ユーシン精機、中国を中心にコロナ禍から回復傾向 医療分野では取出ロボットに加え特注機で販売拡大へ

2022年4月8日 07:43

会社概要

村田美樹氏(以下、村田):ユーシン精機の村田と申します。本日は京都市の本社工場からつながせていただいています。みなさま、貴重なお時間を頂戴いたしましてありがとうございます。それでは、ユーシン精機についてご紹介します。

会社概要です。代表者は小谷高代で、機械業界では珍しい女性の社長です。2021年6月に社長を交代し、若返りを図っています。設立は1973年10月、資本金は19億8,566万円、連結の社員数は681名、前期の連結売上高は184億円です。

事業内容は産業用の直交型ロボットを中心に、工場の自動化に関連する装置、システムの開発、製造、販売です。上場市場は東証第一部で、新市場の区分においてはプライム市場を予定しています。

社名の由来、社訓、創業者語録

村田:社名の由来、社訓、創業者語録です。社名ですが、ユーシンは「有信」と書き、「信用有る会社でありたい」という創業者の想いを表したものです。社訓は「今日も一日、より良くユーザーに尽くし、より多くの信用を得ましょう」です。

創業者語録ですが、「品質は社運を決める」は工場の壁などに掲示されています。「できない、無理だ、は出発点」は、業界で常に新しいロボットを提案してきた当社にとって特に重要な考えとなっています。

「ひとつのテーマには、少なくとも7つの解決法を考えよ」は、7つ目に思い付いたものがよいとは限りませんが、あらゆる方向から考え抜くことによって、よりよい解決法が生まれることを意味しています。

ユーシン精機のお客様

村田:当社のお客さまについてです。当社のロボットは工場で働く産業用のロボットで、多くの方の目に触れることがなかなかないですが、幅広い工場で活躍しています。

具体的にはスライドの写真のように、自動車、スマートフォンなどの電子部品のメーカー、家電、医療用品、おもちゃや園芸用品のメーカーなどです。

取出ロボットについて、動画をご覧ください。

村田:動画の赤枠にあるのが当社の取出ロボットで、青枠にあるのがプラスチックの成形品を作る成形機です。成形機の金型が開いた時に取出ロボットのアームが下がり、出来上がった製品を取り出します。

取り出した後は隣にあるコンベアの上に開放します。このように、成形機からものを取り出して並べる取出ロボットが当社の主な商品となっています。

ユーシン精機のロボットが扱う製品群

村田:ユーシン精機のロボットが扱う製品群についてです。プラスチック用の取出ロボットについて、「脱プラスチックによって業績に影響はありますか?」というご質問を時々いただきますが、現状では影響はありません。

お客さまは射出成形という方法でプラスチック製品を製造しています。例えば、スライド左側にあるようなものが射出成形で作られています。

自動車業界ではEVなどの環境対応車で軽量化が求められますので、部品はほとんどプラスチックです。また、現代の生活に欠かすことのできないスマートフォンなどの情報端末についても、小さなコネクタやカメラのレンズなど、ほとんどの部品がプラスチックになっています。

医療分野においても、感染防止の観点から衛生面の向上が求められますので、かつてガラスだったもののほとんどがプラスチックの使い切りになってきています。

一方で、スライド右側の使用量の削減が進んでいるビニール袋やストローなどは、射出成形ではなく、当社ではあまり付き合いのない分野です。

中期的には射出成形の用途やボリュームは増えていくと考えています。

取出ロボットはなぜ必要か?

村田:取出ロボットが必要な理由ですが、第一に安全性を挙げることができます。自動化が進む前は成形機から人の手でものを取り出していましたが、金型に挟まれて指をなくされる方もいたと聞いています。ロボットが単純で危険な作業を代替することで労働安全性が高まることは、大きな意義があると考えています。

2つ目は、成形品の歩留まり(良品率)を上げるということです。ロボットは一定のスピードを保ちますので、人の手で作業するよりも品質が安定します。

成形機の金型にはイジェクターというものがあります。ものを取り出さなくても突き出されるため、自然に落下させることもできますが、せっかくの成形品に傷が付くこともあります。ロボットで確実に取り出し、コンベアの上にそっと置くことで品質も保たれます。

3つ目は、射出成形機の効率を上げるということです。ロボットの動作スピードを上げることにより、成型工場の生産性の向上が図られます。これらの理由により、現在はほとんどの射出成形機に取出ロボットが装着されています。

取出ロボットに求められる機能

村田:取出ロボットに求められる機能はスピードです。成形品を作るのは我々のロボットではなく、成形機です。成形機の金型が開いている時間はものが作られていないため、生産が止まっている無駄な時間ということになります。

金型を閉めて次の成形サイクルに入るために、取り出しをできるだけ早くすることで生産性が向上します。

また、精度も重要です。ロボットの動作がいくら速くても、取り出しミスがあると意味がありません。高い精度の動作で確実に取り出すことが求められます。

そして、安全性です。生産現場では安全性が何よりも優先されないといけないため、ロボットには非常停止など、安全性を向上させる機能が求められます。当社の開発ではこれらの機能の向上を継続的に図ってきました。

ユーシン精機の強み

村田:ユーシン精機の強みについてご説明します。まず、スライド左上にある技術力です。常に業界に先駆けて新しい技術を取り入れています。この具体例と新規分野への挑戦については後ほどご説明します。

スライド右上にある幅広いユーザー層については、グローバル展開を行っています。日本、アメリカ、アジア、ヨーロッパと世界中にお客さまがいて、海外の売上比率は全体の売上の60パーセント以上で、年によっては70パーセント近くなることもあります。

業種についても、自動車、電子部品、医療など特定の業種に偏りがないため、特定の地域や業種の景気に業績が大きく左右されることがありません。

スライド左下にある信用における、生産を止めないものづくり、レスポンスのよさについては、当社のお客さまは製造業ですので、何かあった時に素早く対応することが必要となります。当社の技術サービスは対応がよいということで、グローバルに高い評価をいただいています。

納期厳守については簡単なようで大変難しく、創業期からこだわっています。最近はコロナ禍で世界中の物流が混乱したり、半導体不足などがありますが、当社では購買、開発、製造などが協力し合い、納期を厳守しています。

スライド右下にある財務体質です。上場以来、無借金経営で、高い自己資本比率を継続しています。ファブライト経営と記載していますが、ロボットの組み立ては外注先にお願いしており、部品もほぼすべて外部から仕入れています。

出荷前の最終検査は本社の工場で実施していますが、全体としては固定費が抑えられており、景気の変化に強い体質となっています。これらにより、取出ロボットの業界でトップシェアを誇っています。

強みの技術力について、動画をご覧ください。いくら速くても振動が収まらないと精密な成形には対応できないということで、独自のアクティブ振動制御技術を開発しました。けん玉もできるような精度ということで、大変注目を浴びたデモンストレーションとなりました。

沿革 (~2002年)

村田:沿革です。当社は常に新しい技術を取り入れることでシェアを伸ばしています。この沿革に沿って、主にスライドの赤字部分の技術をご紹介したいと思います。

1989年に取出ロボット業界初のサーボモータを導入しました。それまではエアで動かしていた取出機ですが、サーボモータを導入することでスピード・精度を格段に向上させることができました。

1996年には取出ロボット業界初のカラータッチパネル式コントローラを導入しました。当時から現場の人手不足はありましたが、新しい工場の作業員でもアイコンなどを見ながら簡単に操作できるようなコントローラを開発しました。

2002年には光ディスク専用の取出ロボット「DRDⅢ」を発売しています。光ディスクとは、CDやDVD、Blu-rayディスクなどのことです。取出タイムのチャンピオンタイムが0.069秒ということで、目にもとまらぬ速さで世界最速を大幅に更新しました。

沿革 (2002年~)

村田:2010年には京都大学と共同開発した最適設計による取出ロボット「HSA」を発売しています。最適設計とは、飛行機や自動車などを軽量で信頼性の高い構造にするために使われ始めた技術です。

強度を保ったまま不要な部分が取り除かれた設計ができるため、ロボットが軽くなり、省エネにも貢献します。こちらのロボットで優秀省エネ機器・システム表彰を受賞しています。

2017年に発売した「FRA」は、先ほどお伝えした自らの振動を打ち消すアクティブ振動制御装置を搭載しています。日本機械学会賞をはじめ、数々の賞を受賞しました。世界的に権威のあるドイツのデザイン賞のレッドドット・デザイン賞も受賞しています。このように、新しい技術を取り入れながら業績を伸ばしてきました。

業績推移

村田:会社設立からの売上高と利益を示したグラフです。2008年頃には、世界最速の光ディスク取出ロボットと、その前後の装置で大きな売上を上げています。リーマンショックで売上をいったん落としましたが、その後は少しずつ売上を伸ばしてきました。

一昨年、昨年は世界的な設備投資需要の減退やコロナ禍の影響もあり売上を落としましたが、これから伸ばしていく予定です。今年は昨年より売上を伸ばしています。

業種別売上高構成

村田:業種別売上高の構成ですが、2021年3月期の売上の内訳になります。最近では自動車向けの売上が一番多いですが、昨年は新型コロナウイルスの検査キットの特需などもあり、医療関連の売上が一番多い年となりました。そのほか、自動車、電子部品、雑貨、家電、容器、光学などがあります。

業種別売上高

村田:業種別売上高を経年変化でご覧いただけるグラフです。さまざまな業種からまんべんなく仕事をいただいていることがおわかりいただけるかと思います。スライドのグラフの一番下の緑色の医療ですが、取出機に加えて特注機でも販売が拡大しており、今後も伸びていくことが期待できる分野となっています。

グローバルネットワーク

村田:グローバルネットワークです。海外の子会社は13社で、駐在員事務所がフィリピンに1ヶ所あります。このほとんどが販売および技術サービスの拠点となっています。

中国の広州に工場がありますが、中国国内へのリードタイム短縮を目的に、中国国内向けのみを出荷しています。そのほかの地域は、すべて京都の本社工場から出荷しています。

当社がアフターメンテナンスを行う必要があるため、日系のお客さまが海外に進出するタイミングで拠点を設立した国もあります。しかし、しばらくすると現地のお客さまからも仕事をいただき、それぞれの子会社でしっかりと運営できています。

地域別売上高

村田:地域別の売上高の推移です。スライドをご覧のとおり、北米、欧州、アジア、日本と、さまざまな地域で販売しています。もうすぐ期末を迎える2022年3月期においては、中国を中心に新型コロナウイルスの影響からの回復が見られました。

欧州は上から3つ目の青色の部分で売上が小さいのですが、射出成形技術の発祥の土地ということもあり、もともと現地にメーカーがいくつかあります。当社としては、今後伸ばしていけるところだと考えています。

中期経営目標

村田:中期経営目標です。連結売上高300億円、経常利益50億円以上、経常利益率15パーセント以上、1株当たり利益75円以上を目標としています。これを達成するため、4つの戦略があります。

「商品力の強化」「グローバル展開力の更なる強化」「人財育成」「新規事業の開拓」です。このあと、それぞれの戦略についてご説明します。

戦略① 商品力の強化(1)

村田:まず、商品力の強化です。スライド下部に2つのロボットの画像がありますが、これらは今年度リニューアルしたモデルです。「YD」シリーズと「RC-SE」シリーズがあり、お客さまの困りごとを丁寧に聞いて、さまざまな機能を取り入れています。

例えば、環境に配慮した「Smart ECO吸着」という機能があります。ロボットにはコンプレッサーで圧縮したエアを使って動かす部分があるのですが、エア消費量を削減することにより、エアを作るコンプレッサーの電力消費量を減らすことができます。

お客さまによっては、工場で2台必要だったコンプレッサーが1台で済むようになった事例もあります。

戦略① 商品力の強化(2)

村田:商品力強化の2点目は、地域特性、お客さまニーズに応える商品を展開するため、今年度に発売した2機種をご紹介します。まずはスライド右上のハイサイクル対応のサイドエントリーロボットです。

ハイサイクルが求められる医療分野などをターゲットとしています。先ほどの動画で、成形機の上からロボットアームが入っていくところを見ていただきましたが、サイドエントリーは横から入って取り出すものです。

こちらは動く部分が横から入るため、ゴミが金型に入りにくく、クリーンルームなどの天井が低い場所にも対応できるメリットがあります。

また、スライド左下の大型成形品対応の大型ロボットもリニューアルしています。大型成形品というのは、住宅建材や、バンパーなど車の大きな部品のことです。

戦略② グローバル展開力の更なる強化

村田:グローバル展開力のさらなる強化です。地域特性に応じた商品開発として、今年は前期にアジア向けに投入した取出ロボットが中国で販売好調となっています。さらにヨーロッパでの拡販に向け、まだまだシェアの低いドイツのミュンヘンに拠点を設立しています。

各国のローカルユーザーのさらなる獲得については、現在、ローカルの営業担当の増員を図っているところです。

戦略③ 人財育成

村田:人財育成です。スライドに「様々な工場自動化ニーズに対応するSIer(システムインテグレータ)の育成」と記載しているように、ロボットの前後の工程での自動化も需要が増加しています。これらのSIerを育成し、提案力の強化を図っています。

セーフティーアセッサ有資格者の育成では、安全面での対応も業界トップクラスを維持するために力を入れています。

また、さまざまな研修を実施していますが、女性の積極活用により、女性管理職割合は5パーセントとなっています。数字だけ見ると少ないと思う方もいるかもしれませんが、機械業界の女性管理職割合は平均2.7パーセントですので、決して少なくはないと考えています。女性にはさまざまなライフイベントがありますが、継続的に働いていただくことが重要だと考え、数々の施策を採っています。

戦略④ 新規事業の開拓

村田:新規事業の開拓では、パレタイジングロボット「PA」シリーズを2020年6月に発売しました。こちらは、工場の出荷エリアで、従来は人がパレットに段ボールを積んでいたような工程を自動化するものです。取出ロボットとかたちが非常に似ているのですが、その機構をそのまま活用できます。

以前は当社と接点がなかった食品業界のお客さまから多くの引き合いがあり、展示会でも、これまでは出していなかった食品関係に出展しています。

ESG

村田:ESGについてです。「E 環境」は、省エネ商品開発を継続的な取り組みとしています。当社の商品は生産設備で、お客さまの工場において24時間稼働しているため、商品を通して工場の省エネに貢献できることに大変意義があると考えています。

そして、当社自体の省エネも進めています。5年前に本社を移転しましたが、その時に最新の設備を導入し消費電力を削減しています。現在も再生可能エネルギーの利用や環境対応車の導入なども検討しており、さらなる省エネを進めます。

「S 社会」では、工場全体の自動化システムを提供し、人手不足や働き方改革などに貢献できると考えています。

製造現場の安心安全にも貢献しています。取出ロボットを使って労働災害を減らし、危険をなくす工夫もしています。「誤作動させない」「断線した時も間違った動きをしない」と、二重、三重の安全性を作り込んでいます。

社内の働きやすい環境作りについて、育児休業は法定は2歳までですが、当社は3歳まで取ることができます。時短勤務は法定では3歳までですが、小学校3年生まで延長しています。女性の育児休業の取得率は現在100パーセントを維持しており、男性の取得も少しずつ増えてきています。

「G ガバナンス」では、取締役8名のうち3名を社外から選任しています。社外役員からの活発な発言により、取締役会の議論が活性化されています。

株主還元策

村田:最後に株主還元策です。配当性向は連結純利益の30パーセント以上としています。今年度は今のところ中間配当9円、期末9円の合計18円を予定しています。

過去10年間の株価推移(月足)

村田:過去10年間の株価です。今非常に低水準となっており、当社の役員も大変気にしているところですが、新しい社長のもと、さらなる成長に向けて準備中ですので、ぜひみなさまの応援をいただければと思います。ありがとうございました。

質疑応答:脱プラスチックの影響について

坂本慎太郎氏(以下、坂本):スライド7ページで、御社の扱っているプラスチック製品と扱っていない製品のご説明がありました。最近、脱プラスチックについていろいろな分野で議論されていますが、御社への影響はあるのでしょうか?

自動車部品でも、プラスチックは軽いため、燃費面でメリットがあるため使われているのだと思いますが、そのあたりも含めて影響があったら教えてください。

村田:おっしゃったように、自動車の軽量化でプラスチック部品がかなり増えており、今後も増える方向にあると思います。最近、注目を浴びているバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックも射出成形できますが、基本的に取出ロボットに求められる技術は変わらないため、需要が落ちることはないと考えています。

質疑応答:業績推移について

坂本:業績推移について、連結になってから飛躍的に売上が伸びていますが、その背景を教えてください。また、売上のボラティリティがかなりあるのですが、リーマンショックや東日本大震災など景気の影響を受けやすく、これはユーザー側の需要で仕方がないところがあります。

売上の変動は、厚い自己資本で乗り切ることを考えていると思いますが、売上の変動について施策があれば教えてください。

村田:当社は1996年に大証2部に上場し、連結会計を開始しました。同年に、当時出資していたアメリカの会社への出資比率を6割に上げて連結対象としています。また、この年あたりから中国やタイなどアジア各国にも進出して売上を伸ばしてきました。

ボラティリティについては、当社の事業内容上、やはり世界の設備投資需要の増減に影響されます。ただし、さまざまな業界から仕事をいただいていますので、景気の波に影響されても、全体としてはリスク分散ができていると考えています。

また、ファブライト経営で固定費を少なくし、キャッシュを多く持つことで、変動があっても影響を受けにくい体制にしています。

質疑応答:医療分野が強い理由について

坂本:スライド16ページで、業種別の売上高を教えていただきました。自動車分野は、自動車産業自体が大きいため、御社のシェアも大きいことはわかるのですが、医療分野が強い理由を教えていただきたいと思います。

医療分野は、2021年3月期にコロナ禍による受診控えや設備投資の見送りなどの悪影響がありましたが、2022年3月期は減っています。2021年3月期は特需だったのかという点も含め、医療分野に関して今後の見通しを教えてください。

村田:医療分野に強い理由について、当社はハイサイクルのロボットを強みとしており、新型コロナウイルス感染症の検査キットやシリンジなど、大量生産される医療用品の製造で使われています。ロボット以外の特注機でも、医療関連のお客さまの大量生産ラインで使われています。

昨年より今年の売上が落ちているのは、昨年度は北米で検査キットの特需があったことと、医療関連の特注機の売上が多くありました。今年はその分が減っていることが要因です。

ただし、医療関連の需要は景気の波に左右されにくく、今後も特需などで大幅な売上が発生する可能性はありますが、ベースとして継続的に伸びていくと考えています。

質疑応答:50周年記念配当について

坂本:スライド26ページの株主還元について、来期は50周年ということで、40周年の時には特別配当が出ていますが、50周年記念配当は予定していますか?

村田:40周年には記念配当を行いましたが、現時点で確定的なことはお伝えできません。

質疑応答:新社長について

坂本:昨年6月に新社長が就任されていますが、経歴が非常にすばらしいと思います。名字から、創業者とはどのような関係なのでしょうか?

村田:新社長は創業者の次女です。工学博士で、マサチューセッツ工科大学でMBAも取得し、マルチな能力のある社長です。創業者も技術者で、当社はものづくりで伸びてきた会社ですが、規模が大きくなるにつれて、やはり営業現場と開発の連携が重要だと考えるようになりました。

新社長が副社長になる少し前から連携強化を進め、昨年と今年に発売した商品からその成果が出始めているところです。新社長は、最先端の技術だけでなく、あくまでお客さまの利益創出に貢献できる商品がよい商品という信念を持ち、経営にあたっています。

質疑応答:人材不足によるロボット導入について

飯村美樹氏(以下、飯村):「人材不足によるロボット導入は、現段階で本当に増えているのでしょうか? どのくらいのタイミングが上昇のピークになるのか、見解をお聞かせいただきたいです」という質問が来ています。現場ではどのようなかたちなのでしょうか? 

村田:プレゼンの中でお伝えしたとおり、ほとんどの射出成形機には取出ロボットがついていますが、アジアはいまだ人の手で取り出しています。アジアでは、人手不足や賃金高騰の影響からロボットへ置き換わりつつあり、装着率が上がっています。

日本国内は、先ほどお伝えしたように、パレタイジングロボットの引き合いが増えています。工場の出荷作業では、トラックに荷物を載せるために、中身が詰まった多数の段ボールをパレット上に人の手で積んでいく作業があります。この作業は過酷なため、人がなかなか集まらないということが背景にあります。

どのくらいのタイミングが上昇のピークかはわかりませんが、人材不足は今後も継続するため、ロボット化は進んでいくと考えています。

質疑応答:食品業界との関わりについて

坂本:パレタイジングロボットのご説明でもありましたが、御社はどちらかと言いますと、業界の大きさ的には、食品業界とのお付き合いはあまりなかったと思います。その理由を教えてください。

村田:これまでも射出成形で作る食品容器などのお客さまとのお付き合いはありました。容器に特化した成形業者が製造しており、当社の分類では容器というところに入っています。パレタジングロボットは食品メーカーから直接引き合いがあり、新しいお客さまになります。

坂本:容器メーカーから直接来るということですか?

村田:そのとおりです。食品メーカー自身で容器を作ることは少ないです。

質疑応答:為替感応度について

坂本:御社は外国の売上割合が6割くらいですが、為替感応度を教えていただけたらと思います。

村田:本社からの販売はすべて円建てで行っています。海外の現地法人の販売は現地通貨で行っていますが、拠点が世界中に散らばっており、さまざまな通貨が使われています。そのため、結果的には相殺されると言いますか、大きな影響はありません。

仮にすべての外貨の取引を米ドルとして考えた場合、1円程度の円高で営業利益は1,000万円くらいマイナスとなります。

質疑応答:欧州でのシェア拡大に関する取り組みについて

坂本:スライド18ページに記載がある、欧州でのシェア拡大という課題に対する取り組みですが、これまでどのような取り組みでシェア拡大を目指してきましたか?

村田:先ほどお伝えしたとおり、射出成形技術は欧州発祥で、メーカーもいくつかあります。当社も、イギリスの子会社が販売していますが、まだブランド力がないということで、2年前にドイツのミュンヘンに会社を設立しました。

ただし、会社を設立してまもなくコロナ禍に見舞われ、新規の営業は対面がよかったのですが、お客さまへのアクセスが難しく苦労してきました。

その中でもようやく情報を得ることができ、ポーランドで代理店を開拓しました。また、ヨーロッパでは新型コロナウイルスに関する規制が緩和され、今年はさまざまな展示会が開催される見込みです。10月にドイツのデュッセルドルフで開催される大きな展示会へ出展する予定もあり、今後は確実にシェアを伸ばしていきたいと考えています。

質疑応答:中期経営計画について

坂本:中期経営計画についてうかがいます。金額を見る限り、利益率より売上高を伸ばしていくようなイメージです。この背景として、新規事業の開拓やシェアの向上を考えているのでしょうか? 中期経営計画のイメージをもう少し教えてください。

村田:2021年3月期は経費も少なかったため、通常より高い利益率になっています。そのため、中期経営目標の経常利益率15パーセントは、低い目標ではないと考えています。

坂本:中期経営計画の「新規事業の開拓」には、M&Aの数字が入っているのでしょうか?

村田:今のところは入っていません。考えていません。

坂本:御社の自己資本を考えても、もう少し投資ができるのではないかと思います。射出成形機のメーカー自体のM&Aはあるのでしょうか? パッケージで売ったり、M&Aにより得られる技術もあるかもしれないと思います。そのあたりのイメージについて教えてください。

村田:射出成形機のメーカーは、世界中に何十社とあります。日本でも大きな重機メーカーが成形機を作っています。当社のロボットは、ほとんどのメーカーの成形機に装着することができるため、特定の成形機メーカーとの提携や自社開発は得策ではないと考えています。当社が得意とするロボット分野に特化して伸ばしていきたいと考えています。

質疑応答:取出ロボットの世界シェアと応用について

坂本:世界における射出成形機の取出ロボットのシェアはどのようなイメージでしょうか? 

村田:世界シェアは2割程度と推定しています。日本には当社以外に3社のメーカーがあり、ヨーロッパにも大きな企業が2社ほどあります。中国は多くありますが、アフターメンテナンスができなかったり、壊れやすいということで、できては潰れていくところが多い印象です。

飯村:「取出ロボットに関して、射出成形機以外にも応用できるのでしょうか? 食品や和菓子などの生産にも応用できるのですか?」というご質問です。

村田:パレタイジングロボットでは応用していますが、食品の生産をダイレクトに行うことはありません。

飯村:あれほど器用にけん玉を使う技術があれば、繊細なものがいろいろできそうですね。感動しながら見ていました。

坂本:それだけ精緻に動かせるものはなかなかないです。

村田:展示会では、とても注目を集めました。

坂本:そこは強みだと思います。

質疑応答:保守サービスについて

飯村:「保守サービスのような手堅い売上の比率を高めていくような考えはありますか?」というご質問です。

村田:市場で動いているロボットの数は年々増えていくため、自然と保守サービスや部品の売上高は増えていきます。

質疑応答:運輸施設や物流施設での導入について

飯村:先ほど、パレットの上にダンボールを積んでいくというお話がありましたが、物流施設での導入は考えていますか? 

村田:物流というのはAmazonの倉庫のようなものを指していると思いますが、さまざまなかたちのものが流れているわけではありません。どちらかと言いますと、工場の最終の出荷の部分です。食品の話ばかりしていますが、電子部品や文房具もあります。

坂本:箱のかたちが決まっているものということですね?

村田:そのとおりです。

質疑応答:今後の不動産関連の投資について

坂本:「今年予定されている不動産関連の投資はどのようなものですか?」という質問です。

村田:新工場が5年前にできたのですが、連結売上高300億円を考えると手狭です。ただし、新工場ほどの投資にはならないと思います。

坂本:ラインを増やすくらいのイメージでしょうか? 

村田:そのとおりです。隣接地で考えています。

村田氏からのご挨拶

村田:当社は、ロボット一筋で事業を行ってきた、まじめで地味な会社ですが、いろいろと新しいことも考えていますし、社長も大変若く、やる気に満ちあふれています。何とぞ応援のほどお願いいたします。ありがとうございました。

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