相場展望5月19日 米国:高インフレ⇒高金利⇒景気後退⇒米株下落へ 日本:日銀の超金融緩和継続で株堅調⇒米株連動へ

2022年5月19日 09:35

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/16、NYダウ+26ドル高、32,223ドル(日経新聞より抜粋
  ・原油高を受けて石油のシェブロンが上昇、ディフェンシブの一角も上げた。
  ・NYダウは7週間連続下落し、戻り期待の押し目買いが入り、一時+317ドル高。
  ・ただ、米連邦制度理事会(FRB)による積極的な金融引締めへの警戒から、ハイテクや消費関連が売られ、相場の重荷になった。
  ・キャタピラー・スリーエム・メルクが上げ、アップル・アマゾンが下落。

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 2)5/17、NYダウ+431ドル高、32,654ドル(日経新聞より抜粋
  ・米4月小売売上高が消費の堅調さを示し、アメックスやディズニーなどの消費関連やキャタピラーやダウなど景気敏感、金利上昇で金融が、旅客需要拡大でボーイングが買われた。
  ・投資家心理が改善し、前週までの下げ相場を主導したハイテク株も買い直された。アマゾン+4%、テスラ+5%、AMD+9%上げ、半導体全般に買いが波及した。

 3)5/18、NYダウ▲1,164ドル安、31,490ドル(日経新聞より抜粋
  ・米小売大手ターゲットの決算▲52%減益、インフレが企業収益を圧迫するとの懸念が強まり、米消費への不透明感から小売を中心に幅広い銘柄が下落、ダウ年初来安値更新。
  ・NYダウは4/22からの1カ月で、▲800ドル超の下落回数は5回、昨年は年間1回。
  ・急騰した翌日に急落というパターンを繰り返しており、相場回復に諦めムード漂う。
  ・「消費者は食品やガソリン価格の高騰に応じて不要不急の出費を抑えるようになった」との声が聞かれた。ターゲット株価▲25%安・ウオルマート▲7%、ナイキ▲6%など。
  ・投資家心理の悪化で、前日に大幅戻しのハイテクも売り直され、アップル▲6%安。

●2.米国株:高インフレ水準継続⇒積極的金融引締め⇒米景気後退⇒米国株下落へ

      急騰の翌日に急落するというパターンが多く、乱高下が目立ち要警戒
 1)ナスダック総合は5/17、金利+0.1%上昇にもかかわらず大幅上昇。金利上昇で割高感が意識され売られる場合が多いナスダック総合だが、金利上昇にもかかわらず、珍しく大きく買われた。要因は、大幅下落の後で、「売り方の買い戻し」と「値ごろ感」による買い直し姿勢が金利上昇に対して一時的に勝った様子であり、『自律反発の範囲内での上昇』とみる。なお、翌5/18のNYダウは▲4.73%安と急落

 2)パウエルFRB議長発言「インフレ抑制のためなら、積極的利上げは継続」を無視した5/17の米3主要株価指数の上昇だった。

 3)だが、アップルでさえ高値から▲2割安の145ドルを付け、テスラ、アマゾンも同様に年初来の下落となっている点に注目すると、5/17の急騰は5月前半の急落に対する揺り戻しによる上昇とみる方が良さそうだ。やはり、5/18のNYダウは▲3.57%安。

 4)中国の都市封鎖も上海市が解除方針となり、中国リスクが薄れることに注目したい。ウクライナ情勢も、ロシア軍劣勢の流れに転換しそうな様子で、買い安心感が出た。米金利上昇も、安全資産への逃避資金流入で金利低下。以上のような要因も、5/17の株高を後押ししたと思われる。

 5)ただ、6月懸念材料もあり、この株価反発は5月中に収束するとみている。
  6月懸念材料 
  ・FRBによるQT(バランスシート圧縮)開始。月475億ドル減(6兆1,000億円)
  ・FRB、6月+0.5%の金利引上げ。
  ・バイデン大統領支持率41%程度と低評価が続き、11月中間選挙で共和党優位。民主党は政権のレームダック化の回避のため、インフレ退治として、FRBに想定を上回る+0.75%利上げをプッシュする可能性がある。その場合、景気後退への警戒感が株式市場で深まるリスクがある。

●3.米パウエルFRB議長、「明確で納得できる」インフレ後退まで、利上げ継続(ブルームバーグ)

●4.欧米の株安はまだこれから、モルガンSが予想、ゴールドマンとは対照的(ブルームバーグより抜粋

 1)モルガンS: SP500は下落後、来春に3,900を回復
  ・株式相場の下落はまだ終わっていない。米金融引締めが、成長を鈍化させようとしており、SP500は5週間にわたる下落後もまだ適正水準ではない。
  ・企業利益の伸び鈍化と、高いボラティリティーのため、という。米国株の価格は、現在の水準からの成長鈍化を織込んでいない。     
  ・今後12カ月は株式のボラティリティーが高止まりすると予想し、ヘルスケア・公益・不動産は買いというディフェンシブを勧める。
  ・欧州株は慎重姿勢を示し、厳しい経済状況やウクライナ戦争、利益率低下を理由に7~12月の利益予想を下方修正するリスクを考慮すると、さらに下落する見込みだとしている。

 2)ゴールドマン: 買いの好機
  ・過去数週間の下落で、株式に買いの好機が生まれたとの見方。
  ・インフレやタカ派的な中央銀行の逆風は、株価に既に織込み済み。

●5.BofA、投資家の現金比率が2001年来の高さ、スタグフレーション懸念(ブルームバーグより抜粋

 1)投資家が保有する現金の比率が2001年9月以来の高水準に達したことが、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査で分かった。
  ・世界経済の成長見通しが過去最悪に落込み、スタグフレーションの懸念が広がる。
  ・投資家は、株式相場の一段安も見込んでいる。目先の一時的株高は見込むが、一段の利上げが見込まれ、最終的な底は打っていない。株式市場はまだ「完全降伏」はしていない。
  ・BofAは、調査結果について「極度の弱気」と表現した。
  ・リスクは、(1)タカ派の中央銀行が最大リスク (2)世界的リセッション(景気後退)。

●6.英CPI(消費者物価指数)、4月は前年比+9.0%上昇、1982年以来の高水準(ロイター)

 ・今後、さらなるインフレ圧力の高まりが予想される。

●7.世界的なインフレ高進、新興国の自国通貨建債を直撃、利上げ相次ぐ(ブルームバーグ)

●8.ロシア&ウクライナ関連

 1)日本郵便、ロシア向け郵便物を差出人へ返送、侵攻で運送ルート使えず(共同通信)
 2)仏ルノーが、ロシア自動車アフトバスの株式68%の譲渡決定(共同通信)
 3)米マクドナルド、ロシア撤退へ850店舗事業の売却手続き開始(朝日新聞)
 4)米グーグル、ロシア子会社の破産申請へ、銀行口座差し押さえで活動停止(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/16、上海総合▲10安、3,073(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済指標の悪化が不安視される流れとなった。
  ・中国4月経済統計がそろって下振れするなか、中国景気の鈍化が意識された。鉱工業生産はマイナス成長に転落し、小売売上高はマイナス幅が大幅に拡大。
  ・中国経済対策や経済活動正常化の対する期待感が高まり、下値は限定的。
  ・上海市の副市長は5/16、都市封鎖を6月に解除する見込みと発表した。
  ・業者別では、消費関連の下げが目立ち、医薬品も安く、反面、不動産は物色された。

 2)5/17、上海総合+19高、3,093(亜州リサーチより抜粋
  ・経済活動正常化への期待が相場を支える流れ。
  ・上海市では5/16までに、新型コロナ市中感染者数が3日間連続でゼロを達成し、都市封鎖緩和開始の条件を満たし、優先的工事再開を認める重要建設を再開した。
  ・朝方は、安く推移する場面があったが、中盤から上昇の勢いを増した。
  ・業種別では、自動車・ハイテクの上昇が目立ち、反面、不動産は冴えない。

 3)5/18、上海総合▲7安、3,085(亜州リサーチより抜粋
 ・新型コロナ感染拡大の懸念が再燃、売り圧力が意識される流れとなった。
 ・新規感染者数が減少している上海市では都市封鎖の解除が進みつつあるものの、首都・北京市の感染者数は足元で増加し、行動制限の強化かが警戒される状況だ。
 ・業種別では、空運の下落が目立ち、エネルギーも冴えない、自動車は上昇した。

●2.中国運輸生産指数、4月129.5で、前年同月比▲24.9%低下で下げ幅拡大(新華社)

 1)貨物輸送▲7.9%低下の180.9、旅客輸送▲67.7%低下の41.0だった。

●3.新型コロナが中国経済を直撃、「小売売上高」「鉱工業生産」が減少(FNN)

●4.中国・河南省の3銀行、先月から全預金を凍結、15億ドル規模の可能性も(ロイター)

●5.上海ロックダウンで部品生産滞り、日本の家電製品の生産や販売に影響(テレ朝)

●6.国際金融協会(IIF)は5/6リポートで、ロシアのウクライナ侵攻以来、中国から投資マネー流出について「中国は2022年に約▲3,000億ドルの純資本流出が見込まれる」と見解。(デイリー新潮)

 1)昨年▲1,290億ドルの流出の2倍以上になる。

●7.共同富裕が「富裕層を脅している」と批判、習近平氏は「寄付強要は許されない」(読売新聞)

●8.大手投資銀行、人民元予想を再び下方修正、急速な元安で(ロイターより抜粋

 1)人民元は、(1)景気減速 (2)新型コロナ流行による経済混乱 (3)積極的な米金融引締め を受け、下落圧力が強まっており、対ドルでは過去4週間で▲6%以上値下がりした。

 2)5/16のレートは、1ドル=6.7992元。4月下旬予想6.71元を超えて元安が進んだ。

 3)バークレイズは、都市封鎖が増え、供給網の混乱が深刻化すれば、7元まで急騰の可能性があるという。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/16、日経平均+119円高、26,547円(日経新聞より抜粋
  ・前週末の米株式市場でハイテクなどグロース(成長)株が買われた流れを受け、東京市場でも値嵩の主流グロ-ス株が買われ、一時+400円高となる場面があったが、先物の短期筋の売りが出たのが重荷になり、バリュー株(割安)中心に下落した。
  ・3月決算の主要企業発表が一巡し、好決算や自社株買い発表の銘柄に買いが入った。
  ・積極的な運用リスクを取るムードには乏しく、東証プライムの値上がり銘柄数は35%。
  ・中国は都市封鎖の影響で4月小売売上高や鉱工業生産が市場予想を下回り重荷。  
  ・KDDI・日本郵政・日産化・リクルートが上昇、DOWA・住友化・日清粉が下落。

 2)5/17、日経平均+112円高、26,659円(日経新聞より抜粋
  ・原油高を受けて関連銘柄を、割安感が意識される銘柄に見直し買いも入った。
  ・政府が6月から水際対策の緩和検討のなか、観光庁は外国人観光客の受入れ再開に向けた実証事業を5月中にも始めると発表、上海市の都市封鎖6月解除方針もあり「経済活動正常化に向け前進する6月を見据え、期待先行の買いが相場を支えた」。
  ・もっとも、米国のインフレ懸念も依然根強く、上値追いの勢いは乏しかった。
  ・郵船・川崎汽が大幅高、日本製鉄・富士電機も上げ、反面、アサヒ・キリンが下落。

 3)5/18、日経平均+251円高、26,911円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場が上昇したのを受け、東京市場でも投資家心理が強気に傾き、自動車・電気機器など景気敏感と値嵩半導体に買いが波及し、上げ幅は+400円に接近し27,000円を上回る場面もあったが、利益確定売りで反落した。
  ・決算時に自社株買いを発表した企業に、改めて買いが入り、相場の支援材料になる。
  ・米金利や原油先物の先行きが見通しにくい材料が多く、短期的な高値警戒も重荷。

●2.日本株: 日銀の超金融緩和継続で日本株堅調⇒エネルギー・農産物高騰・円安更新⇒企業業績悪化・物価上昇で個人消費減速⇒景気後退⇒米株連動で日本株下落

 日本株は「米国株連動」との観点からは、▲1,500~▲2,000円下落リスクも

 1)インフレ圧力増す
  ・4月の国内物価指数は前年同月比+10.0%増、輸入物価指数+29.7%増、円ベース+44.6%増と日本企業は円安の重荷も背負う状況。
  ・資源・農産物価格の急騰、円安も加わり、食料品含む広範囲な商品が値上がりしており日本のインフレも急伸する芽が出ている。

 2)EPS(1株当たり利益)急低下
  ・資源等の高騰が企業コストに影響を及ぼし、企業収益悪化のサインが点灯している。その結果、企業の来期予想利益は慎重な見方が多くなり、EPSが大きく低下しており、動向に注目したい。

 3)NYダウ比較で際立って強い日本株⇒やがて米株連動で、株安へ。
  ・日本株は、基本的に「米株連動」である。しかし、年初からの日本株は米国株式の動きから離れ、比較すると堅調が目立つ。
  ・日本株は、「世界景気敏感株」ともいわれており、いずれ世界景気後退の流れと米国株連動の影響を受けると想定する。5/17現在で、日本株はNYダウに比べ、+1,500~+2,000円高く買われすぎとみる。

●3.3メガ決算、金利高で外債含み損合計▲1兆7,000億円(ブルームバーグ)

 1)追加損失でロシア関連リスクの可能性もあり、2023年3月期業績の懸念要因。

 2)3月末以降も米金利が一時3.2%へと上昇が続き、来期も外債含み損の可能性がある。

●4.企業動向

 1)神戸製鋼  薄板を2万円値上げ(時事通信)
 2)ルネサス  900億円投資でEV向けパワー半導体生産、甲府工場再稼働(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6768 タムラ製    業績好調。
 ・4182 三菱ガス    業績堅調。
 ・6098 リクルート   業績堅調。

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