新しいタイプの細胞死、エレボーシス(暗黒の細胞死)を発見 理研
2022年4月30日 08:49
理化学研究所、神戸大学、生理学研究所の共同研究チームは26日、新しい細胞死のタイプとなるエレボーシスを発見したと発表した。このエレボーシスとは、古代ギリシャ語で「暗黒」を意味する「エレボス」に由来し、「暗黒の細胞死」を意味するという。
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■これまで知られてきた3つの細胞死
これまで知られてきた細胞死のタイプには3つある。アポトーシス、ネクローシス、オートファジー細胞死だ。
アポトーシスとは、プログラム細胞死とも呼ばれ、予め遺伝子に組み込まれた細胞死だ。発生の過程などで起こる。例えば、ヒトの指がつくられるときなどだ。
ネクローシスとは、壊死とも呼ばれ、細胞が外傷や血行不良などによって死ぬ場合だ。
最後に、オートファジーとは、細胞の自食作用のことだが、このオートファジーによって起こる細胞死が、オートファジー細胞死となる。なんらかの理由でアポトーシスが起こらない場合にバックアップ的に起こると考えられている。
今回、研究グループが発見したエレボーシスは、これら3つの既知の細胞死とはいずれとも異なる全く新しいタイプの細胞死となる。
■エレボーシスとは?
これまで、腸の機能・形態の恒常性は、アポトーシスによって腸の細胞が新陳代謝することで維持されていると考えられてきた。研究グループは、これを確かめるために、ショウジョウバエの腸において、アポトーシスが起こらないように操作。しかし、腸の恒常性は維持された。
そこで研究グループが、他の細胞死が起こっているのではないかと探っている過程で、偶然Anceと呼ばれるタンパク質が発現している細胞を発見。このAnceが発現している細胞は、細胞の機能にとって重要な核膜、ミトコンドリア、細胞骨格などを失っており、死につつある細胞であることが解ったことで、エレボーシスの発見につながった。
なお、Anceにはさまざまなタンパク質を分解する働きがあるが、Anceが発現した細胞に、蛍光タンパク質を人工的に発現させると、しだいに分解。失われていき、真っ黒になるところから、この新しく発見された細胞死にエレボーシスの名が付けられた。
研究グループでは今後、エレボーシスについて、ヒトの腸にも存在するか、詳しい分子機構がどのようになっているか、などさらに解明を進めていきたいとしている。
今回の研究は、4月25日付でオンライン科学雑誌『PLOS Biology』に掲載された。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)