シャドーイングで効率よく外国語のスピーキング力をアップする方法

2022年5月3日 11:34

 スピーキングに苦手意識を持つ外国語学習者が多い。独学の語学学習者の中には、スピーキングを効果的に伸ばす方法が見つからず、焦りを感じながらも読み書き中心の学習を進めている人が多いのではないだろうか。

【こちらも】外国語の復習に最適な「想起学習」の具体的な進め方

 スピーキング力に最適な学習方法は、多くの母語話者と多岐にわたるテーマで長時間、継続的に会話することだろう。しかし、時間や費用に制約があり、こういった条件を整えるのは難しい。外国に住む、外国人に囲まれた生活を送るなど、スピーキングの鍛錬に最適な環境は簡単に手に入るものではない。

 そこで今回は、スピーキング力向上に効果が高いと言われるシャドーイング学習の進め方について紹介したい。

 シャドーイング学習とは、外国語音声のすぐ後を影のように追いかけて声を出していく学習で、同時通訳者などがレベルアップのために行う練習方法でもある。リスニング、語彙力、発音改善など多くの効果が期待できるが、特にネイティブの話し方をそっくりそのまま真似できるというのが最大のメリットだ。

 英語であれば抑揚や強弱、中国語なら四声や巻き舌、有気音や鼻音など母語話者の話し方の特徴を丁寧に真似すれば、スピーキングの力が格段に向上する。

 語学学習者の中には、聞いた単語をいちいち日本語に訳して理解したり、話したい言葉を日本語から外国語に訳して発音したりする習慣から抜け出せない人がいる。これではスピードが全く間に合わず、スピーキング・ヒアリング向上の大きな妨げとなる。シャドーイング学習を重ねることによって、外国語を逐一日本語に訳して理解する癖が矯正される効果も期待できる。

■シャドーイング学習の具体的な進め方

1. レベルにあった音声素材を探す。シャドーイングはスピードが要求される学習法のため、簡単すぎるくらいの音声を使うのが良い。初中級者なら音声付のテキストを購入するか図書館で借りよう。中上級者ならTEDのスピーチやドラマ・映画を、上級者ならニュースや報道番組などを試してみよう。

2. 画像の字幕をoffにして1度聞く。全体の意味をざっとつかみ、聞き取れない単語がないかチェックしよう。全体の意味がつかめないレベルの音声はシャドーイングの教材としては不向きだ。

3. 字幕をonにして聞き取れない単語、意味の分からない単語を調べる。

4. 字幕をoffにして、抑揚や強弱も真似しながら、音声の後に続いて発音していく。

5. 慣れてきたら、上記の手順にとらわれず、テレビや動画を視聴するたびに環境の許す範囲で音声の後について声を出していこう。人前では心の中で、無声で付いていく。シャドーイング学習の良さは、いつでもどこでもどんな音声を使っても実施できるところにある。

■注意点

・音声を止めない。途中で音声においていかれても、音声を止めたり最初からやり直したりせず、追いつけるところから続けよう。最初は数秒しか続かなくても、慣れてくると1分、2分と長く音声を追えるようになる。

・全力で真似する。抑揚や強弱、リズムやテンポもそっくりそのまま全力で真似しよう。

・学習用のスローテンポな音声ではなく、Natural speedの音声を用意しよう。脳科学者でバイリンガルの植村研一氏が指摘するように、語学は繰り返し学習で脳内に神経回路網を形成することによって聞き取り、話せるようになる。ゆっくりとした音声を繰り返し聞くと、スローな音声しか聞き取れない神経回路が形成されてしまう。

・シャドーイングを行うときは、字幕を見ない。字幕を見ながらシャドーイングを繰り返し行うと、字幕が無いと意味が理解できない神経回路が脳に形成されてしまう。詳細は植村氏の論文を参考にしてほしい。

参考: 脳科学から見た効果的多言語習得のコツ

・数回試して効果が得られない場合は、シャドーイング学習を一旦ストップしよう。シャドーイングに向かう前準備としてrepetitionと音読を一定期間行い、その後、再度シャドーイングを実施する。Repetitionは、音声を数秒聞いて一旦止めて、聞いた言葉を復唱し、テキストで間違いを訂正する学習方法だ。

 シャドーイングは、スピーキング以外にも発音矯正、リスニング、語彙力など多くの効果が期待できる高効率な学習方法だ。しかし多くの専門家が指摘するように、誰にでもすぐに始められる学習方法とは言えず、初級学習者には進められない。

 次回は、初級学習者がシャドーイング学習を始める前に一定期間実施することをすすめたい、音読学習の効果的な進め方について解説する。(記事:薄井由・記事一覧を見る

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