デンソー、半導体大手UMCの日本拠点USJCと協業 半導体事業を積極化
2022年5月23日 17:05
DENSOと半導体ファウンドリー大手のユナイテッド・マイクロエレクトロニクス・コーポレーション(UMC)日本拠点であるユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(USJC)は、過日、車載向け半導体の需要拡大に対応するため、USJCの300mm(12inch)ウェーハ製造工場におけるパワー半導体生産で協業することに合意した。
USJCが三重県桑名市に持つ300mmウエハー製造工場に絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT/Insulated Gate Bipolar Transistor)製造ラインを新設し、日本で初めてとなる300mmウェーハでのIGBT生産を開始する。今般のDENSOとUSJC協業によって、2023年上期に300㎜ウェーハでのIGBT生産開始をする予定だ。
世界的なカーボンニュートラルへの要求、すなわちCO2削減の取り組みにおいて、電動車の開発・普及が加速。クルマの電動化に必要な半導体の需要もますます高まっている。そのなかでIGBTは、電動車のモーターを駆動・制御するために、直流電流を交流電流へ変換するインバーターにおいて、電源・電流のオンオフを切り替える機能を持つパワーカードに使用される中核デバイスだ。
DENSOのIGBTデバイスおよびプロセス技術とUSJCの300mmウェーハ製造技術を融合し、高性能かつコスト効率の高いパワー半導体の生産を目指す。なお、この取り組みは、経済産業省の「サプライチェーン上不可欠性の高い半導体の生産設備の脱炭素化・刷新事業費補助金」に採択された。
DENSOの代表取締役社長である有馬浩二氏は、「300mmウェーハでのIGBT量産に、日本国内で初めて乗り出すことができることを大変うれしく思います。自動運転や電動化などモビリティのテクノロジー進化の中で、半導体は自動車業界において、ますます重要になってきています。本協業により、電動車に必要不可欠なパワー半導体の安定的な調達を実現し、自動車の電動化に貢献していきます」と述べている。
世界有数の半導体ファウンドリー企業のUMCは、エレクトロニクス業界のあらゆる分野に向けて、ロジックやさまざまなスペシャルティ・テクノロジーを中心とした高品質のIC製造サービスを提供している。UMCの包括的なIC処理技術と製造ソリューションは、台湾を中心にアジア各地で展開している。それら拠点のすべての工場で自動車用品質規格IATF 16949認証を取得。UMCは、台湾・新竹市に本社を構え、米国、欧州、中国、日本、韓国、シンガポールに現地法人を置く。
DENSOは数年前からSiC半導体を自社製造するなどしてきた。従来のSi(シリコン)半導体に換わるSiC(炭化ケイ素)を用いたパワー半導体を開発し、トヨタの燃料電池車(FCV)向けに量産化。SiCパワー半導体を搭載した昇圧用パワーモジュールは、従来のSiパワー半導体搭載製品と比較して、電力損失を約80%低減し、耐圧・耐熱性が高く、パーツの小型化に貢献する。
今回のUMCとの協業、DENSOの狙いは明白だ。電動車の普及で使用量が増す半導体の安定確保だ。2025年には1万枚/月の生産を目指す。
DENSOの半導体分野の積極的な戦略はこれだけではない。航空機の装備品の米大手Honeywell International(ハネウェル)とデンソーは、共同開発している電動航空機向け推進ユニットを、垂直離着陸機のイベント「Forum 78」(2022年5月10~12日、米フォートワース)に出展した。「エアタクシー」や「空飛ぶクルマ」といった都市型のエアモビリティー、いわゆる「UAM(Urban Air Mobility/都市型航空交通システム)」分野に向ける。
両社は2021年5月に電動航空機用推進システムの事業でアライアンス契約を締結している。DENSOは電動推進システムの要素技術であるモーターやモーターを駆動するインバーター、インバーター向けパワー半導体を開発する。ハネウェルはこれらにギアボックスなどを加えて統合し、電動推進ユニット「EPU(Electric Propulsion Unit)」として仕立てる。(編集担当:吉田恒)