘柄は、その後、適合計画書の進捗状況を公表している。
当初の計画書と同様に上場基準に不適合のままの会社が多い一方、例えば四電工<1939>(東証プライム)は、株式分割や増配、さらに金融機関の保有株の市場放出を実現、不適合となっていた1日平均売買代金を適合させた。またスタンダード銘柄だが、流通株式比率が16.7%と上場基準の25%に不適合だった近鉄百貨店<8244>(東証スタンダード)のように、政策保有株売却を働き掛け、合意した一部株式売却による需給悪化回避の一時的な受け皿となる株式需給緩衝信託を設定したケースもある。
仮免銘柄は、株式公開買い付け(TOB)で上場廃止となったソウルドアウトと、目下TOB中の日水製薬<4550>(東証プライム)を除外すると294社となる。そのなかでターゲットとして絞りたいのは、足元の5月、6月に年初来高値を更新した割安20銘柄である。上場基準のクリアに向けてさらなる株高モチベーションも働くと期待され順張り余地が想定されるからで、順張りに一考余地がある。一方、これと別に年初来高値水準にあってPER水準が割高で「やや難あり」、「少々キズあり」の銘柄のうち、「水準より変化率」の意外株発掘の投資アノマリーにマッチする外食4銘柄は、同じ順張り対応ながら番外銘柄としてマークしてみたい。
■当方針変更による大幅増配銘柄も多くPERも市場平均を下回り割安
年初来高値水準にあって割安修正になお順張り余地がありそうな仮免プライム銘柄は、次の20銘柄がセレクトされた。コード番号順に大末建設<1814>(東証プライム)、ビジネス・ブレークスルー<2464>(東証プライム)、ハードオフコーポレーション<2674>(東証プライム)、フェイスネットワーク<3489>(東証プライム)、芦森工業<3526>(東証プライム)日本特殊塗料<4619>(東証プライム)、OATアグリオ<4979>(東証プライム)、エンシュウ<6218>(東証プライム)、ワイエイシイホールディングス<6298>(東証プタイム)、本多通信工業<6826>(東証プライム)、岩崎電気<6924>(東証プライム)、佐鳥電機<7420>(東証プライム)、リックス<7525>(東証プライム)、ハークスレイ<7561>(東証プライム)、高島<8007>(東証プライム)、GSIクレオ<8101>(東証プライム)、日産東京販売ホールディングス<8291>(東証プライム)、西本Wismettacホールディングス<9260>(東証プライム)、国際紙パルプ商事<9274>(東証プライム)、燦ホールディングス<9628>(東証プライム)である。
20銘柄に共通しているのは、株主還元策として増配にウエートを置いていることで、岩崎電気は、連結配当性向を30%以上として前3月期配当を年間130円(前々期実績40円)に大幅増配して今期も130円配当継続を予定しており、このほかリックス、高島、GSIクレオも配当方針を変更して増配予定にある。この結果、年間配当100円の大末建設の配当利回り6.30%は、プライム市場の高配当ランキングの第8位にランクインし、高島が第31位、GSIクレオ、佐鳥電機、リックス、岩崎電気も5%台でトップ100入りとなっている。西本Wismettaccは、今12月期業績の上方修正と同時の増配で、燦HDは自己株式取得も同時発表し、ビジネスブレークは、今3月期予想業績を未定としているが、固定資産売却益10億円を計上予定であり業績続伸が有力である。20銘柄のPERは、ブレークスルーを除き最低PERの国際紙パルプ商事の4倍台から高PERのOATアグリオ、本多通信でも12倍台までとなっており、プライム市場全銘柄平均の13.99倍を下回る。
■買われ過ぎ4銘柄は「水準より変化率」のアノマリーから番外人気も
番外銘柄の4銘柄は、DDホールディングス<3073>(東証プライム)、SFPホールディングス<3198>(東証プライム)、力の源ホールディングス<3561>(東証プライム)、ダイオーズ<4653)である。いずれも前々期、前期と新型コロナウイルス感染症の感染拡大のなか、緊急事態宣言、まん延防止重点措置、海外のロックダウン(都市封鎖)に店舗休業、営業時間短縮などと痛め付けられ、赤字業績が続くピンチに陥っていた。それが前期後半から営業正常化に向かい、新しいビジネスモデルとして人口密集の都心部から都心近郊の小商圏やロードサイドの低投資・早期回収店舗を新規開発するなど対応を進め、業績も黒字転換してきている。
配当は、前期までの無配継続から今期はまだ未定としているものの、力の源HDの業績は、コロナ禍前の水準を回復し、DDHDは前期に債務超過から脱出、上場廃止の猶予期間入り銘柄から解除された。SFPHDは、前期配当を10円へ復配し、今期は年間20円に増配予定である。ダイオーズは、米国子会社の決算作業関係者がコロナに感染し集計作業が停滞し、決算発表期日と株主総会の基準日を延長していたが、前週末10日にようやく発表した前期・今期業績は黒字転換から黒字幅拡大予想となっている。いずれも行動制限の解除、入国規制の緩和などが続く事業環境好転下、「水準より変化率」の期待を一段と高めよう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)