環境対応車、20年代中盤にEV攻勢で新時代に突入か!?
2022年4月24日 18:29
ホンダは過日、四輪車の電動化に関する説明会で、社長の三部敏宏氏が中期計画を発表した。その内容によると、ホンダは2020年代後半までに、主要市場の特性に合わせた電気自動車(EV)を投入するとした。
英国の自動車産業関連調査会社マークラインズの資料・データによると、2021年のEVの販売台数は約460万台、前年の2.2倍に増えた。一方、ハイブリッド車(HV)は330万台、前年比約33%の増加だった。初めてEV販売台数がHVを上回ったことになった。EVの販売拡大は各国の電動車普及推進策に応じた補助金が下支えしている側面はあるものの、シェアは確実に拡大しており伸びは小さくない。
低価格帯のEV車種が人気の中国で新車の1割を占め、温暖化対策を掲げる欧米諸国でもEVを行政が後押し、販売は好調だ。海外でのEV普及を受け、日本メーカーも巨額の投資を決めた。EVの主導権争いが自動車産業の構図を変えそうだ。
中国自動車協会の資料によると今年(2022年)1月-2月の累計新車販売でNEV(新エネルギー車)が76.5万台に達した。前年同期比で154%の伸びで、純粋なEVだけでも2カ月で58.1万台売れた。実は中国で1月上旬に通称「53号通知」といわれる通達を中央官庁の国務院や国家エネルギー局など政府関連機関が連名で発令した。通知の正式な主題は「電動自動車の充電インフラサービス保障能力をさらに引き上げる実施意見」というもので、要するに中国政府はEV充電設備の整備をこれまで以上に積極化する、ということ。
そのような中で、ホンダが発表した計画では、2030年までに30車種のEVを世界市場に投入し、年間200万台超を生産する計画だ。生産体制の強化に向けて中国では武漢市のほかに、広州市にもEV専用工場を建設する。北米でもEV専用ラインを立ち上げる。ガソリン車やハイブリッド車などを含めた2030年のホンダの生産台数を約500万台と見込み、約40%がEVとなる予定だ。
ホンダの主要市場である北米では、米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発しているミッドサイズ以上のEVを2024年に2車種投入する。ホンダブラントの新型SUV「PROLOGUE」(プロローグ)と、上級ブランドAcura(アキュラ)のSUVだ。
第2の主要市場である中国には2027年までに10モデルのEVを投入し、注目の日本でも2024年に、軽自動車規格のEVコマーシャルバンを発売。価格は200万円を切る100万円台と戦略的な設定となる。説明会で社長の三部敏宏氏は「普及させることを考えて、まず商用車から参入し、軽EVの市場を攻略することにした」と述べた。
100万円台の価格設定は、ガソリンエンジンを搭載する当社の軽自動車『Nシリーズ』をベースにして開発することで、製造コストを下げたいとした。もちろん計画には商用車だけでなく軽乗用車EVやSUVタイプのEVなどを投入する目論みがある。
現在の商用軽の利用シーンをみると、配送センターなどから配送先に荷物を届けるといった比較的短距離の走行が中心で走行距離は短い。こうした軽コマーシャルバンの使い方なら充電設備を配送センターなどに設置することで、1日の業務に対応できる可能性が高い。利用シーンに合わせて搭載する電池の容量を抑えることで、100万円台の価格は実現できるとする。
軽商用車の電動車は、日産と三菱自が2022年度初頭に新型を発売する計画だ。スズキやダイハツ工業も開発を進めている。商用ではあるが、今回ホンダが打ち出した100万円台という価格は、競合各社のターゲットになることは間違いない。
ホンダは2020年代半ば以降をEV普及期と捉え、EV専用プラットフォーム(PF)「Honda e:Architecture」を開発・投入する。なおホンダは、複数のPFを車種や市場ごとに使い分ける計画で、中国向けの専用PFも開発中だという。同社は、「30年以降はPFを小型、中型、大型の3種に集約する。
対する世界大手のトヨタは2030年までにEV開発に4兆円規模を投じ、販売台数を年350万台とする。日産も2026年度までの5年間でHVを含む電動車の開発に2兆円を投資し、2030年度までに車種ベースで新車の5割を電動車にする計画だ。
海外勢の動きも見逃せない。独フォルクスワーゲン(VW)は2026年までの5年間にEV向けに520億ユーロ(約7兆円)を投じる。25年までに新車のうちEVの比率を現在の約5%から20%に引き上げる。米テスラは2022年以降、ドイツと米国で相次いで新工場を稼働させ、2022年の生産能力は200万台超と前年に比べ倍増する見通しだ。
EVの市場拡大・普及は充電のインフラ整備や補助金による支援が前提となる。HVも販売台数は伸び続けており、当面は競争力を保つ可能性が高い。日本が得意としてきたHVがZEV(Zero Emission Vehicle)への繋ぎのメカと決め込むのは早計かも知れない。HVは日本勢が優位で、海外勢がEVで次の主導権を狙うというのが現況の構図といえる。(編集担当:吉田恒)